高木豊が語る「教え子」筒香嘉智のDeNA復帰 強力打線での起用法、移籍先に古巣を選んだ理由を考察した

高木豊インタビュー 前編

筒香嘉智のDeNA復帰について

 筒香嘉智が5年ぶりに古巣の横浜DeNAベイスターズに復帰した。メジャー挑戦では思うような成績を残せずに不完全燃焼。近年はマイナーリーグや独立リーグでプレーしていたが、久しぶりに復帰した日本のプロ野球でどんなプレーを見せるのか。
 
 かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動。2012、13年にはDeNAのコーチとして筒香を指導した高木豊氏に、今回の復帰がチームにもたらす効果などを聞いた。


DeNAに復帰し、笑顔を見せる筒香 photo by Sankei Visual

【日本のピッチャーに対応できるか「楽しみ」】

――筒香選手の復帰は、チームにどんな影響を与えると思いますか?

高木豊(以下:高木) かつて在籍していた時のような活躍ができれば、プラスしかないです。ただ、アメリカで結果が出なかったので、一抹の不安はありますね。ましてや近年、日本に来た外国人バッターが軒並み成績を残せていないことからもわかるように、この4年間で日本のピッチャーのレベルはかなり上がっていると思います。

 実際にやってみなければわかりませんが、4年間の"ブランク"があるうえで日本のピッチャーにアジャストしていくのは簡単なことではありません。

――アメリカではタンパベイ・レイズを皮切りに、ロサンゼルス・ドジャースやピッツバーグ・パイレーツなど、メジャー、マイナー、独立リーグを含む7球団を渡り歩いてきました。

高木 華やかな舞台を経験した一方、そうではない世界も見てきていますし、苦労を重ねましたね。だから日本のプロ野球でプレーできることがいかに幸せかを、身にしみて感じていると思います。チームメイトにも、今の環境がいかに恵まれているか、幸せを実感しながらプレーしなければいけないことを、どんどん伝えてほしいです。それと、筒香自身がファンの温かみをすごく感じていると思いますよ。

――高木さんはDeNAのコーチ時代、若手時代の筒香選手を指導されていましたが、性格面はいかがでしたか?

高木 2年間一緒にやりましたが、負けず嫌いで、やり抜く力があるんです。

 当時のDeNAはなかなか勝てなかったので、中畑清監督とも話をして「とにかく選手たちを鍛えよう」と。鹿児島・奄美大島の秋季キャンプではバットの振り込み、走り込みでとことん鍛えた時があって、多くの選手がランニングの後に倒れたり足がつったりしているなか、筒香も倒れていたんです。それで「もう、やめておくか?」と聞いたんですが、「いや、最後までやります」と言ってやり通していましたよ。

――近年はセ・パ問わずパワーピッチャーが増えてきました。筒香選手は速球が苦手という見方もありますが、どう見ていますか?

高木 確かに日本でもパワーピッチャーが増えていて、筒香は速球を苦手にしていましたが、メジャーに行く少し前くらいから対応し始めていたんです。その時からさらにピッチャーの力が増したかもしれませんが、どんな対応を見せてくれるのか楽しみですね。僕は「速球に弱いからちょっと苦しむんじゃないか」ではなく、「苦しむかもしれないが、どういう対応を見せるのか」という楽しみのほうが大きいです。

【DeNAは筒香に誠心誠意を尽くしたはず】

――現状でもDeNA打線は強力ですが、筒香選手の打順は何番がよさそうですか?

高木 いろいろな考え方ができると思いますが、初めて対戦するピッチャーも多いでしょうし、日本球界のブランクがあることを考慮すると、まずは6番あたりからスタートするんじゃないですか。DeNAにはクリーンナップを任せられるバッターが何人かいますしね。でも、十分に対応できるようなら4番を任せて、牧秀悟を2番にしたり、(タイラー・)オースティンが2番で復帰したら3番・筒香、4番・牧、5番・宮﨑敏郎にするとか。いかようにもできると思います。

 それと、筒香が打線に入ってオースティンが戻ってきた場合、打力重視で走力が懸念されるところだと思いますが、筒香はそれほど足が遅くないです。体が大きいのでそういうイメージを持たれがちですが、彼はけっこう走れますよ。オースティンにしてもそうです。

――ちなみに、DeNAへの復帰が決まる前に一部で「巨人への入団が決定的」と報じられました。さまざまな声が上がるなかで、結局は古巣に戻ることになった一連の流れをどう見ていましたか?

高木 僕の個人的な意見としては、お金とかの問題ではないと思うんです。筒香はいつくかの球団と交渉したと報道が出ていましたが、やっぱり誠意の問題なんじゃないかと。あくまで予想ですが、DeNAよりもお金を積んだ球団はたぶんあったと思うんです。でも、筒香が以前つけていた背番号「25」をずっと空けていたこともそうですし、DeNAの誠意が筒香に響いたのではないでしょうか。

 たとえばメジャーに移籍する際にイザコザがあって、球団と選手間に溝があったりすると、日本で在籍していた球団に復帰する際に「のこのこ帰ってくるのか」とファンに思われることもあるでしょうし、選手側も「それなら日本へ戻る際は、ほかのチームに行ったほうがいい」となります。ただ、筒香の場合はそうではないですし、DeNAは本当に誠心誠意を尽くしたんでしょうね。

 会見で「正直、日本に復帰するモチベーションが上がらなかった」という本人の発言もありましたが、相当な覚悟を決めて日本球界に戻ってきたはずです。「ベイスターズで優勝したい」という思いが最終的な決め手になったそうですし、どんなプレーを見せてくれるか楽しみです。

(後編:好調・ソフトバンク打線と山川穂高へのブーイング「受け止め方は人それぞれ」>>)

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

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