【土浦日大】小菅勲監督|凡打で帰ってくる姿にその子の野球に対する態度が表れる


2023年夏の甲子園で準決勝に進出し、かごしま国体では優勝も飾った土浦日大。そんなチームを率いるの小菅勲監督に中学生選手のどんなところを見ているのか、高校で伸びる選手はどんな選手かなど、お話を聞きました。



いかに見ていないところで練習をコツコツしっかりできるか
——中学生をスカウティングする際、選手のどんなところを見ていますか?

スカウティングはコーチと部長が担当していて、私は最後に判断するだけなのですが、パッと見るのはその子が持っている雰囲気ですね。随分輝いているなと感じたら近寄って見てみる。すると表情が良い。大体これで大丈夫です。ですので、あまり投げ方だの打ち方だのは見ていないです。むしろちょっと癖があっても「高校に来たら直してやろう、良くしてやろう」と思うくらいです。ただ体に力があるかどうかは大事ですね。体が細くても振る力があるとか、動かす力があるとか、そういう子は絶対に後で良くなってきますから、そこは見ますね。逆に「テクニックはあるけど体に力がないなぁ、綺麗な打ち方をしているけど力がないなぁ」という子は高校であまり良くなったことがないですね。

——その子の持つ「雰囲気」とは?

例えば凡打したときの全力疾走。本当にセーフになろうとして全力疾走しているかどうかや、アウトになってベンチに帰ってくる姿。そこで下を向いていたり足を引きずっていたりすると「ちょっと裏表あるのかな?」と思ったり。凡打で帰ってくる姿にその子の野球に対する態度が表れると思っているので、そういう意味での雰囲気ですね。守りの時もカバーリングで手を抜いていないかとか、そういうところでも努力できる子は高校でも上手くなれると思っています。

——土浦日大の選手はやはり硬式出身者が多いのでしょうか?

85%くらいは中学硬式出身です。でも軟式出身の子も好きですよ。特にバッテリーですね。点が入らない際どい展開をたくさん経験していますし、シニア、ボーイズは毎週のように大会をやっていますけど、中学軟式は大会で負けたら終わりです。同じ学校の仲間とチームを組んでいますから「仲間のために」という意識も強い。だから軟式出身は粘れる子が多い印象があります。私も(土浦日大に)8年間いますが、偶然にもそのうちの5期は軟式出身の子がエースでなんです。意識して抜擢してきたわけではないですけど、ここぞの場面で頑張れますよね。

——高校に入ってきてぐすに活躍できる子にはどんな特徴がありますか?

土浦日大に来てからはあまり1年生は使わなくなりました。早くに使い始めると、言い方は悪いですが野球をちょっと舐めてしまうこともあると思いますし、昨年の藤本(士生/甲子園ベスト4に貢献したエース。この春から国学院大)の例をみればコツコツやるしかないと思うんですよね。1年の頃の藤本を見ていたら、彼があんなふうになると全然思わなかったですから。初めは「こんなものかなぁ」と思っていましたが、三ヶ月経つと「あれ?良くなってきたぞ」と思って、また三ヶ月経つと今度はすごくお尻がムチムチして背中がもりっと見た目が変化していて、またしばらくしたら良いボールを投げ始めていて。要はいかに見ていないところで練習をコツコツしっかりしているかということですよね。そういう積み重ねができる子は自信が芽生えますから、夏の大会で活躍する子はそういう子ですよね。
教えて、伝えて、やらせる。それはそのときは良くなるかもしれないですけど、変化とか成長は絶対に本人が起こしていることですから。


選手がミスを怖がるようなことをしていたらダメ
——少年野球人口が減っていることについて何か思うところはありますか?

私が大きなことを言える立場ではないのですが、野球って捕るのも投げるのも全部一人なんですよね。そういったプレーが重なって野球のプレーになるのですが、そういうプレーの一つ一つの責任を負うことが「重い」と思われているのかもしれないですね。

——面白い視点ですね。それが野球の面白さでもあるんですけどね。

そこを面白いと思ってくれる子どもはいいのですが、「お前何やってんだ!」と言ってしまう指導者もいますよね? そこも大きいと思います。指導者が感情にまかせてそういうことを言ってしまう、(少年野球には)そういうイメージがあるのかもしれませんね。
私も含めてですが、今の時代の指導者は児童心理学や野球の論理も勉強していかないといけないと思いますし、野球はミスのうえに成り立つスポーツだということも学ばないといけない。ミスをした個人を責めるのではなくチームとして受け止める。選手がミスを怖がるようなことをしていたらダメですよね。

——もしも小菅監督が少年野球の指導者になったら一番大事にしたいことは何になりますか?

チャレンジする精神ですね。「よくあの打球、前に出たね」とか「みんなが手の出なかったあのボール、よく振りにいったね」とか、チャレンジすることをどんどん褒めて「チャレンジすることは怖くない!」というふうにしたいですね。振らなきゃ当たらないですし、ボールに近寄っていかないと捕れないですしね。そういう姿勢を大事にしてあげたい。「失敗は悪くない、チャレンジしないことが悪い」そんなことを大事にしたいですね。

——昨年は高校球児の髪型が話題になりましたが土浦日大も長髪ですね。

そもそもになりますが、人の髪型を坊主にしろとか、よくそういうことがまかり通りっていたなと思います。選手とも話をしたのですが、やっぱり(髪型は自分で)選ぶべきだと。だから「自分は坊主でいきます!」という子がいてもいいですし、前髪が目にかからない程度くらいであれば(何の問題もない)。
慶應義塾さんは長い歴史があって、高い学力が備わっていて今の長髪がありますけど、うちは3、4年くらいは「ちょっとどうなのか・・・・・・」という髪型をしている選手もいました。それについては色々と言いたいこと、怒りたいこともありましたけど我慢して、「こういう髪型はいいよな」って、悪い髪型を怒るのではなくて良い髪型を褒めるようにしました。
これを誰が解決したかというと、選手自身なんです。「それはダメだろう」「その髪型は品がねぇだろ」とか、(自分が介入せずに)選手同士でやらせたら、却って良くなりました。(取材・写真/永松欣也)

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