巨人・岡本大翔 データと感覚の「ズレ」埋められる存在に…今季限りで引退 データ・アナリストとしてチーム支える

現役を引退し、スタッフとしてチームを支えることになった岡本大(カメラ・相川 和寛)

 巨人の若手の今を伝える「From G」。第16回は岡本大翔内野手(22)。9月下旬に戦力外通告を受けると、現役引退を決断した。今後はスタッフとして球団に残り、選手のデータ測定や管理を担う「DA(データ・アナリスト)チーム」に配属される見通し。鳥取屈指の進学校・米子東高出身の頭脳を生かして第二の人生を歩み始めた現在の心境を明かし、今後は選手の心情に寄り添うサポートを目指すことを誓った。(取材・構成=小島 和之)

 全力を尽くした4年間のプロ野球生活に、岡本大は別れを告げることを決めた。9月30日に戦力外通告を受けてから、熟考した末に現役引退を決断。すっきりとした表情で、その理由を明かした。

 「1軍で活躍できるように頑張ろうと思ってプロに入ったけど、やはり1軍のレベルまでついていくことができなかった。4年間やってみて、自分がこの先1軍で長く通用できるかと言われると、無理だなと思った。仮に社会人や独立リーグからオファーをいただいたとしても、プロ野球に戻って、1軍でまたできるかって言われるとやはり難しい。悔しい気持ちはありますが、そのレベルで野球ができないんだったらやめようかなと思いました」

 鳥取・米子東高から20年育成ドラフト1位で入団。同じ岡本姓で主砲の岡本和真には、自主トレで弟子入りするなど感謝は尽きない。

 「1年目に自分からお願いして自主トレもずっと連れていっていただいて、一緒にやらせてもらいました。今でもちょこちょこ連絡を取らせてもらっていますし、本当によくしていただいて感謝しています」

 現役は引退するが、今後は巨人の頭脳としてチームを支える。一時は大学進学や一般企業への就職も検討していたが、巨人から鳥取屈指の進学校を卒業した頭脳を生かし、スタッフとして球団に残らないか、とオファーを受けた。

 「球団からはデータ分析の部門でやってみないか?という話をいただきました。高校時代からデータを見て、自分で考えながら野球をするスタイルだった。とても興味がある分野だったので、オファーをもらった時はうれしかった。家族からは『やるか、やらないかは自分で決めたらいいよ』と言われていたので、決断ができました」

 これまでバットを振り続けてきた両手には現在、撮影用のカメラやタブレット端末が握られている。慣れない作業に戸惑いながらも、刺激的な日々を過ごしている。

 「パソコンをほとんど触ったことがなかったので、機材の操作や編集などを覚えるのが大変。今は撮影した動画を選手が見やすい形に編集していますが、いっぱいいっぱいです(笑い)。裏方さんたちは自分が思っている何倍も大変な作業をされているんだなと、身をもって感じています」

 巨人DAチームに野手のプロ出身者が加入するのは初めてのケースという。目指すのは、選手の感覚とデータとして出ている数値の隙間を埋められる存在だ。

 「データで実際に出ている数値と、選手が感じる感覚はズレがあります。4年間プレーしたからこそ、野手としての感覚、どんな気持ちになるかというのは分かる。それを無理やりデータの方に寄せていくのは、野手としてはあまり気持ちのいいものではないと思います。一緒にやっていた選手も多いので、気持ちに寄り添いつつデータも見ながら、一方通行にならないコミュニケーションを取ってやっていきたい」

 プロ入り後、長くプレーした3軍での経験も生かしていくことになりそうだ。

 「3軍には育成選手が多いですが、そのデータがどういうものを表しているのかが分からなかったり、うまく使いこなせなかったりという選手がまだたくさんいると思います。理解しやすいところから一緒に考えて、会話をたくさんしながら本人が納得するものを見つけたい。コーチの考えもあると思うので、バランスを取りながらやっていきたいです」

 第二の人生では、強い巨人を裏から支えるために全力を注いでいく。

 ◆岡本 大翔(おかもと・ひろと)2002年9月12日、鳥取県生まれ。22歳。小1から軟式野球を始め、岸本中では米子ボーイズ。米子東では1年春から一塁手でレギュラー、同年秋から遊撃手。2年時甲子園春夏連続出場。20年育成ドラフト1位で巨人入団。昨季は2軍で18試合に出場し、打率1割9分6厘、1本塁打、5打点。プロ4年で1軍出場はなし。今季限りで現役引退。190センチ、94キロ。右投右打。

 ◆DA(Data Analyst)チーム 今季から新設された育成強化部に属しており、アナリストらが所属。寮のトレーニング棟にある最先端ラボをフル活用して選手の動作解析を行い、スイングスピードや軌道、投球フォームなどをフィードバックして育成に生かしている。同部には、ジャイアンツ寮での人間教育などの育成部門を担う育成チームと、コンディションの管理や強化を担うトレーニングコーチや栄養士らが所属する強化チームも属している。

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