【センバツ】大分商の一塁走者、涙 ベース踏み忘れで試合終了「先に行かなきゃとパニックに」
◆第95回センバツ高校野球大会第2日 ▽2回戦 作新学院8―6大分商(19日・甲子園)
大分商と作新学院(栃木)の試合終了を巡るプレーで混乱が起きた。9回表に大分商が2点差に追い上げ、なお1死一、二塁。次打者の飛球で一走は二塁を越えて飛び出し、二塁ベースを経由せず一塁に戻った。二塁塁審は試合終了となるアウトを宣告したが、「塁の空過」をアウトとするために必要な作新学院側のアピールがなく、「2死一、二塁」で再開。改めて二塁にボールを送ってアピールし、試合が終わった。また東邦(愛知)と英明(香川)が初戦を突破した。
悔し涙があふれた。それでも前を向いた。大分商の一走・江口飛勇は最終回に同点の走者でありながら、二塁を空過して試合を終わらせたことを責めた。
「気持ちが先走って、冷静な判断ができなかった。逆転して、頑張っていた投手を喜ばせたかった」
9回表、2点差に追い上げ、なおも1死一、二塁。6番・丸尾櫂人の強い打球が左翼に飛んだが、フライアウトになった。江口は二塁を越えて飛び出した後、二塁を経由せずに一塁へ戻った。「先に行かなきゃとパニックになってしまった」。直後に二塁塁審は試合終了を宣告。両校は本塁に整列しかけた。だがアウトとするには、作新学院側のアピールが必要だった。
審判団は協議の上で走者を戻し、「2死一、二塁」から再開。二塁にボールを送ってアピールした段階で3アウト目を認め、試合が終わった。直後に野口球審はマイクを握り「正式アピールがある前に二塁塁審がアウトを宣告した。大変申し訳ありません」と説明した。
映像では二塁走者を追い越したようにも見えたが、本人に自覚はないという。追い越しなら即アウトになる。窪田哲之大会審判副委員長も混乱を謝罪した上で、「協議の時には明確に追い越しについての認識は、そこまで至ることがなかった」と審判団も把握できていなかった見解を示した。
大分商はWBCで奮闘する西武・源田の母校。昨年12月、激励に訪れると、ナインの練習への厳しさが増した。負けはしたが、江口の執念を前面に出したプレーは夏につながる。3安打2打点の活躍は立派なものだ。
江口がベンチに戻ると、仲間が「お前のせいじゃない」と肩をたたいてくれた。涙が止まらなくなった。「いつまでも引きずっていては、夏に間に合わない」。涙は乾いた。収穫と課題を胸に、実直な若者が春の聖地を去った。(加藤 弘士)
◆ミスターも 一塁走者が続く打者の外野への打球に二塁を回るも、フライアウトになって帰塁の際に二塁を踏み直さずにアピールアウトになった例はプロでもたびたびある。中でも巨人・長嶋は3度もあった。それによって試合終了になった例には、17年8月6日の巨人・中日戦での重信などがある。
◆野球規則抜粋
▼5・06走者
(b)進塁(1)
走者は進塁するにあたり、一塁、二塁、三塁、本塁の順序に従って、各塁に触れなければならない。逆走しなければならないときも(中略)、すべての塁を逆の順序で再度触れて行かなければならない。(後略)
▼5・09アウト
(C)アピールプレイ
次の場合、アピールがあれば、走者はアウトになる。
(2)ボールインプレイのとき、走者が進塁または逆走に際して各塁に触れ損ねたとき。
(4)本項規定のアピールは、投手が打者へ次の1球を投じるまでに行わなければならない。
03/20 05:05
スポーツ報知