BCリーグ分裂の真相。なぜ西地区の4球団は新リーグ発足へと向かったのか

 2005年にスタートした独立リーグは、現在、北海道から沖縄まで5リーグ、27球団(うち1球団はリーグ無所属)にまで拡大した。そんななか、最古参の四国アイランドリーグplusに次ぐ歴史を持つルートインBCリーグが、いま大きな岐路に立っている。

 9月1日、来シーズンに向けてBCリーグの8球団体制への変更と、西地区4球団による新リーグ結成が発表された。

 もともとBCリーグ創設時は4球団(新潟アルビレックス、富山サンダーバーズ、信濃グランセローズ、石川ミリオンスターズ)からのスタートだったが、徐々に拡大して、現在は独立リーグ最大の12球団体制をとっている。


BCリーグ西地区で初優勝を飾ったオセアン滋賀ブラックス

 四国アイランドリーグplusもかつて拡大路線をとったことがある。2008年に九州に本拠を置く2球団(福岡レッドワーブラーズと長崎セインツ)が加わったが、その理由は対戦カードを増やすことがスタジアムに客を呼ぶ有効な策だと考えられていた。だが実際は、観客動員にはつながらず、逆に遠征費の増加が球団経営を苦しめることとなった。結局、福岡の球団は2年で活動休止。長崎の球団も2010年限りで撤退することとなった。

 それとは対照的に、BCリーグは順調に球団数を増やしてきた。リーグ2年目の2008年には、群馬ダイヤモンドペガサスと福井ミラクルエレファンツ(現・福井ワイルドラプターズ)の2球団が加入。2015年シーズンからは武蔵ヒートベアーズと福島ホープス(現・福島レッドホープス)が参戦し、リーグエリアは東北まで広がった。

 そして2017年には、栃木ゴールデンブレーブス、オセアン滋賀ブラックスが加入。2019年にも茨城アストロプラネッツ、神奈川フューチャードリームスが参戦し、12球団となった。創設当初は北信越地区中心だったが、いつのまにか関東圏に多くの球団が設立されることになった。

 発足以来、BCリーグの代表を務める村山哲二氏に会い、今回のリーグ分裂について聞くと、西地区4球団(富山、石川、福井、滋賀)からの申し出だったと明かしてくれた。加盟球団数が増加し、エリアを拡大しすぎたのはないかと話を向けると、村山氏は否定することはなかった。

「やはり疎外感があったのかもしれない」

 淡々と口を開いた村山氏だったが、その言葉には後悔と反省が混じっているように見えた。

 そもそも、きっかけは新型コロナウイルスだった。コロナ禍に見舞われた昨年から、BCリーグ西地区は長距離移動を控えるため、他地区との交流戦を一切していない。昨年はほかの2地区も中止となったが、今シーズンは中地区(信濃、新潟、群馬、福島)と東地区(埼玉、栃木、神奈川、茨城)は交流戦を行なっている。そうした状況のなか、西地区の球団が「疎外感」を感じてしまうのも無理はない。

 来シーズンより別リーグで活動を行なうというが、事実上、昨年から独立状態だったせいか、選手たちも新リーグに関しては実感が湧かないという意見がほとんどだった。

 西地区の「疎外感」をさらに高めたのは、NPB球団との交流戦だった。BCリーグは発足以来、NPB球団のファームと交流戦を実施している。スカウトが訪れるこの交流戦は、選手にとって絶好のアピールの場であるとともに、観客動員に苦しむ球団にとっても大きな収益が期待できる「ドル箱」カードである。

 近年、NPB側でこの交流戦にもっとも積極的だったのが巨人とあってはなおさらである。昨年中止となった巨人三軍との交流戦は、今年になって再開されたが、西地区はここからも外されることとなった。西地区の球団にすれば、このような状況でBCリーグに加盟している意味を見出せなくなったのかもしれない。

 BCリーグと四国アイランドリーグplusの優勝チームが戦う「グランドチャンピオンシップ」を見ると、最初の5年は先輩格である四国アイランドリーグplusが優勢だったが、新潟が香川を破って日本一に輝いた2012年以降は4勝4敗と互角にわたり合っている。

 それだけBCリーグのレベルが上がったということだが、関東圏に球団の多いBCリーグのほうがスカウトの目が届きやすく、それゆえ好素材の選手が集まりやすくなったことも背景にある。

 同じBCリーグにあっても西地区はそのメリットを受けにくく、実際、ここ3年間でBCリーグからドラフトで指名された選手(育成ドラフトも含む)は16人いるが、西地区からの指名は4人のみで、昨年はゼロだった。

