大神いずみ「野球に懸ける夫や息子の勝利を願って今日もトイレを磨く。掃除の楽しさと大切さを、小6の担任の先生とDr.コパさんが教えてくれた」

球場の写真

暑い暑い暑い夏の日の試合。オーブンの中に放り込まれたような暑さですよね(写真提供◎大神さん 以下すべて)
大神いずみさんは、元読売巨人軍の元木大介さんの妻であり、2人の球児の母でもある。2人の球児の母として伴走する大神さんが日々の思いを綴る。

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【写真】小6の大神さんと担任の先生

前回「大神いずみ「野球少年たちに、熱中症の季節がやってきた。次男の送り迎えの週末、長男・翔大は父・元木大介の背番号を背負ってデビューなるか?」」はこちら

トイレ掃除を欠かさない

このところSNSや携帯の使い方を息子たちに教わることが多く、あまりに母の理解吸収が鈍くて息子たちがイライラしている。

「なんでこんなのも知らんの!?」
なんで、て。
知らんからあんたたちに聞いとんのだ。美味しいご飯を作ってくれる美しい母に、もうちょっと優しく教えてくれたっていいじゃあないか、息子たち。

てか、常に新しくなる複雑なコミュニケーションツールを、いつどうやって使いこなせるようになっているのですか世の中??

わたしはいまだにInstagramの使い方も怪しくアワアワしているというのに。更新も遅い。
あわあわ。
いひ。へんな言葉だな。
「あわてる」からくる「あわ」なのかな。「泡」吹く、なのかな?あれ?あたしココもう拭いたっけな?最近冷蔵庫開けたとたん何取りたかったんだっけ?って思うのと一緒だな。洗剤少なくなってきたから買っとかなきゃ。
ううー、明日の試合は勝てるかなぁ…。念には念を入れてココ、もう1回磨いとくか。

…なぁんてことを考えながら、
わたしは毎日我が家のトイレ掃除を欠かさない。

一生のうちトイレ、使わない人いますか?

正直言うと家事の中でも掃除、片付けはあまり得意でない私だが、実家を出てから独身時代、結婚してからもずっと、トイレ掃除だけはどこよりも丁寧にやる性分なのだ。

よく「野球選手のお宅の奥様は食事の管理が必須でしょうね。」と言われるのだが、わたしにとってはそれよりも「トイレ掃除」のほうがよっぽど大事だと思っている。

一生のうちトイレ、使わない人いますか?

綺麗を心がけていてもいずれトイレは汚れます。
「だれか」が綺麗を保ってくれることで、人は安心して心地のいいトイレを使うことができるのです。おおなんと、ありがたい。

でも毎日当たり前に何度も使うものなのですが、誰かが綺麗にしてくれているなんて人はすっかり忘れてしまうものです。お掃除してくれる人がいるから気持ちよくトイレを使えているだなんて、全く気が付かないで使っている人もいます。汚しておいて「汚い」とお掃除を避けるのは、とても都合が良すぎます。

明日から2階のトイレ掃除お願いね

何度も言いますが、トイレを使わない人いますか!?

だからトイレを使う人は誰であろうと、得手不得手関係なくお掃除をするのが当然だと思うのです。「罰」でも何でもないのです。汚れてても全然平気な人は別として。
汚いから、嫌だから、というのは、自分は使うけど掃除はしないという理由にはなりません。

偉いから、と言うのは理由になるでしょうか…?
それもおかしな話です。
みんな等しく使うものだからです。

老若男女問わず、決まった人ばかりが掃除するのはおかしい。
というわけでっ!

「明日から2階のトイレ掃除お願いね」

私の長い長い口上のあと言い渡された次男・瑛介は、立派に豆鉄砲を食らったハトになって「……」な顔をしている。
我が家の、中学2年生時に言い渡す恒例行事、「トイレ掃除を任せる」が今年瑛介にも適用された。
頑張れ、瑛介。道具は便利なものがいっぱいあるから安心してね♪

クラス対抗お掃除競争

あれは小学校6年の時だった。

当時通っていた小学校で「6年5組」はとても仲が良く、40代の女性の担任「森先生」も人気があった。いつも先生の机の周りには子ども達が集まって、いろんな遊びを企画してはみんなで毎日ワイワイ楽しんでいた。

6年生は校舎の中のいくつかのトイレ掃除を任されていて、クラスごとの当番制でお掃除をしていた。

ある日、森先生の提案で「クラス対抗お掃除競争」なるものが行われることになった。
字の通り、クラス対抗でお掃除をしてどこが一番綺麗になるかを競い合うもの。今の時代はこんなことでも何かしら問題になるんだろうか…。

だがそこは当時のやる気元気いっぱいな小学生、6年5組の子たちが大好きな森先生の喜ぶ顔を見たいがために、一丸となってお掃除、がんばった!
廊下、階段、教室、図書室、理科室など、普段より入念に塵を掃き、雑巾掛けして、床を磨き上げたのだ。

その中でわたしはトイレの担当だった。
正直、最初ははずれクジを引いたような気持ちになったが、とにかく担任の森先生を喜ばせたい、先生に褒めてもらいたい一心だった。

デッキブラシでゴシゴシ床を磨き、便器を丁寧にブラシできれいにした。最後には雑巾で便器や床をピカピカに磨いて仕上げた。
最初はニオイや汚れに抵抗があり、口を真一文字に閉じてハンカチで覆って掃除していた。

なんてきれいなトイレなの!?

