【高校野球】イチロー氏が大阪・大冠高校で指導 強烈なイチ流ゲキ&大阪名物の「粉もん」焼きも実演 

指導を前に、お好み焼きを作るイチロー氏(代表撮影)

 日米通算4367安打を記録したイチロー氏=現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が9、10日の2日間、大阪・高槻市の大冠(おおかんむり)の野球部を臨時指導した。高校生の指導は2020年の智弁和歌山を手始めに5年連続9校目。同部の選手全員から手紙が届いたことがきっかけで、初めて大阪の高校を訪れた。

 大冠は17年夏の大阪大会で準優勝した公立校。「手紙から情熱は伝わってきた。しかし、自分たちの現在地や強豪私立を倒して勝ち上がることの難しさをどこまで理解しているのか。聞こえのいい目標を持つことで満足してしまっていないだろうか。彼らの覚悟と正しいアプローチができているのか、そこを確かめたかった。『強豪私立を倒す』という目標を掲げる公立校の本気度を厳しい目で見てみたい、その思いで訪問を決めた」という。

 「大阪の結果はフォローしています。大阪の状況を見ると、大阪桐蔭と履正社の2強なんだろうと。強烈に意識しているよね? 一方で相手がどう思っているか考えてほしいんだよね。彼らはどう思っているか考えたことある? 僕は愛工大名電で野球をやっていて、愛知4強と言われて。この立場からするとベスト16のチーム、眼中にないです。意識もしていない。相手は相手と思っていない、そこに挑むんだよ。練習でできることは限りがある。基本的なことしかやらないです。どこまでいけば対等にできるのか。練習ではものにできたかもしれない。でもゲームで生かせるかは別。強豪校は強豪校としかやっていない。自分たちがうまくなるレベルのチームと試合をしている。だから(強豪と)差が開いていく。その壁は相当厚い。でも、みんなの情熱を持っていたら、一発勝負なら。初めましてで、ここまで厳しいことを言うのは初めてです。僕も本気で来たと言うことを知っておいて。みんなにとって厳しい人っている? 怖いなとか。面倒くさいとか思う人がいる? いたら幸せなことですよ。そういう人をもっていてほしい」と、厳しい言葉を並べながら約10分かけて選手にあいさつした。

 この日は、選手の保護者がグラウンドの脇でお好み焼きを焼いているのを発見。アップの後、焼いている場に来たイチローに選手が「1枚焼いてもらっていいですか?」。イチローは「そのために来たから(笑い)」と応じた。「焼いたことはあるけど久しぶりだからな。丸くするのは全部これ(コテ)で完結? しばらく待つの? ひっくり返す? そのタイミングはセンシティブなんだ」と興味津々。ひっくり返そうとするイチローを選手たちが「お~」とあおり、成功してドヤ顔。裏面の焼き加減を気にしながら「もうちょいかな? これは経験しかないと。箸で(触って)見極める、その感じに似ている。俺こんなことやらされたことないからね(笑い)」。一口食べて「うまい! 実は昨日もいただいて、キャベツのしゃきしゃき感がなかったから野菜が多いとうれしいとリクエストしていた。でも練習前だから以上」と皿を置いてグラウンドに向かった。

 2日間で「公立で甲子園に行くのは(1990年の)渋谷以来? それ以来を目指してほしい」「すごくいい練習をしている」「大阪桐蔭に勝つんじゃないの?(笑い)」「監督、コーチより実はマネジャーの方が純粋な変化が分かる。それを見ておいてください。マネジャーの見方って面白くて、ぜひ生かしてください。マネージャーの力が必要なので。その覚悟を持って」と数々の金言を贈った。

ジャンルで探す