パ・リーグのFA戦線を高木豊が分析 「Cランク」でも注目の投手、ソフトバンク甲斐拓也などはどうなる?

高木豊が考察する今オフのFA

パ・リーグ編

(セ・リーグ編:巨人の大城卓三、DeNAの佐野恵太らがもっと活きる球団はある?>>)

 高木豊氏に聞く今オフのFA戦線。セ・リーグ編に続き、パ・リーグでFAを取得した選手について語ってもらった。


ソフトバンクの甲斐もFA権を取得したが、行使の可能性はあるか photo by Sankei Visual

【重宝されそうな楽天の中継ぎ、ソフトバンク勢の行方は?】

――パ・リーグでFA権を取得したなかで、注目している選手はいますか?

高木豊(以下:高木) 楽天の中継ぎの酒居知史です。タフですし安定感があるので、ブルペンにいてくれるとありがたいピッチャーです。Cランクで補償が必要ないですし、仮にFA権を行使するなら、獲得に動く球団はありそうです。とにかくピッチャー陣を強化したいヤクルトなんかはいいかもしれません。
 
 それと、酒居はロッテ時代に先発の経験もありますし、セットアッパーじゃなくてもいろいろな場面で投げられると考えれば、獲って損はないと思います。先発でもいいでしょうし、ロングリリーフを任せてみてもいいでしょう。

 今季のヤクルトは、大西広樹がフル回転していますよね。来季は勤続疲労の清水昇がある程度復調してくると思うのですが、不透明な部分もあります。おそらく大西は来季に疲れが出てくるはずで、酒居を獲っていればそこを埋められるかもしれません。

――ソフトバンクの石川柊太投手もFA権を取得済です。今季は15試合の登板(先発10試合)にとどまりましたが、昨季(4勝)を上回る7勝(2敗)を挙げました。

高木 シーズン後半に安定してきましたし、投球のテンポがいい。ノーヒットノーランを達成したことでも証明されていますが、好調な時は打ち崩すのが難しいピッチャーですよね。仮にFA権を行使するのであれば、補償が必要ないCランクですし、複数の球団が手を挙げるんじゃないですか。ボールに力がありますし、特殊なパワーカーブも武器です。ただ、ソフトバンクががっちりとガードするでしょうね。

 近藤健介山川穂高と、あれだけ巨額な契約を結んでいますが、生え抜きの選手も大事にしてくれると思いますけどね。なので、同じく今季FA権を取得した甲斐拓也や牧原大成らも含め、けっこうな金額と年数で契約してくれるんじゃないですか。

 甲斐はFA権を行使するイメージがまったくわきません。ただ、仮に手を挙げたら獲得に動く球団は、絶対にあります。甲斐が行使したらソフトバンクの正捕手がいなくなるわけで、そうなったら(FA権取得済の)巨人の大城卓三や阪神の坂本誠志郎も行使しますよ。「(自分が)ソフトバンクに行きたい」って(笑)。誰が手を挙げるか、どこのチームへ移籍するかによって、FA戦線の動向はかなり変わりますからね。

【「環境を変えたら......」と期待の選手も】

――先発ではロッテの西野勇士投手もFA権を取得済ですが、いかがですか? 今季は自己最多タイとなる9勝を挙げました。

高木 変化球を散らしながら打たせてとる術を心得ているというか、先発としての円熟味が増していますよね。仮に手を挙げれば、獲得に動く球団は出てくるはずです。ヤクルトもそうなのですが、DeNAにとってはかなり魅力的な選手だと思いますよ。

 特に右の先発がいないんです。DeNAなら本来は大貫晋一や京山将弥が頑張らないといけないのですが、なかなかピリっとしないので外部からの補強も必要なのかなと。西野なら、DeNAでもヤクルトでも先発の2番手、3番手に入る力があると思いますし、どちらのチームでも右のエース級として扱ってくれると思います。この2チームならロッテと同じ関東が拠点で大きく動かなくてもいいですしね。あくまで本人がFA権を行使した場合の話ですが。

――楽天の田中和基選手、日本ハムの石井一成選手もFA権を取得。特に田中選手はここ数年出場機会が少なくなっていますが、ともに30歳で、まだ若いです。どう見ていますか?

高木 田中はもう少し早い時期だったらよかったと思います。スイッチヒッターですし走攻守揃っていて面白いなと思っていたのですが、ここ数年はもったいない選手のひとりになってしまったなと。新人王を獲ったシーズンなんかは20本近く本塁打も打っていましたが(2018年:打率.265、18本塁打、45打点、21盗塁)、その後に故障の影響もあってか打てなくなりましたよね。

 それでも、「環境を変えたらなんとかなるんじゃないか」という期待感もある選手なんです。スピードもありますしね。仮にFA権を行使して獲ってくれるチームがあったとして、代走や守備固めでスタートして少ないチャンスをものにしつつ、バッティングの感覚を取り戻していけるかどうかですね。近年の状態だと他のチームに移籍したとしても、レギュラーとして入っていくのはなかなか難しいでしょうから。

――石井選手はいかがですか?

高木 日本ハムの内野陣も層が厚くなってきていて、セカンドは上川畑大悟をはじめ、石井、奈良間大己らと併用されていますよね。日本ハムが弱かった時でも試合に常時出られていたわけではないですし、

 特長というかストロングポイントが明確でないのが厳しいかなと。ツボにハマれば長打もあったり、いい部分もあるのですが、他のチームへ移籍してレギュラーで出ることは難しいような気がします。

 それと、セカンドはセ・リーグ、パ・リーグのどのチームもポジションが空いていません。強いて言えばオリックスのセカンドが少し弱いかなと思いますが、同じく競争になるなら、慣れた日本ハムにいて競争していたほうがいいでしょう。

――FA権を取得した選手についてお話をお聞きしてきましたが、今オフは移籍を前提にFA権を行使する選手が少なそうですか?

高木 巨人の大城やDeNAの佐野恵太、阪神の大山悠輔、ソフトバンクの甲斐拓也ら行使したら争奪戦になるだろう選手は何人かいますが、移籍するイメージがあまりわきません。でも、こればかりは本人たちが決めることであり、勝ち取った権利。何が起きるかはわかりません。いずれにせよ、野球人生の岐路になるわけですから、しっかりと考えて納得のいく答えを見つけてほしいですね。

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

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