ヤクルト先発投手陣は「いくら考えてみても苦しい...」 真中満が「12勝」を期待するキーマンは?

プロ野球2024
真中満インタビュー最終回(全4回)
スワローズ戦力分析・投手編

3月29日、いよいよプロ野球が開幕。解説者の真中満氏のインタビューではここまでセ・パ両リーグの順位予想、古巣・東京ヤクルトスワローズの野手陣について聞いた。最終回は、投手陣について。「打撃陣の心配はないけど、投手陣が......」と話す真中氏だが、不安を打ち破るキーパーソンはいるのだろうか?

【先発のコマ不足をどうやってやりくりするか?】

ーー今度は、懸案の投手陣についてお願いします。

真中満(以下同) 心配な点はいくつもあるんですけど(苦笑)、まずは先発投手陣からいきましょうか。オープン戦段階で小川泰弘が離脱してしまったことで、開幕時点で「ローテーション確定」と言えるのは、開幕投手となることが濃厚のサイスニード、そしてプロ2年目の吉村貢司郎のふたりですよね。

 幸いにして小川も軽症のようなので、ちょっと安心はしましたけど、まだプロ2年目の吉村に、しっかりと1年間ローテーションを守ってもらわなければ困る。そんな状況となってしまいましたよね。


真中満氏が注目投手のひとりに挙げる吉村貢司郎 photo by Kyodo News

ーー 一般的に「6人のローテーション投手が必要だ」と言われているなかで、残りのメンバーはどうなるでしょうか?

 サイスニード、吉村、そして小川も早めに復帰するとして、残りの3枚は小澤怜史高橋奎二......。あとひとりが問題ですよね。大ベテランの石川雅規、そして新外国人でオープン戦でも好投を見せたヤフーレ、昨年途中から加入したロドリゲス、このあたりから選ばれることになるのかな?

 石川の場合は中6日でも問題なく投げられるけど、おそらく今年も中10日前後での起用となるだろうから、年間20試合は投げてほしいところですね。

ーー開幕3戦目での先発が予想されている新外国人のヤフーレ選手に期待したいところですが、新外国人はオープン戦と実戦とでは、いい意味でも悪い意味でもガラリと変わることがありますからね。

 そうなんですよ。新外国人は実戦で投げてみないとわからないことが多いんでね。キャンプ時点では3年目の山下輝、4年目の山野太一に期待していたんだけど、開幕時点でローテーション入りするのは難しそうだし。

 そうなると、実績はあるものの、昨年は1勝もできなかった原樹理高梨裕稔に期待したいところだけど、どちらもまだ本調子じゃないみたいだし......。阪口皓亮が先発転向するかもしれないという話もあったけど、やっぱり、いくら考えてみても苦しいですよね。

ーー髙津臣吾監督、伊藤智仁ピッチングコーチとしては、今年も苦しい日々が続きそうですね。

 これまでも先発投手が何とか5回、6回まで引っ張って、そこから継投で勝利をつかんでいくという戦いが続いたけど、そのスタイルは今年も続くでしょうね。

【質量ともに充実している中継ぎ陣でしのぎきる】

ーーそうなると今度は中継ぎ陣が気になります。

 中継ぎに関しては、僕はそんなに心配していません。質量ともに、かなり充実していると思いますから。キャンプでの故障でちょっと出遅れてしまったけど、田口麗斗も開幕には間に合いそうだし、8回には清水昇がいる。

 そして7回は木澤尚文、石山泰稚を基本としながら、新外国人のエスパーダが使えるようなら、彼に任せてもいい。さらに大きいのは、左の嘉弥真新也が加わったこと。これで、「左投手が一枚足りない」という昨年の課題がクリアできましたから。


真中満氏が注目投手のひとりに挙げる吉村貢司郎 photo by Kyodo News

ーーたしかに、実績のある中継ぎ陣がそろっていますね。

 ほかにも大西広樹はロングリリーフもできるので重宝できるし、ライオンズから獲得した宮川哲も先発でも中継ぎでもいけるし、移籍2年目の阪口皓亮も長いイニングを任せられそうだし、この辺は臨機応変に起用したいところですね。

ーースワローズの勝ちパターンとしては、攻撃陣が早めに先制して試合の主導権を握り、先発投手ができるだけ長いイニングを投げたあとに継投で勝利するということになりそうですね。もちろん、スワローズに限らず、どのチームにとっても理想の展開ですけれど。