 メディアの露出に関しても、豊富な資金力をバックに元NPB大物を次々と獲得する栃木を筆頭に、地元のNPB球団・DeNAで活躍した選手を首脳陣に据え、参入初年度にリーグ制覇を果たした神奈川、2015年のドラフトで5人の選手を送り込んだ埼玉、海外経験豊富なスタッフを招聘して3人の元メジャーリーガーを獲得した茨城など、東地区の躍進は顕著だ。そんな東地区の4チームは、今年独自でオールスター戦を開催している。

「全国に独立リーグの種を蒔く」という理想とは裏腹に、肥大化したBCリーグが一枚岩でなくなってきたことは紛れもない事実だろう。

 東地区球団の存在が注目度を高めていくなか、西地区は低迷していった。古参の石川、富山、福井の3球団は観客動員の不振が日常化し、その西地区においてもっとも経営継続が危惧されていたのが滋賀だった。

 2017年に立ち上がった滋賀ユナイテッドは、親会社を持たないまさに創設者が裸一貫でスタートさせたチームだった。だが、早々に球団経営に行き詰まり、3年目の2019年にはネーミングライツスポンサーとなったゼネコンのオセアングループがシーズン途中に球団を買い取り、チーム名もブラックスとあらため再出発した。

 滋賀は今シーズン、初めて地区優勝を果たしたのだが、資金豊富なオーナー企業はチームだけでなく、リーグ再編の原動力となった。

 このオセアンと野球との関わりは、横浜スタジアムの改修工事に携わっていたことに始まる。元高校球児だった代表取締役は、野球を通じての社会貢献に積極的で、オリックスのファーム本拠地や滋賀オセアンブラックスの本拠地である彦根球場のネーミングライツも獲得している。

 球団の立て直しに成功したオセアンが、盟主として新リーグ設立を主導するというのは、ある意味必然でもあった。

 9月13日に行なわれた滋賀のホーム最終戦は、地区優勝を決めたチームの凱旋試合となった。この日の対戦相手である福井との試合前のベンチ裏の様子は対照的だった。

 両軍とも新リーグ移行への方向性を伝えられたのは、9月1日の公式発表の時だった。詳細については選手、スタッフともまだ聞いていないそうだが、福井の福沢卓宏監督は「来シーズン、自分がどうなるのかはまったくわからない」と話す。

 それでもベンチ裏では、この話題でもちきりらしい。そのなかでたびたび名前が挙がるのが、滋賀のオーナー会社である「オセアン」だ。同社がリーグスポンサーになる、あるいはリーグ運営を行なうことになれば、選手の待遇は格段に改善されるのでは......と噂されている。

 地元新聞社の球団経営断念を受けて発足した福井ワイルドラプターズの資本力は十分ではない。リーグ当局が代表の右腕的存在である小松原鉄平氏を出向させて球団を存続させようとしたが、財政状況は相変わらず厳しい。

 今年、BCリーグは選手の兼業を認める代わりに無報酬という「B契約」制度を導入したが、これは全選手に報酬を支払えなくなった福井を救済するための方策だった。こうした延命措置をとったものの、新聞社とともに撤退した地元スポンサーが戻ることは今後も考えにくい。

 そのためオセアンが福井の経営も引き受けるのではないかという期待値を込めた憶測が、待遇改善の根拠となっているようだった。

 ただ、現在の福井の選手がその恩恵を受けるわけではあるまい。今シーズンの成績は西地区最下位の21勝39敗。選手のほとんどは無給のB契約で、彼らは球団が紹介するアルバイトをしながらプレーしていた。

 新リーグは、高待遇で若くて素質のある選手を集める方針ということだが、そうなれば現在福井でプレーする選手はリストラされることも考えられる。

「現役は続けるつもりです。でも、もう西地区はいいかな」

 そう語るのは20代後半に差しかかったベテラン選手だ。来季のことなどどうなるかわからないのが独立リーガーの常とはいえ、やはり心中は穏やかではないようだ。

 村山氏によると、BCリーグと四国アイランドリーグplus、それに今年発足した九州アジアリーグで構成される日本独立リーグ野球機構に、新リーグも加入し、コロナが明ければ4リーグによるチャンピオンシップが再開される見込みであるという。

 このようなリーグ再編は、独立リーグの本場・アメリカでも2000年代に起こっている。そうした荒波を乗り越え、主要独立リーグは今年になって「MLBパートナーリーグ」の地位を得るに至った。

 そして今、日本でも独立リーグ再編の時期に来たようだ。はたして、新リーグはどのようなものになるのか。そのベールはまもなく明かされることになる。

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