ド軍一筋20年「治療の仕事は10%ぐらい。何でもやる」大谷翔平、山本由伸支える万能トレーナーの流儀

ドジャースを支える中島トレーナー(右は山本)(カメラ・中村 晃大)

 ドジャース一筋で、大谷翔平投手(30)、山本由伸投手(26)を支えている日本人スタッフがいる。中島陽介アシスタント・アスレチックトレーナー(54)は今季でメジャー10年目。10年間のマイナー生活なども含めると20年以上をド軍で過ごしてきた。今季はシカゴ遠征中の祝勝会で“主役”に。4年ぶりの世界一まであと一歩に迫るチームを陰ながら支えている。(取材・構成=中村 晃大)

 中島トレーナーの一日は長い。午後7時10分開始の試合なら球場入りは正午頃。帰る頃には日付が変わっていることも珍しくない。常勝軍団の中でどんな役割を担っているのか。

 「トレーナーといっても治療って(仕事の)10%ぐらいで。例えばFAの選手のことを調べたり、スパイクを直したり、爪が割れたらどうすればいいとか、そういうのも全部です」

 中大ではクラブチームでプレーし、卒業後に本場の野球を学ぶために渡米。カリフォルニア州立大ロングビーチ校の野球部を手伝いながらアスレチックトレーナーの勉強に励んだ。大学院生の時、メジャー30球団がインターンシップ生を募集。全ての球団に手紙を送り、唯一返事があったのがドジャースだった。03年から計2度のインターン研修や、05年から10年間のマイナー生活を経て、15年にMLB昇格を果たした。

 「カーショーだって下の時から知ってるし、トレーナーが1人しかいなかったから、タイムマネジメントとか救急で誰かが倒れた時とか、そういう技術はつきましたね。そういう意味で何かあった時に重宝されてるかもしれないですね」

 今年4月。大きな話題を呼んだのが遠征先の「シカゴカルビ」で開かれた祝勝会。2人合わせて総額10億2500万ドル(約1550億円)の大谷&山本らに焼き肉を振る舞った。メジャー初勝利を挙げたばかりの山本は感謝しきりだった。

 「(初めて)勝ったとか関係なくて、ただご飯を食べに行っただけで。もちろん僕が誘ったし、高いワインも僕が出したから、払うしかないなと(笑い)」

 反響は大きかった。08~11年にドジャースに在籍した“大物投手”からも連絡があったという。

 「黒田(博樹)君から電話がかかってきて、『もうかってるじゃん』って(笑い)。日本人会とかは特にないんですが、僕の勝手ですけど、日本食なら日本人(と一緒に)で食べたいというのもありますし」

 すでに今季3度行われたシャンパンファイトでは大谷らと美酒に酔う姿も見られた。もちろんカーショーら日本人以外の選手からも信頼は厚い。世界一のために今後もドジャースに忠誠を誓っている。

 「トレーナーという肩書ですけど、球団から何かしてくれと言ったら全部やる。何でもやる。サインを盗んだりとかはしないですけどね(笑い)」

 ◆中島 陽介(なかじま・ようすけ)1970年6月7日、横浜市生まれ。54歳。中大では物理学を専攻。ドジャースでは2005年のルーキーリーグからスタート。13年WBCイタリア代表のアスレチックトレーナーも務めた。夜行性の有袋類「ポッサム」の愛称で親しまれる。

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