【野球YouTube動画総再生回数No.1】里崎智也が明かす“みられるための戦略”「テレビで言えないけど、話したいことが山のようにあった」

里崎智也氏が「みられるための戦略」を語り尽くす(撮影/田中智久)

 試合の分析から技術解説、選手の本音トークなど今一番アツい野球情報を手に入れられるメディア・YouTubeが盛り上がりを見せている。プロ野球YouTuberで最も動画再生されている里崎智也氏が「みられるための戦略」を語り尽くした!

【画像13枚】1位は300万回再生超 「Satozaki Channel」再生回数トップ3。他、人気のプロ野球OB YouTubeチャンネルも

YouTubeで再び“1億円プレイヤー”に

 往年の名選手たちが自らのYouTubeチャンネルで、自由気ままに忖度なしの本音トークを繰り広げ、ディープな技術論を語り尽くす──。今、プロ野球を最大限楽しむ上で、YouTubeは欠かすことのできないメディアとなっている。

 野球YouTuberの中心はプロ野球OBだ。元巨人・上原浩治は坂本勇人から松井秀喜まで、現役・OBを問わず人気プレイヤーとの対談動画を公開し、チャンネル登録者数は90万人に到達した。技術解説に定評のある元ヤクルト・古田敦也も既に80万人の登録者数を誇る。

 この活況を予見していたかのように、野球YouTube黎明期ともいえる2019年3月にチャンネルを開設したのが、元千葉ロッテの里崎智也氏だ。チャンネルの登録者数は75万人で、総再生回数は4億7000万回を超える。YouTubeとマスコミの収入を合わせると、現役当時の年俸の水準に達し、今も“1億円プレイヤー”だという。

「YouTubeを始めた時期が僕と近いのはオリエンタルラジオの中田敦彦さんなんです。当時は、著名人がYouTubeを始めると『仕事がなくなったんだ』と世間から“都落ち”として捉えられていた。誰もやっていなかったからこそ、僕が最初にやろうと思い、高木豊さんと一緒に制作会社を作って始めました」(里崎氏、以下同)

4年半で約1900本投稿

 YouTubeでの勝算はTVとの差別化にあったと里崎氏は明かす。

「TVの野球番組は基本的に、“今”の話しかしない。過去の出来事を掘り下げて検証することもしないし、ネガティブな話もしない。僕にはTVでは言えないけれど、話したいことが山のようにあったんです」

 動画投稿の頻度は週5回。4年半で約1900本もの動画を公開した。「プロ野球選手のタバコ事情」「一軍と二軍の待遇の差」といった球界の裏事情や、ドラフトで獲得した選手の活躍度から、各球団のスカウトと編成を査定するといった企画で、視聴者の関心を惹き続けている。

オフシーズンこそネタの宝庫

 一番人気のコンテンツは「12球団全試合総チェック」だ。シーズン中のセ・パ全試合を毎日観て講評するというもので、コロナ禍の2020年シーズンから始めた。

「誰もが思いつくが、面倒くさくて誰もやらないことをやろうと思ったんです。全試合観ている解説者はいないと思うので、解説者としても強みになると思いました。現在も続けていますよ」

 シーズン中は試合の話題で話はつきないが、オフシーズンの話題は──。

「オフシーズンはドラフト、キャンプ、昨年ならWBCがあってむしろネタの宝庫なんです。野球ファンも試合がないので、YouTubeとしては盛り上がる時期。僕らしいコンテンツを発信できる時期と捉えて、どんどん発信していきますよ」

 里崎氏が引っ張る形で、魅力的な動画を発信する野球YouTubeチャンネルはこれからも続出するだろう。

「Satozaki Channel」再生回数トップ3

(※登録者数、再生回数は2024年5月30日時点 編集部調べ)

《1位》2023年1月2日投稿 332万回再生
【作業用・睡眠用・聞き流し】1994年から2018年までのスカウト&編成能力査定の12球団まとめ

 選手時代は査定される側だったが、逆の立場で、スカウトと編成の能力を査定するという衝撃の下克上企画。「批判されても気にしない。だって、事実ですから」(里崎氏、以下同)

《2位》2019年11月3日投稿 209万回再生
【衝撃】プロ野球の一軍と二軍にはこんなにも差があった。

 遠征先のホテルでは一軍は一人部屋、二軍は大部屋など、待遇の格差を明かす。「秘密を暴露しているつもりはないが、裏事情っぽい話に惹かれる人は多い」

《3位》2020年5月29日 186万回再生
【5割の野球選手は吸っている!?】球界のタバコ事情について説明します!

