「ふふっ、老い先短いから思い切ってできるんですよ」阿部巨人走塁改革をけん引した“V請負人”丸佳浩 自身6度目のリーグ制覇

チームの積極走塁のけん引役と評価された丸

◆JERA セ・リーグ 広島1―8巨人(28日・マツダスタジアム)

 巨人の丸佳浩外野手(35)が、広島在籍時の3連覇を含め、自身6度目のリーグ優勝を飾った。今季は4月下旬から1番に定着して打線をけん引。強いチームを知り尽くす“V請負人”が、阿部巨人を「見た」。

 自身6度目のリーグ優勝となった丸にとっても、ここまでの大混戦は初体験だった。

 「今年は最後まで『いけるんじゃないか』と思えなかった。本当にピッチャーに助けられました」

 阿部監督が就任し、開幕前はレギュラーを保証されていなかった。ベテランにも“忖度(そんたく)なし”の姿勢は選手を奮い立たせた。

 「『新風』というテーマを出して、本気でチームを変えていくんだ、という意気込みを感じた。『これはキャンプから結果を出してポジションをつかむしかないな』と」

 大きな変化を感じたのが宮崎キャンプ中の「阪神と巨人の違い」をテーマにした走塁ミーティング。スコアラーが、DELTA社算出のBsR(走塁の総合指標。リーグの平均的な走者よりどれだけ走塁で得点を生み出したか)というデータを示し、昨季は12球団最下位だったことを全員で認識。一つ先の塁を狙う意識を徹底した。

 「あれは大きかったし、分かりやすかった。課題やいいところが、他チームと比べてどうなのか。客観的に見るのは大事だし、選手も現状を理解した。監督、コーチの方たちも意識をより強く持っていたからこそ」

 今季は大幅に改善し、前半戦はリーグ1位の数値をたたき出し、積極走塁は阿部巨人の強みとなった。走塁担当の亀井コーチからは、けん引役は丸と断言された。

 「ふふっ、僕はもう老い先短いから思い切ってできるんですよ(笑い)。でも、野球で一番難しいのは走塁。本当にセンスが問われる。若い時はビビって無難に無難にやっていましたけど、これは経験を積んでいかないと。走塁で勝てた試合も増えてきた」

 選手と首脳陣の一体感もあった。阿部監督はベンチでは喜怒哀楽を控え、選手がやりやすい環境を整えた。

 「どんな時も変わらないから、若手も失敗を恐れずに思い切ってチャレンジができる。雰囲気が暗い時は、監督はよく『チーンってなるな』って言ってくれます。そんなふうにならなくていいよって」

 終盤には19歳の浅野が勢いをもたらし、中堅の吉川、岡本和が引っ張った。理想のチームに成長していった。

 「優勝するチームはベテラン、中堅、若手―と自然となっていく。若手に伸び伸びとプレーしてもらうためには、中堅、ベテランが土台でしっかりしてあげないと。結果的に、僕らベテランが足りないところを補ってあげられたのかな」

 優勝は広島で3度、巨人で3度。そのV請負人が、まだ手にしていない日本一を目指す戦いが始まる。

 「まだまだ課題だらけ。でも、伸びしろがあるということだし、もっと強いチームになっていきたい」

 ◆今季の丸 定位置を確約されていない立場でキャンプイン。4月26日まで打率2割1分5厘と低迷したが、同28日DeNA戦(横浜)から1番に入って急上昇。6月28日・広島戦(東京D)ではサヨナラ弾を含む4安打を放った。7月には一時打率を3割1分5厘まで上げ、リーグトップに浮上。ヘルナンデス離脱後は右翼から中堅に回った。

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