《国民的スター2人の騒動考察》大谷翔平の結婚&賭博問題で思い出す羽生結弦の「105日離婚」 アスリートの妻に控えめと献身を求める時代錯誤

結婚が話題となった、国民的スターの大谷翔平と羽生結弦(時事通信フォト)

 この1年の間、日本を代表するトップアスリートの2人がプレー以外の話題で世の中の注目を集めた。ともに29才の“同級生”、フィギュアスケートの羽生結弦(29才)と、米大リーグ・ドジャースの大谷翔平(29才)だ。国民的スター2人の騒動から見えてきたものとは――。有名人批評に定評があり、夫婦に関する問題についても執筆活動を行うライター・仁科友里さんが分析する。

【写真】羽生結弦と元妻が寄りそう2ショット。他、大谷翔平が妻をチーム関係者に紹介する姿など

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 米大リーグ・ドジャース大谷翔平選手の結婚。国民的ヒーローのおめでたいニュースに日本中が沸きますが、予想もしないことが起きてしまいます。専属通訳であった水原一平氏が違法賭博で借金を作り、大谷選手の口座から振り込みをしていたというのです。ハリウッド映画のような展開に驚くばかり。

 けれど、大金を手にすることで、何かとトラブルにつながるケースがあるようです。2004年の宝くじ高額当せん殺人事件をご存じでしょうか。サマージャンボ宝くじで、一等二億円を当てた女性が、交際相手の男性にだけ、それを打ち明けていたそう。その後、相手の男性はこの女性を殺害してしまったのです。もちろん殺人事件と今回の件を同列に語れませんが、大金が身近にあると人は変わってしまうのでしょうか――。水原氏と大谷選手の関係がそんなものだったとは思いたくない人が、ほとんどではないでしょうか。

珍しくない!スターが信じていた人に裏切られた“事件”

 しかし、スーパースターが信じていた人に裏切られるというのは、珍しいことではないようです。2017年2月21日放送の『しくじり先生 俺みたいになるな!! 3時間スぺシャル』(テレビ朝日系)に出演した元プロ野球選手・新庄剛志さんは、年俸の管理を「母親の知り合い」なる男性に任せて、詳細はチェックしなかったそうです。新庄さんと言えば、メジャーリーグでも活躍し、生涯年俸は44億円とも言われています。しかし、男性にお金を使いこまれてしまい、気づいた時には2200万円しか残っていなかったといいます。使い込みもさることながら、「信用していた人に裏切られたのが、悔しかった」と言っていたのが印象的でした。

 一方で、身内なら信頼できるかと言うと、そうとも言いきれません。元巨人軍・桑田真澄さんは、お父さんが事業を起こしては失敗する家庭に育ち、プロ野球選手になってお母さんに楽をさせてあげたい一心で、つらい練習をやりぬいたそうです。巨人軍に入り、財産管理を親戚にまかせますが、この親戚が無謀な不動産投資をし、バブルがはじけたこともあって、桑田さんは巨額の借金を背負わされてしまったと報じられています。直接の血縁ではなかったようですが、身内だからと安心していたら、裏切られてしまったわけです。

 このような経験をすると、人間不信になってもおかしくありませんが、大谷選手はツイている。「結婚早々、悪いことがある」というのは、結婚のタイミングとして悪くないと思うからです。

 女優と大実業家というカップルは、今も昔もよく聞く組み合わせですが、夫の事業が傾くと、離婚するケースは少なくありません。女優・坂口良子さんのように、実業家である夫(当時)の連帯保証人にされていたことから、多額の借金の返済を迫られるという気の毒なケースもありますし、離婚しないことがエラいわけではありませんが、いい時に結婚すると、人は誰しも「それがずっと続くもの」と思いこみ、思いもよらないことが起きたときに「こんなはずじゃなかった、こんな人だとは思わなかった」となり、離婚のハードルが低くなるのではないでしょうか。

羽生は結婚のタイミングがよくなかった?

