松井秀喜氏が語るポストシーズンの極意…「不動心」を支えたのは米1年目にバーニー・ウィリアムスからもらった言葉

09年、ワールドシリーズで日本選手初のMVPに選ばれトロフィーを掲げるヤンキース時代の松井氏(共同)

 メジャーのポストシーズン(PS)に日本人選手所属球団は、大谷翔平投手(30)、山本由伸投手(26)を擁するドジャースを筆頭に5球団が進出した。2009年にヤンキースのワールドシリーズ(WS)制覇に貢献して日本選手初のMVPに輝いた松井秀喜氏(50)が1日、現役時代を振り返って“ゴジラ流”のプレーオフ(PO)の戦い方を明かした。

 明日なき戦いには今年、日本選手では大谷、山本が所属するドジャース、ダルビッシュ、松井擁するパドレス、菊池のアストロズ、前田のタイガース、千賀のメッツが進出を決めた。ヤンキース時代の4季でPOに出場し、09年WSでは打率6割1分5厘、3本塁打、8打点で世界一に導きMVPを獲得した松井氏は現役時代、どのような心境で大舞台に臨んでいたのか。

 「私はレギュラーシーズンと、試合前のルーチンなどは何も変えていませんでした。お客さんが増えるかといったら、ありがたいことに普段からいっぱいだったから、そんなことはなかったですし。周囲の雰囲気は異なるから、自然と緊張感が出るのは当然ですが、何も変えることはないし、変えても仕方がないと。ポストシーズンだからと特別なことをやるくらいならば、普段からいい準備をやりなさい、ということです」

 松井氏が明かしたPOの極意は「不動心」だった。ヤ軍1年目のあるレギュラーシーズンの日、バーニー・ウィリアムスから「ヒデキ、今日は特別な試合だよ」と声を掛けられた。「意味が分からなくて『なぜ?』と返したら『ヤンキースにとっては、全てが特別な試合なんだ』と。確かにその通り。POだからといって、普段と臨む姿勢が変わったらおかしい。みんな、全く変わっていなかったです」とヤ軍の伝統も、支えとなった。

 POは56試合で打率3割1分2厘、10本塁打、39打点。「成績は良くないでしょう」と厳しい自己評価も「普段から誠実に野球に向き合えば、大事なところで目に見えない力が働くと信じていました。私がそうだったかは分かりませんが(笑い)」と野球に取り組む姿勢も結果につながると信じて、日々を過ごした。

 大谷、山本、松井はMLBのPOは初出場になる。松井氏は「特有の雰囲気に慣れるというのはあります。慣れれば、よりよい結果につなげられるのではないか」と場数を踏むことの利点を挙げる。「日本シリーズやPOに、気持ちや準備を変えずに臨むのは当たり前になっていました。ただ、私の場合は他にやりようがなかっただけですし、人それぞれでしょう。一層、気合が入るという選手もいれば、特別なことをやる選手もいるかもしれない。それが結果に結びつくならば、いいと思います」。秋の大舞台を数多く経験した松井氏の言葉は重くも、温かかった。(阿見 俊輔)

 ◆09年ワールドシリーズの松井秀喜 前年覇者のフィリーズと対戦。第2戦で宿敵・マルティネスから6回に決勝ソロを放つと、第3戦は代打で2戦連発のソロ。本拠地でDH制に戻った第6戦では先発復帰し、マルティネスから再び先制2ラン。さらに2点適時打、2点二塁打でWS最多タイ記録の1試合6打点を記録。ヤンキースの9年ぶりの世界一に貢献し、日本人初のMVPに輝いた。

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