《不正送金24億円で騒然》水原一平容疑者、大谷翔平と出会った後に「運転中のマリファナ所持歴」抹消 「更生プログラム」も受けていた

違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏(39)

 4月11日、ドジャース大谷翔平(29)の元通訳・水原一平容疑者(39)が違法賭博に関与していたとされる問題で、アメリカ連邦検察が銀行詐欺容疑で訴追したことを発表した。違法賭博の借金を返済するため、大谷の預金口座から不正送金した額は日本円でおおよそ24億5000万円以上。大谷の許可なく、銀行をだまして多額の不正送金を行った罪に問われている。水原容疑者は12日にもロサンゼルス市内にある連邦地方裁判所に出廷する予定で、銀行詐欺の罪で、最高30年の拘禁刑を言い渡される可能性がある。

【裁判資料】水原一平氏(39)の「マリファナ所持」記録には、更正プログラムを受けることを条件に不起訴との記載が

 検察によると、水原容疑者は大谷の大リーグ1年目の2018年に口座開設を手伝い、信頼関係を背景に口座にアクセスできたという。2021年11月から2024年1月にかけて、口座から不正送金を繰り返していた。

 水原容疑者は大谷の専属通訳になるまでのあいだに「2度のスピード違反」と「運転中のマリファナ(大麻)所持」といった、カリフォルニア州が定める交通違反で裁判沙汰になっていたことがわかっている。取材班は「運転中の大麻所持」に関する裁判記録を現地の裁判所で入手。そこに書かれていたのは水原容疑者の意外な行動だった──。【前後編の後編。前編から読む】

司法取引で「A大学の更正プログラム」を受けることに

 すでに報じた通り、アメリカでは司法機関やそれらのデータをまとめたサイトで、過去の犯罪にまつわる履歴が記録されており、誰でも簡単に調べることができるようになっている。日本では犯罪にまつわる履歴は有名人であったり大きな事件で報道でもされない限りオープンな形では残らないが、アメリカでは軽微な違反などでも記録され、それが見られる状態になっているのだ。前述した水原容疑者の「違反」の経歴は、そこから浮上した。

 マーシャル鈴木総合法律グループの弁護士で、カリフォルニア州弁護士会に登録のある鈴木淳司氏が解説する。

「裁判資料を見ると水原氏は2008年11月に弁護士は立てずに、本人だけで出廷していたようです。その際に司法取引を行い『運転中の大麻所持』の有罪を認めています。

 罪を認める代わりに期日までに更正プログラムを完了し、その修了証を提出すれば起訴を取り下げる処置をするという判断になっていますね。ともあれ、一旦は有罪を認めているのは間違いない事実です」

 資料には確かに〈カリフォルニア州のA大学〉と〈更正プログラム〉の単語が並んでいる。この「更正プログラム」とは一体、どういうものなのか。

「前提として、まずこのようにドラッグなどの所持に関する犯罪については自傷行為の側面があります。ですから裁判所もどちらかというと刑を科すよりも、更生を重視します。

 カリフォルニア州は公的にこのプログラムを教育機関などに設けています。水原氏のように大麻やドラッグで罪を認めた人は、週〇回と定められた期間でそういったプログラムを受けるケースがある」

州法上は「前科なし」

 こうして2009年1月、無事に起訴を免れた水原容疑者。しかし裁判資料はここで終わりではない。最後まで目を通すと2014年、すでに彼が日本ハムファイターズの球団通訳として活躍していた年にこの記録は〈破棄〉されていた。この点に関して鈴木氏は指摘する。

「水原氏は“Expungement”という記録抹消の手続きを申し立てて、自分から記録を消す作業を行なったものと思われます。2014年にこれを裁判所が認めて、記録は破棄された。水原氏の起訴内容はカリフォルニア州法に基づいているわけですが、問題はその情報が連邦政府にも送られているということです。

 州法については“Expungement”が成立しているので、破棄されています。そうすると民間の就職などでは『前科なし』と言って問題ないのです。一方で、公的な申請、例えばビザや永住権に関わる場合、連邦の仕事に就職する場合などには『法律上、前科はあった』としなければなりません」

 残念ながら周囲を裏切り、訴追され水原容疑者。2012年に日ハムに採用された彼は、同年末に入団した大谷と接点を持ったのちに、上述のような抹消手続きをしていたことが裁判記録からは読みとれる。犯罪記録の抹消手続きが認められた2014年といえば、大谷が侍ジャパンとして日米野球に出場し、国際試合デビューを飾った年でもある。その後、大谷はエンゼルスに入団した。

 アメリカでは珍しくないという大麻所持での運転という違反。更生プログラムを受け、起訴は取り上げになったことからしても、その経歴だけで水原容疑者のすべてを批判すべきではないだろう。しかし、水原容疑者が日本国籍であり、アメリカの永住権を持っていた場合には、移民法上、強制送還になりえる麻薬の罪に問われ、罪を認めていることは明らかであり、その事実を把握することは事前に可能であった。

 また自己申告することも可能だった。幼少期からアメリカに住んでいることから、周囲では簡単にマリファナなどにアクセスできたと思われるが、自身も所持を認めていることから、連邦移民法上、強制送還等のトラブルに発展しかねない内容である。

 前稿でも触れた通り、学歴に関する疑義まで含めてすべてを大谷やその周辺が把握していたら、24億円以上を送金したという巨額資金が入っている口座の開設を手伝ってもらったり、銀行とのやり取りに関する通訳まで頼っていたであろうか。

 結果的には、水原容疑者はその信頼を悪用したことは間違いない。

(了。前編から読む)

ジャンルで探す