 でも、とくにスワローズの場合こそ、その流れをつくらないといけないでしょうね。大切なのは、序盤でパン、パンと点をとる。できれば大量点をとって、試合序盤で主導権を握ってピッチャーの負担を軽くすること、まずはこれがいちばん。序盤のリードを中継ぎ陣がどうやってしのぎきるか? 髙津監督の継投もポイントになってきますね。

ーー昨年の開幕直後はリリーフ陣の奮闘もあって、開幕5連勝、リーグ10勝一番乗りと幸先のいいスタートを切りましたが、すぐに中継ぎ陣の疲弊で勢いを失いました。

 いくら質量ともにいい中継ぎ陣がそろっていても、毎試合、毎試合、ブルペン陣を何人も使いたくないから、先発投手が最低でも6回、できれば7回まで投げ抜く試合をどれだけつくれるかということも、今年はさらにポイントとなりそうです。

【投手は吉村貢司郎、野手は長岡秀樹に期待】

ーー開幕から粘り強く戦っている間に、奥川恭伸投手をはじめとする故障者たちが復帰をしてくるという形が理想ですけれど......。

 そんなに都合よくいくかどうかはわからないけど(苦笑)、たしかに奥川には今年こそ復帰して、ローテーションを守ってもらいたいと思います。ようやくキャッチボールを始めたという報道もあったけど、1カ月では戻れないかもしれないけど、せめてゴールデンウイーク頃にでも復帰してもらえると、夏場を前にすごく助かるんですけどね。

ーーⅤ奪回において、真中さんが注目する投打のキーパーソンを教えてください。まずはピッチャーだと誰でしょうか?

 ピッチャーは吉村ですね。彼には2ケタは勝ってほしい。10勝ではなく、12勝を目指すぐらいの意気込みで臨んでほしいですね。昨年は、いいピッチングをするんだけど、ここぞという時の決め球が甘くなる傾向があった。でも、今年のオープン戦を見る限りでは、きちんと狙ったところに投げる確率が高まっている。期待していいと思います。

ーーでは、バッターのキーパーソンは誰でしょうか?

 長岡秀樹かな? 実質2年目となる去年はバッティングで苦しんで、打率.227だったけど、今年はせめて.250は打ってほしい。

 レギュラーになって3年目なので、相手ピッチャーから研究されているけど、もちろんこちらだって相手ピッチャーのデータもあるわけだから、もっと打率を上げるように頑張ってほしいし、そうなれば打線の破壊力はさらに増しますからね。

ーー真中さんは、スワローズを2位予想しています。当然、昨年は7勝17敗1分と大きく負け越したタイガースを倒さなければ、2位はおろか、上位進出もままなりません。「打倒タイガース」に向けての秘策、心構えがあれば教えてください。

「秘策」があれば、そもそもそんなに負けていないですよ(苦笑)。さっきも言ったけど、タイガース戦こそ「先取点をとる」ということがさらに大事になってきますよね。

 先制点を許してしまうと、どうしても昨年の対戦成績もあって、心理的に重圧もかかるし、作戦も後手、後手に回ってしまうので、バッターは「何としてでも先取点を奪う」という意識、ピッチャーは「絶対に先制点は与えない」という思いで臨んでほしいですね。

ーー今年は、就任5年目を迎えた髙津監督の契約最終年となります。当然、期する思いも大きいでしょうね。

 勝つことは大前提なんだけど、髙津監督は一貫して「育てよう」「経験を積ませよう」という意識を持って采配していると思います。監督自身は「最終年だから」という意識はないと思うけど、ぜひ昨年の悔しさをバネにして、これまでの成果を発揮してほしいです。

ーー今年の秋には、真中さんに「前年5位から優勝できた理由」について伺いたいと思います。

 いいですね。ぜひ、今シーズンもスワローズに注目して解説しながら、OBとして、今年も期待して見守りたいと思います。

終わり

第1回<【真中満のセ・リーグ順位予想】巨人は「Bクラス」も打倒・阪神の「一番のダークホース」 中日、ヤクルトは躍進>

第2回<【真中満のパ・リーグ順位予想】西武が大躍進にソフトバンクは「Bクラス」...オリックスの「山本由伸の穴」は不安なし>

第3回<ヤクルト打線は「忖度なしでセ・リーグNo.1」 真中満が考えるベストオーダーは「6番・山田哲人」>

【プロフィール】
真中満 まなか・みつる 
1971年、栃木県出身。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、2008年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。2015年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。

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