 以前は野球選手の半数が喫煙者だった。選手がタバコを吸う理由や移動のバス問題などタバコ事情を解説。「ずっと見てきたことだから、こんなにウケると思わなかった」

プロ野球OB YouTuber総再生回数ランキング

(※登録者数、再生回数は2024年5月30日時点 編集部調べ)

《1位》Satozaki Channel(里崎智也)4億7874万3827回再生 登録者数74.8万人

 2019年3月の黎明期から開始。「12球団全試合総チェック」に裏付けされた歯に衣着せぬ辛口の野球評論で大人気。

《2位》上原浩治の雑談魂(上原浩治)3億9014万583回再生 登録者数90万人

 豪華ゲストとの“雑談”に特化。高橋由伸には巨人監督時代の舞台裏を親友の上原が深堀りした。

《3位》高木 豊 Takagi Yutaka(高木豊)3億4328万805回再生 登録者数48.7万人

 里崎智也と同時期にYouTubeを開始したパイオニア。“おっちゃんYouTuber”として自虐ネタを交えながら野球解説する。

《4位》フルタの方程式【古田敦也 公式チャンネル】(古田敦也)3億2533万4947回再生 登録者数80.1万人

 マウンドやバッターボックスを用意した専門的な技術解説に定評がある。最新回では名球会入りを果たしたアレックス・ラミレスが登場した。

《5位》デーブ大久保チャンネル(デーブ大久保)3億1708万72回再生 登録者数37.6万人

 自身が経営する居酒屋店内で、野球からゴルフまで幅広いテーマでゲストと対談する。お酒を交わしながらゲストの本音を引き出す。

《6位》片岡篤史チャンネル(片岡篤史)1億4706万43回再生 登録者数27.9万人

 2019年10月から投稿開始。桑田真澄がゲスト出演した回では、PL学園時代の思い出を朗らかに語る桑田の様子が印象的。現在は中日一軍ヘッドコーチを務め、現役コーチとしての動画発信に期待が集まる。

《7位》川上憲伸 カットボールチャンネル(川上憲伸)1億1984万6864回再生 登録者数27万人

 長年現役として活躍したノウハウを活かし、中高生のプロ有望選手たちにコーチングする様子を公開している。効率よく球に力を加えるフォームなど、その場でアドバイスすると見違えるほど改善される。

《8位》よしひこチャンネル(高橋慶彦)1億442万7928回再生 登録者数16.1万人

 広島、阪神での現役時代の思い出をゲストと共に振り返る。阪神現監督の岡田彰布との対談では監督就任前の心境や今のプロ野球界への思いを聞き出した。

《9位》清ちゃんスポーツ(清原和博)1億89万8457回再生 登録者数51.4万人

 ゲスト対談から野球とは関係のないスパーリングまで体当たりぶりが人気。薬物の後遺症について語るシリアスな回も。

《10位》ミスターパーフェクト槙原(槙原寛己)9902万8162回再生 登録者数21.7万人

 まるでテレビバラエティであるかのような凝ったテロップを多く使う本格派。名作は新庄剛志と「敬遠サヨナラヒット」の裏側を語る回。

【プロフィール】
里崎智也(さとざき・ともや)/1976年5月20日生まれ。元プロ野球選手、野球解説者。1998年に千葉ロッテ入団。2006年のWBCでは正捕手を務め、優勝を果たした。

取材・文/清水典之

※週刊ポスト2024年6月21日号

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