カブス世界一へ日本企業の分析力を味方に…「ネクストベース」と提携 驚きの投球フォーム30コマ、データの細かさ

2024年2月、カブスのキャンプ地にネクストベース社のメンバーが訪問した。後列左から3人目がカ軍のジェド・ホイヤー編成本部長、同4人目がネクストベースの代表取締役社長の中尾信一氏、前列左から2人目がネクストベース上級主席研究員の神事努氏

 4年ぶりにワールドシリーズ制覇を果たした大谷翔平投手(30)を擁するドジャース攻略へ、カブスが日本企業とタッグを組む。今永昇太投手(31)と鈴木誠也外野手(30)が所属するカ軍は、アスリートの動作解析分野で日本をけん引する「ネクストベース」社と業務提携することが5日、分かった。同社の分析による投手のけが防止、球速アップの実績が、メジャー古豪の目に留まった。侍企業がメジャーに新風を吹き込む。

 カブスジェド・ホイヤー編成本部長が昨年9月、「ネクストベース」社が開設した、千葉・市川のスポーツトレーニング施設を訪れた。年間のべ200人以上のNPB選手の動作解析を行う同社のシステムをチェックするためだった。

 動作解析と言えば、米シアトルで創業した「ドライブラインベースボール」など、米国が先進する分野と見られているが、カ軍は日本球界のけが人の少なさに着目。そこで日本の同社に興味を持ち、今年2月に米アリゾナ州の春季キャンプに同社メンバーを招待、実際にデータ収集を依頼した。

 上級主席研究員の神事(じんじ)努氏らがマイナー投手を中心に測定。頭のてっぺんから足の先まで48か所にマーカーを装着した状態での動きを、周囲に設置した14台のカメラで撮影した。マウンド下には、足が地面に加えた力の大きさと方向が計測できるセンサーが内蔵された「フォースプレート」という機器が置かれ、地面を踏むことによる反力を数値化した。

 カ軍が驚いたのは、そのデータの細かさと分析ノウハウだった。例えば、投球フォームの中で胸を張ってから球を離すまでの動きを撮影すると、他社では7コマのところ、同社は30コマになる。神事氏は「情報が多い分、これまで解明できなかったタイミングでの肩、肘へのストレスなどが更に正確に出せるようになります」と説明する。

 分析結果からトレーニングメニューも作成し、最も成果が出たNPB投手は、平均球速が6・5キロ上がったという。代表取締役社長の中尾信一氏は「日本の研究者たちのスポーツ科学の研究成果を応用し、理詰めで選手のパフォーマンス向上を目指しています」とメジャーが一目置いた分析に胸を張る。25年は3月に、東京で24年覇者のドジャースを相手に開幕するカ軍。“侍分析力”を味方に、16年以来の世界一を目指す。

 ◆日米の分析チームの違い MLBでもNPBでも各球団に「分析チーム」はあるが、日本はどちらかというと統計学で分析するアナリストが主流。米国ではそれ以外に、力学の観点で体の動きを見ていくバイオメカニストがおり、動作解析を担当している。日本球界ではアナリストが動作解析も担当することが多く、これからメジャー同様に、分業が進む可能性が高い。

 ◆株式会社ネクストベース スポーツ指導を中心とした事業を展開するべく2014年6月に設立。16年に野球データ分析システムの開発に着手。プロだけでなくアマチュアに対しても投打で動作分析とトレーニング処方を行う。22年8月、千葉・市川に「ネクストベースアスリートラボ」も開設し、同所で測定、評価に加えトレーニングも可能となっている。

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