【セ・リーグCS予想】巨人は勝ち抜けるか? 飯田哲也が挙げる各チームのキーマン

 10月12日からクライマックス・シリーズ(CS)が始まる。セ・リーグは、ファーストステージでシーズン2位の阪神と3位のDeNAが激突。そこを勝ち上がれば、ファイナルステージで巨人と日本シリーズ進出をかけて戦うことになる。シーズンでは最後の最後まで激しい優勝争いが繰り広げられたが、CSではどんな戦いが待っているのか。解説者の飯田哲也氏にセ・リーグCSの行方を占ってもらった。


今季巨人の開幕投手を務め、12勝を挙げた戸郷翔征 photo by Koike Yoshihiro

【短期決戦のセオリー】

── 飯田さんはコーチとしてCSを4度経験しています。注意することは何ですか?

飯田 基本的に負けられない短期決戦なので、シーズンとは違う作戦、たとえば長いペナントレースのなかでは強行策やエンドランでいっていたところ、バントで進塁させるなど手堅い作戦が増えます。各チームともCSが始まるまでにそのあたりは徹底していると思います。

── CSファーストステージ(3戦2勝制)、CSファイナルステージ(6戦4勝制/シーズン優勝チームに1勝のアドバンテージ)、日本シリーズ(7戦4勝制)と続きます。先発投手は、最後までローテーションを決めるものなのですか?

飯田 大まかには決めていると思いますが、短期決戦は本来先発の投手をリリーフに回したり、相手チームとの相性も加味されます。そこは臨機応変に対応していかなくてはなりません。

── 3位のDeNAは、三浦大輔監督の就任2年目から3年連続CS進出を果たしていますが、今シーズンは先発投手の台所事情が苦しいです。

飯田 東克樹の13勝に続くのは、右腕のアンドレ・ジャクソン8勝7敗、左腕のアンソニー・ケイ6勝8敗。外国人投手は双方150キロ級のストレートを武器に、力強いピッチングが武器です。ジャクソンはシーズン終盤にかけて尻上がりに調子を上げてきましたが、ケイは正直投げてみないとわからないところがあります。

── CSファーストステージに勝ったとしても、ファイナルステージが厳しいですね。

飯田 大貫晋一が背中の違和感で一軍登録を抹消されましたし(10月6日に復帰)、濵口遥大はなかなか調子が上がってきません。DeNAが勝ち上がるとしたら、打ち勝つしかないですね。チーム打率、得点はリーグトップ。ファイナルステージの先発投手の数を考えたら、2連勝が理想ですが......とにかく初戦でどこまで勢いをつけられるかでしょうね。

── シーズン2位の阪神はどうですか?

飯田 昨年10勝を挙げ、最優秀防御率、MVPを獲得した村上頌樹が不振ですが、先発投手陣の駒は揃っています。村上のほかにも、才木浩人、大竹耕太郎、ジェレミー・ビーズリー、高橋遥人、伊藤将司、西勇輝、青柳晃洋がいて、先発の数には困っていません。CSは、ファーストステージからいい投手順にいくのがセオリーです。とにかく目の前の試合に勝つことが絶対条件ですので、初戦は才木でいくと思います。

【それぞれのキーマンは?】

── 1位の巨人は、CSファイナル初戦を戸郷翔征投手、菅野智之投手のどちらでいきそうですか。

飯田 戸郷でいくでしょう。巨人はほかにも山﨑伊織、ファスター・グリフィン、井上温大たちがいます。とにかく短期決戦は、ペナントレースのように負け試合はつくれません。ファイナルステージでは中継ぎ投手を含め、いい投手から注ぎ込んでいきます。

── ファイナルステージは、巨人に1勝のアドバンテージがあり、6戦すべて本拠地である東京ドームでの戦いになります。巨人にとっては有利な条件が揃っていますが、"下剋上"の可能性はありますか。

飯田 たしかに1勝のアドバンテージは大きいですが、下位チームは初戦を取ればタイに持ち込めます。それに、たとえファーストステージで3試合戦ったとしても、ファイナルステージ4戦目になれば、エースが中6日で投げられますので対等に戦えると思います。そういう意味で、下位チームは初戦必勝です。

── 下位チームとしては、エースがファイナルステージ何戦目で投げられるのかが重要になりそうですね。

飯田 かつて「史上最大の下剋上」と呼ばれた2010年のロッテは、成瀬善久がファーストステージ第1戦で投げたあと、中4日でファイナルステージ第1戦に登板。その後、また中4日で第6戦に先発し、チームを勝利に導きました。日本シリーズでも第1戦先発のあと、中6日で第6戦に先発し、日本一を果たしました。

── 各チーム、CSでのキーマンを挙げてください。まずDeNAは誰になりますか?

飯田 エースの東です。DeNAは打線のチームですが、初戦で投げるであろう東がきっちり抑えることができれば勢いがつきます。DeNAが勝ち進むには、東の活躍は必要不可欠です。そのなかで、牧秀悟、タイラー・オースティン、宮﨑敏郎、佐野恵太といった実績ある勝負強い打者のバッティングに期待したいと思います。

── 阪神はどうでしょうか。

飯田 阪神はリリーフ陣を含めて投手陣がいいので、先行逃げ切りの展開に持ち込みたい。やはり打線がカギになりそうです。シーズン前半は打線がつながらず苦しみましたが、終盤になって近本光司、森下翔太、大山悠輔、佐藤輝明と当たりが出てきました。そのなかでキーマンとなると、大山と佐藤です。得点圏にランナーを置いた場面で彼らに回ってくることが多いですし、そこでしっかり還すことができるかどうか。得点力が上がれば、阪神の勝つ確率はグッと上がります。

── 阪神は岡田彰布監督の退任が決まりましたが、選手への影響はありますか?

飯田 選手のモチベーションが下がるとか、そういうことはないと思います。

── では、巨人のキーマンは?

飯田 やはり戸郷と岡本和真でしょう。短期決戦は、中心選手のデキがチームの命運を左右します。巨人としては、ファイナル初戦で戸郷が抑え、岡本が打てば、日本シリーズに進出の可能性は一気に上がります。

── 最後にズバリ、セ・リーグCSを制するチームはどこだと思いますか?

飯田 勢いは巨人ですが、阪神にしたいと思います。理由は投手力の充実です。短期決戦は打者へのマークが厳しくなり、シーズンほど簡単に点が入りません。どうしても投手戦になりがちです。また阪神は、昨年日本一になった経験がある。ただ巨人も先発が揃っていますし、抑えに大勢という絶対的守護神がいます。不安があるとすれば、山﨑や井上、中継ぎの西舘勇陽や船迫大雅といった若手が、初めてとなる短期決戦でどのようなパフォーマンスを発揮できるかです。シーズンどおりの働きをしてくれれば、1勝のアドバンテージがある巨人が断然有利になります。いずれにしても、ファーストステージもファイナルステージも初戦の結果がその後の展開を大きく左右すると思います。阪神の勝ちを予想しましたが、今年はシーズン同様、最後の最後までもつれるような気がします。それだけ実力は拮抗しています。


飯田哲也(いいだ・てつや)/1968年5月18日、東京都生まれ。拓大紅陵高3年時に春夏連続して甲子園に出場し、86年ドラフト4位でヤクルトに入団。捕手として入団するも、野村克也監督に俊足、強肩を買われ外野手に転向。91年から97年まで7年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得し、ヤクルト黄金時代の名手としてチームを支えた。05年に楽天に移籍し、翌年現役を引退。引退後はヤクルト、ソフトバンクでコーチを務め、20年より解説者として活躍

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