《大谷翔平のワールドシリーズ》ヤンキース投手陣攻略の糸口「剛腕タイプが多く対応しやすい」 “メジャー挑戦時からの因縁”で地響きのようなブーイングも覚悟
ニューヨークとロサンゼルスの超人気球団対決となった今年のワールドシリーズ。ナ・リーグでは大谷翔平(30)を擁するドジャースが進出し、ア・リーグは58本塁打、144打点、打率.322という凄まじい成績を残したアーロン・ジャッジ(32)が主砲として君臨するヤンキースが勝ち進んだ。大谷は、悲願のチャンピオンリングを掴めるのか?【前後編の後編。前編から読む】
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大谷の直接の相手となるのは今季16勝を挙げたC・ロドンらヤンキース投手陣だが、活路はありそうだ。元巨人でメジャーに挑戦経験があり、現在はメジャー中継解説を務める前田幸長氏は「大谷が苦手とする変則的な投手がおらず、剛腕タイプが多いので対応しやすい」と見る。
「エンゼルス時代は同じリーグだったので研究されている面はあるでしょうが、当時はランナーがいる時は勝負を避ければよかったのが、後ろにベッツらが控える今は大谷を簡単に歩かせられない。
ナ・リーグ優勝決定シリーズでは、第2戦でノーヒットに封じ込められた変則左腕のマナエアに対し、第6戦でヒットを放って逆転の口火を切った。研究されてもさらに適応する力が備わっており、特にシリーズ後半になれば、大谷のバットで勝負が決まる場面も出てくるのではないか」
『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑』編著者の友成那智氏も、大谷がヤンキース投手陣攻略の糸口を掴んでいると見る。
「エンゼルス時代は、サイ・ヤング賞投手であるヤンキースのG・コールを苦手にした印象があるが、2022年9月にコールから特大の逆転3ランを打って苦手意識を払拭したとされます。ヤンキースは先発陣こそ駒揃いだが、ブルペンはあまりよくないのでチャンスがある」
問題はジャッジと相対するドジャースの投手陣だ。ここまでの勝ち上がりでも大きく崩れる試合が目立つ。先発陣が手薄で、中継ぎと抑えの投手でつなぐ「ブルペンデー」が多くなっている。
「ワールドシリーズ進出までのジャッジは相手投手が優秀だったこともあり芳しい成績とは言えないが、ドジャースの貧弱な投手陣が相手なら大爆発するかもしれません。両チームの投手力の違いで、大谷よりジャッジが活躍する可能性はある」(友成氏)
前出・前田氏も、「どちらがチームを世界一に導く活躍をするか。難しい問いですが、2人とも100マイルの剛速球を逆方向に放り込める強打者。地力で劣るドジャース投手陣がジャッジをどこまで抑えられるかが2人の対決の結果を左右するのではないか」とした。
投手・大谷との対決も
グラウンド外の要素もある。大リーグ研究家の福島良一氏は「大谷とヤンキースの因縁」に着目する。
「7年前、日本ハムからメジャーに挑戦する時はヤンキースも名乗りを上げたが、大谷サイドから面談許可が下りませんでした。昨年オフに大谷がFAになった際もヤンキースは獲得に動いたが、ライバル球団のドジャースに移籍。ヤンキースファンは大谷を“敵”と認定し、激しいブーイングを浴びせます。ワールドシリーズ第3戦からのヤンキースタジアムでも、大谷の打席では地響きのようなブーイングが球場を包むでしょう」
だが、それを跳ね返すのが大谷だ。
「これまでの活躍を見てもわかる通り、彼はブーイングを気にしないどころか、ますます燃える。過去のヤンキース戦の数字が悪いとする指摘もありますが、ホームラン級の打球をセンターのジャッジに好捕されたことが2回ほどあり、数字に表われない、いい印象がある。しかも大舞台に強い選手ということはWBCなどこれまでの実績が証明している」(福島氏)
現代の野球ファンが幸福なのは、今回のワールドシリーズが決着しても、もっと魅力的になるこの2人の戦いを追い続けられることだ。来季、大谷の二刀流が復活すれば「投手・大谷vs打者・ジャッジ」の対決もある。
「大谷がヤンキース相手に登板したのは2021年と2022年に1試合ずつしかないが、いずれも打ち込まれた。ジャッジは2打数2安打の打率10割で、うち1本は本塁打でした。ただ、当時の大谷は横に大きく曲がる“魔球”のスイーパーを習得してなかった。右バッターに有効なボールなので、今後の対戦ではジャッジを抑え込める可能性もある」(友成氏)
今季の頂上決戦、そして来季以降続く“夢の対決”からも目が離せない。
(前編から読む)
※週刊ポスト2024年11月8・15日号
10/27 06:59
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