終わった後に毎日森先生が見にきてくれて、目を見張りながら仕上がりに驚いて声を上げた。

「なんてきれいなトイレなの!?
素晴らしいわ!よく頑張ったね!本当に素晴らしい!!!」

先生のこの言葉に十分報われた小6のいずみは、俄然やる気が出た出た!次の日もまた次の日も、学校のトイレを応接室のようにピカピカに磨き上げた。毎日毎日、これでもかと言うほど森先生は私たちを褒めてくださった。私たちのチームも日に日に掃除の要領を得るようになり、仕上がりもますます綺麗になっていった。

褒めてもらえる喜びからか、いつのまにか子どもながらに「汚い」「嫌だな」という気持ちが薄れていったように思う。

ある時、森先生から
「このトイレは本当に綺麗で気持ちがいいので、遠くからわざわざ使いに来たくなるわ。本当にありがとうね」

と言ってもらえたことが、何より私たちの誇りになった。いつか誰もが寝転がれるようなトイレにしよう!と思っていたくらい。いや寝転がるのはどうだろう。でも、どこよりもきれいなトイレに保っていることが自信になっていった。

人生今でも、トイレ掃除は自慢

はっきりと順位をつける競争ではなかったが、あの時みんなに喜んでもらえるトイレ掃除ができたことが、50をとうに超えた今のわたしにとっても大きな自信になっている。

森先生、ありがとうございます。
おかげでその後の私の人生今でも、トイレ掃除は自慢です。

私が家のトイレ掃除を大切にするのは、確かにスポーツに携わって勝負のかかる「勝負師」が家族にいるからというのもある。

日本テレビを退職するまでの1年間担当していた『峰竜太のホンの昼メシ前』と言う番組で、毎日のようにロケに出て、有名レストランのシェフや専門家の先生と共に一般家庭にお邪魔していたのだが、ここでいろんなことを風水を通して教えてくださったのが、Dr.コパさんだ。

その後本格的に勉強したことはないけれど、その時授けてくださった風水の知識を今でも我が家の至る所に実践している。
当時まだ元木と出会う前だったのだが、コパさんは大の巨人ファンだ。ご縁だなぁ…とつくづく感じる。

そのコパさんから教わったのが、
健康運や金運を上げたいのならまず、家のトイレをいつも綺麗にしておくこと。
トイレは家の厄、悪い運気が溜まる場所で、そこが汚れていると良い運気が全く入ってこないんだとか。

怪我や病気なく、好調を保って野球をし続けたい夫のためには、どんなことがあっても毎日トイレをきれいに保つことが使命になった妻、そして母・いずみ。
今では息子たち2人も毎週のように野球で勝負がかかるようになり、我が家は何だか「勝負師」だらけになってしまった。

どんなに忙しい朝でも

便器と便座をピカピカに磨き上げ、床に這いつくばって隅々まで拭き、壁やドアも丹念にほこりを払う。棚や操作盤を拭いて、掃除の最後にペーパーも必ず三角折り。

三角折りにしたトイレットペーパーの写真

昔瑛介がこれを見て「こびとのしわざだよー!」と言って走ってきた日が懐かしい…

ほんの5年くらい前まではこの三角折りを見つけると
「おかあさーん!トイレにこびとがいるよ!これはこびとのしわざだよ!」と興奮気味に高い声で叫んでいた瑛介、ああどこへ行ってしもうたか。
今はどこを見ても我が家にはオッサンしか見当たらんのだが。

特に悪い気は床に澱むというので、どんなに忙しい朝でもトイレの床を拭き上げて出かけるのが私のルーティン。

ある時遠征で早朝に慌てて家を出たあと、トイレの床を拭いていなかったことに気がついた。
朝の一分一秒の遅れは渋滞にかかって命取りになりかねない。

それでも、信号手前で引き返してトイレの床を拭きに帰ったこともある。やらなかったせいで試合に負けたら…と思うと、勝負に私が関われることが少ないからこそ後悔したくないのだ。即、戻る。トイレの床をシートで拭く。流して手を洗い、家を出直す。

朝陽が目潰しのように眩しい。

でも心の中で少しだけ、今日もきっと勝てる、打てるよ息子!
そんな確信を抱いて遠征先へ急ぐのは、きっと家族を取り巻く悪い運気を払っていいことしか起きないように、
「お母さん、ちゃんとトイレ綺麗にしてきたからね!」と言えるからかもしれない。
…いや、なんのこっちゃ。

今日の健康と運気上昇のため

でも実は夫の現役時代、一日も欠かさずトイレをきれいに掃除していたって、打つ時もあれば打たない時もある、勝つ時も負ける時もーー「絶対」ではないことをあの時学んだのだ。
それでもやっぱり、今日の健康と運気上昇のためには家のトイレが綺麗であることが必要。
勝負を終えて安心して家に戻ってくる家族のために。
今日もゴシゴシ。

あ、そうだ。
ハトはどうなった???
案外素直に2階のトイレの掃除を始めた瑛介。
どうか明日も続きますように。

ところでこんな私も、野球母にとっては避けることのできない
グラウンドの「トイレ問題」には頭を抱えている。いわゆる、「簡易トイレ」しかない場合。申し訳ないのだが、苦手なのだ。

わたしは昔から特異体質で、大概我慢で乗り切ってしまう。もしくは数人の母たちと「トイレツアー」を組んで、時々グラウンドから数キロのコンビニまで車を出す。
それくらい、この「簡易トイレ」にはかなりの覚悟が必要な場合が多い。

遠征先でお世話になったトイレを選手たちに掃除させる事になっているのだが、これをわれ先に手を挙げてやるような選手でないと野球は上手くならない。都市伝説のようにそう言われているとか、いないとか。

ある日長男・翔大が家に帰ってきた時、2階のトイレを掃除するように言ったら、

「なんだよー、いま寮でトイレ掃除してきたばっかやのにぃ」
と口を尖らせた。

きっと野球の神様も見ておられるよ。ふふふ。

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