夏場でも安定感を誇示する背番号99…勝負のシーズン最終盤へビーズリーがカギを握る


◆ メモリアルマッチでも変わらない安定感

 8月1日のジャイアンツ戦は試合前から特別な空気に包まれていた。

 甲子園球場開場100周年の記念日。プレーボール前には式典が行われ、俳優で虎党の渡辺謙が力強く開会を宣言。球団のレジェンドであるランディ・バース藤川球児らの他、各界著名人がレッドカーペットを歩いて聖地の“100歳誕生日”に華を添えた。

 そんな異様な雰囲気にも先発マウンドに上がったジェレミー・ビーズリーに浮き足立つ様子は微塵もなかった。

「今日は特別な1日になった。大切なゲームでファンの方にも大切なゲームだったと思う。ここで勝つと(首位に)0.5ゲーム差なので、一番そこが私的にはモチベーションだったので。勝って差を縮めることに集中できた」

 負けられない一戦であることは自覚しながらも、助っ人右腕は「メモリアル」よりもカード2連勝で迎えた首位・ジャイアンツとの3連戦3連勝に意識を向けて腕を振っていた。

 初回に打線が戸郷翔征から2点を奪うと、ビーズリーも勢いに乗って4回まで綺麗にゼロを並べた。5、6回に1失点ずつしたものの6回3安打2失点でリードを保って降板。今季5勝目を手にした。

 試合中はローテーションの一角を担う自覚を胸に崩さなかった厳しい表情が、試合後は「パパの顔」に変わった。実は8月1日は長男・ウエスリー君の1歳の誕生日。甲子園100周年、巨人戦、愛息の誕生日と負けられない理由は3つもあったのだ。

「結果はどうであれ、子どもからは愛されていると思うので、プレッシャーはなかったけどモチベーションにはなった。子どもが最初の何イニングかは見てくれていたので。やっぱり子どもがいるのは特別。1歳になりましたし、息子がすべてなので」一家の大黒柱は格別の1勝を噛みしめた。

 チームはこの日の勝利も弾みにし、翌日のベイスターズ戦まで今季最長の8連勝を記録。依然、セ・リーグの混戦ぶりは変わらないものの投打がかみ合ってきたチームにおいて、夏場でも安定感を誇示する背番号99の存在は大きい。

 何より、ペナントを争うジィアンツを相手に3試合で3勝無敗、防御率1.00と抜群の相性を誇る。同じくライバルのカープには今季未登板と秘密兵器になる可能性もあり、勝負のシーズン最終盤へ向けてビーズリーのパフォーマンスが連覇へのカギを握るかもしれない。

「疲れました。暑かったので」。特別な試合で仕事を果たした男は大粒の汗をぬぐった。

文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)

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