 結婚のタイミングと言えば、過ぎた話を蒸し返してなんですが、大谷選手と同じ年に生まれたもう一人の天才、フィギュアスケートの羽生さんの結婚は、あまりタイミングがよくなかったように思います。

 昨年、羽生さんは相手を明かさぬままに結婚を発表しますが、その105日後に離婚を発表します。
「現在、様々なメディア媒体で、一般人であるお相手、そのご親族や関係者の方々に対して、そして私の親族、関係者に対しても、誹謗中傷やストーカー行為、許可のない取材や報道がなされています」「お相手に幸せであってほしい、制限のない幸せでいてほしいという思いから、離婚するという決断をいたしました」と、メディアの過度な取材によって引き裂かれたことを示唆したのでした。

 しかし、二人の間に問題が何もなかったとは言い切れないようです。元妻の後見人の男性が『週刊文春』で、二人の結婚生活の“内情”を明かしています。男性が同誌に語ったところによると、元妻には自由がなく、羽生家からのけ者にされていたと言うのです。羽生さんのお母さんやお姉さんにより、元妻は外出はもちろん、ゴミ出しすら禁じられ、羽生さんの身の回りの世話もさせてもらえなかったそうです。羽生さんの会社は家族が役員を務めていますが、そこにも入れてもらえなかったと言います。情報の漏洩を恐れていたのでしょうが、羽生さんは祖母など親戚にも結婚を明かしていなかったそうです。

 一般論で言えば、母親や姉の言いなりで妻の立場に立とうとしない夫というのは、女性ウケはよろしくないと言えます。それにひきかえ、大谷さんは妻をきちんと公表しつつ、過度な取材を慎むようにけん制するなど、メディア対策もうまいと大谷アゲ羽生サゲする人もいるでしょう。

 けれど、私に言わせると、どちらがうまいとか正しいという話ではなく、羽生さんの家が妻を迎える準備ができていなかった、つまり結婚のタイミングがよくなかったのだと思うのです。

 上述したとおり、スーパースターというのは、いろいろな目論見を持った人が近づいてきてしまうことがある。ですから、スターの家族が他人に対して警戒心が強くなったとしてもおかしくないと思います。けれど、いつまでも人を疑っているわけにもいかない。それでは、どうすれば相手を信頼できるのか。それは羽生さんの祖母の言葉に集約されているように思います。

現代ビジネス』の取材に対し、祖母はこう答えています。

「ゆづには、ふつう結婚する場合は、お互いの家族に紹介し、それぞれの家庭を行ったり来たりして互いを何となく知り、それから結婚を決めるもんだよって伝えました。やっぱり、ゆづは子どもだったんですよ」

 祖母がおっしゃるように、二人の気持ちだけで結婚を決めず、羽生さんの家族と元妻が密にコミュニケーションを取り、どうぞお嫁に来てというウェルカム体制を整えることができていたら、“軟禁状態”とも言われた結婚生活にはならなかったかもしれません。どちらが悪いという話ではなく、結婚を急ぎ過ぎた、もしくは結婚そのものをするタイミングではなかったのだと思います。

大谷は騒動をきっかけに“金銭管理”を変更?

 ところで、「起こったことは、みんないいこと」という言葉をご存じでしょうか? これは依存症治療のモットーで、依存症は消し去りたい記憶であるかもしれないけれど、起こるべくして起きたことなのだから、悔いたり自分を責めたりしないで、自分を変えるチャンスにしていこうという意味です。

 もちろん大谷選手も羽生さんも依存症ではありませんが、今は生き方を変えるタイミングと捉えたらどうでしょうか。今回のことをきっかけに、大谷さんは金銭管理などを、妻にも相談しながら進めるようになると私は予想しています。もちろん、金額が金額なだけに専門家などもかかわってくると思いますが、夫婦で話し合い、お金のことを含めて生活感覚を持つことは、家庭の充実につながるでしょう。何より妻に感謝することが増えますから、二人の絆が強くなると思うのです。

 男女平等、ジェンダーフリーがこれだけ叫ばれているのに、アスリートの妻には判で押したかのように控えめかつ献身を求めるのってヘンなことだと私は思います。こんな騒動の中でも、大谷選手は今シーズン1号のホームランを打ったそうで、よかったよかった。メジャーリーガーは家族を大事にすると聞いたことがありますが、大谷さんには野球だけでなく、家庭や家族を大事にする二刀流でお願いしたいものです。

【プロフィール】
仁科友里/フリーライター。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ』(主婦と生活社)。

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