【大学野球】「野球は大学で一区切り」東大を18連敗脱出に導いた146キロ右腕は一般就職 応援団もうれし泣き

東大先発の鈴木太陽(カメラ・佐々木 清勝)

◆東京六大学野球秋季リーグ戦第4週第2日▽東大4-1慶大(6日・神宮)

 東大が雪辱し、1勝1敗のタイに持ち込んだ。東大は先発した最速146キロ右腕・鈴木太陽(4年=国立)が6回1死まで完全、7回1死まで無安打無得点の快投。3安打1失点で完投し、リーグ戦初白星。昨秋の法大2回戦以来、1年ぶりの白星をチームにもたらした。東大の連敗は18でストップ。昨年11月に就任した大久保裕(ひろし)監督(66)に初白星を贈った。7日の3回戦に勝てば、2017年秋の法大戦以来7年ぶりに、2戦先勝方式による勝ち点を手中に収める。

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 勝利の瞬間、鈴木太は両手を突き上げた。仲間は優勝したかのような大騒ぎで、ベンチを飛び出した。応援団には涙を流す人もいた。東大、1年ぶりの勝利。東大投手の慶大戦での完投勝ちは、17年秋の宮台康平以来だ。「じわじわと喜びが込み上げてきました」。ヒーローは笑みをたたえ、客席に頭を下げた。

 カーブを操り、緩急で幻惑。6回1死まで1人の走者も出さなかった。完全試合への意識に「5回終わったところで一瞬、『今のところ』と思ったんですが、まだ4イニングあるので『長いな』と」。完投に「明日に向け、投手を使わずに済んだこともチームの力になれた」と胸を張った。

 都立の名門・国立から現役合格。経済学部で学ぶ。最速146キロを誇る投打二刀流だが、卒業後は一般就職。「野球は大学で一区切りのつもり。自分たちの代で少しでも勝ちを取りたい」と力を込めた。

 試合後に球場を出ると、出待ちのファンが大きな拍手で勝利を祝ってくれた。花道と化したバスまでの短い距離を、赤門ナインはいい表情で歩いた。応援してくれる人々を太陽のように明るくさせた、魂の134球だった。(加藤 弘士)

 東大・大久保裕監督(就任後16試合目で初勝利)「理想的な試合ができました。(勝ち点に)ここまできたらもう一度頑張りたい」

 東大・杉浦海大(かいと)捕手(湘南出身の3年生捕手はハッスルプレーでけん引。4回には適時打で追加点)「まだ明日がある。勝ち点を取らないと、最下位脱出、あるいはその上は絶対ない。明日に向けて切り替えました」

 ◆鈴木 太陽(すずき・たいよう)2002年10月13日、札幌市生まれ。21歳。小4から若松ホーマーズで野球を始め、浅間中では軟式野球部。国立では1年秋からベンチ入り。2年秋からエースナンバー。3年夏の2020年西東京代替大会では3回戦敗退。東大では2年秋からベンチ入り。好きな選手はドジャース大谷翔平。日本ハムファン。177センチ、87キロ。右投右打。

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