【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】巨人優勝を予想した達川氏「オドーアがいなくなったから広島1位に修正ですよ」

順位予想もやり直し(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏)

 江本孟紀氏(76)、中畑清氏(70)、達川光男氏(68)による『週刊ポスト』の名物企画「ENT座談会」。前編では、昨年日本一の阪神について江本氏が「“アレ”にもう1つ“レ”がついて“アレレ”になる」と論じれば、中畑氏が古巣・巨人の打順について物申すなど、“大荒れ”の展開となったが、さらに後編では「順位予想の修正」も飛び出して……。【前後編の後編。前編から読む

【写真】120分にわたる座談会のアザーカット。他、岡田彰布監督や佐藤輝明なども

 * * *
中畑:ルーキーでは巨人の西舘(勇陽)も健闘しているね。アマ時代から見ていたけど、ここまで通用するピッチャーだとは思わなかった。

江本:先発では考えていないの?

中畑:オープン戦では先発をさせていたけど、三振が取れて7~9回に投げさせたいタイプでもある。若いから先発で育てたいが、チーム事情から阿部監督がリリーフに抜擢したみたいだよ。

江本:本気で優勝しようと考えたら、そういう手を使わざるを得ないけど、先発は作ろうとしないと育たないのも事実。我々の時代は、先発ができなくなった一丁上がりの人が中継ぎや抑えをやったもんです。そういう意味では、菅野(智之)を早くストッパーに転向させたほうがいいと思う。

中畑:よかった時のような力は感じないけど、うまさはあるよね。

江本:逆に、大勢を先発に回すべき。あれだけいい球を投げているんだから。菅野はプライドがあって嫌かもしれないが、コントロールはあるしピッチングは知っているから、1イニングならまだ通用する。先発だと打線の弱いチーム相手なら勝てるでしょうが、投手陣の中心にはならない。

達川:ただ、菅野と小林(誠司)を組ませたのは正解ですね。小林はリードがよくなかったが、阿部監督に「ストライクゾーンで勝負しろ。それでホームランを打たれてもOKだから」と言われてリードがよくなった。魔法の言葉ですよ。

中畑:阿部監督が誰を正捕手にするかは興味があった。キャンプでは岸田(行倫)や若手の山瀬(慎之介)の評判がよかったけど、やはり打てるキャッチャーで大城(卓三)なのかな。大城はオレと同じ背番号だから、ベンチにいてほしくない気持ちもあるけど(笑)。

江本:ノムさんなら大城は100%使わない。理由は言いたくありませんが、キャッチャーには向き不向きがあるんです。そこへいくと、阪神の梅野(隆太郎)と坂本(誠志郎)は2人ともキャッチャー向きだけど、梅野は故障が多い。岡田は梅野を使いたかったが、坂本は出ると結果を残すから併用せざるを得ない。

達川:近鉄の有田(修三)さんと梨田(昌孝)さんの関係を思い出すよ。同じような実績のキャッチャーを併用するとよくないけんね。有田さんと梨田さんは、話もしなかったというから。

中畑:オレと原みたいなもんだ(笑)。

達川:焼き餅を焼いていたんでしょう?

中畑:今でも焼いているよ、焦げちゃうくらい。

立浪中日が台風の目に

中畑:それにしても、中日の8年ぶりの単独首位はすごいね。

江本:中継の解説でヨイショしまくったよ(笑)。中田翔に頼っているけど、速い球を振るのはインコースだけ、外はみんな右方向に打つ。緩い球も引っ張らない。考えているし、賢くなったね。

達川:中田と立浪(和義・監督)は波長が合っているんですよ。(2013年の)WBCでも仲がよかったらしい。巨人では腰を曲げて、爺さんみたいなバッティングをやっていたじゃないですか。今年は立浪のアドバイスでそれを変えたそうですよ。

中畑:人間関係のなかで素直に監督やコーチの話を聞ける時と聞けない時がある。歳を重ねたんだろうね。中田にも、中日が最後のチームという感覚があるんじゃないかな。

江本:もともと中日はピッチャーはいい。去年は柳(裕也)が9回をノーヒットに抑えながら、打線の援護がなくて勝ち星がつかなかった。打線がついてくれば台風の目になる可能性はある。

達川:カープはバッターがヘボばっかりじゃけん、中日戦に始まって4試合連続で完封負けですよ(4月5~7日の中日戦と9日の阪神戦)。セで12年ぶりだった。

中畑:何を隠そう、12年前の記録を作ったのはオレだよ(笑)。DeNA監督1年目で、マエケン(前田健太)にノーヒットノーランを食らった。頭から消えないよ。

江本:ボクも現役の1979年に経験したけど、4連敗のうち2敗したからなぁ(苦笑)。

達川:今はまだカープもしんどいけど、今年は優勝しますよ! 開幕前はマジで当てに行って巨人を1位予想したら、地元でものすごく叩かれたけんね。「達川が広島以外を予想するなんて見損なった」と。オドーアがいなくなったから、予想は広島1位に修正ですよ。

中畑:そんなこと言ったら、オレは巨人のOB会長でありながら、去年は阪神を1位にしたんだよ。今年は巨人だけど(笑)。監督が代わったからね。

江本:ボクは阪神1位で予想は変えません。

中畑:残るヤクルトは、村上(宗隆)が上がってこないと無理だろうね。山田(哲人)は終わってるし……。

江本:開幕戦で外国人(サイスニード)が投げているようではダメでしょう。今の投手は勝ち星のことを考えているのかと思う。勝ち星にこだわるなら5回や6回で代わらないですよ。ボクが現役の頃は、他人に任せるのが怖かったから。

達川:ピッチャーは勝ち星がすべてですからね。

江本:ボクは6年連続で200イニングを投げた。それが今は100球で降板して、ゲームを作りましたとコメントしているんだから信じられない。

中畑:それが当たり前になっている。ロッテの佐々木朗希が典型だよね。

達川:規定投球回すら投げれんで、“メジャーに行かせてくれ”だからね。

江本:ボクは佐々木が180イニング以上投げて、15勝するという条件付きで、パはロッテが優勝すると予想したんです。

中畑:いいね! その成績なら即メジャーだよ。プロでこんなに時間をかけて育てたケースはないから、ボチボチ完成してもいいんじゃないかな。

(了。前編から読む

【プロフィール】
江本孟紀(えもと・たけのり)/1947年、高知県生まれ。1970年ドラフト外で東映入団。1972年に南海に移籍し、野村克也とバッテリーを組む。引退後は参議院議員やタレントとして活躍。

中畑清(なかはた・きよし)/1954年、福島県生まれ。1975年ドラフト3位で巨人入団。三塁手として活躍し、原辰徳の入団後は一塁手に。引退後の2012~2015年、DeNA監督を務めた。

達川光男(たつかわ・みつお)/1955年、広島県生まれ。1977年ドラフト4位で広島入団。正捕手として活躍。広島監督や阪神などのコーチを歴任し、ソフトバンクでは日本一を経験。

※週刊ポスト2024年5月3・10日号

ジャンルで探す