「他球団から声がかかる可能性も…」オリックス中嶋監督(55)が電撃辞任の理由をぼやかした納得の理由 チームへの“根深い不満”と再登板の可能性

 オリックスの中嶋聡監督(55)が10月6日に行われた楽天との今季最終戦後に、今季限りでの辞任を突然表明した。就任4年目の今季はレギュラーシーズン5位と低迷したものの、昨季までパ・リーグを3連覇して地位は安泰だっただけに、球界には激震が走った。

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 福良淳一ゼネラルマネジャー(GM)から慰留を受けながらも「マンネリ化による人心一新の必要性を感じたこと」を辞任の理由に挙げたが、額面通りに受け止める人は少ない。

 中嶋監督は同日、遠征先の仙台市内のホテルに選手、コーチを集めて辞意を伝えた。その後メディア対応し「優勝していたチームがここまで落ちるということの責任を取りたい。3連覇して1つの時代と言ったらおかしいが、新しいことを始める時に新しい人が始めるべき」と語ったのだ。

オリックスに46年ぶりの3連覇をもたらした中嶋諭監督 ©時事通信社

 中嶋監督と旧知の球界関係者が語る。

「来季もやるものだと思っていたので、びっくりしましたね。ただ中嶋は日本ハムで現役を引退する時も直前まで周囲には明かしていませんでした。そういう意味では中嶋監督らしいと言えばらしいです」

 中嶋監督は2軍監督だった2020年のシーズン途中に1軍の不振を受けて監督代行になり、正式に監督に就任した1年目の2021年には前年最下位だったチームを率いていきなり優勝。

 2軍で自ら育てた選手たちを主力に据えて翌22年には連覇を果たしたが、吉田正尚外野手がポスティングシステムでレッドソックスに移籍。それでも西武からフリーエージェント(FA)で森友哉捕手を獲得し、翌23年の3連覇につなげた。

4番にエースが流出、期待の若手もけがに苦しみ…

 しかし今シーズンが始まる前にエースの山本由伸投手がポスティングでドジャースに移籍し、昨季11勝を挙げた山崎福也投手も日本ハムへのFA移籍で失った。

「吉田、由伸のメジャー挑戦はある程度織り込み済みだったと思います。ただ痛手だったのは山崎の移籍でしょう。山崎は同じパ・リーグの日本ハムに移籍して今季も10勝しているので、とてつもなく大きな損失だったと思います」(元NPB球団監督)

 昨年、高卒3年目で9勝をあげた山下舜平大投手もけがに苦しみ、勝ち星も3勝へと激減し、2桁勝利をマークした投手はゼロ。それでも、中嶋監督は“ナカジマジック”と称された持ち前のやり繰り上手を発揮し、チーム防御率はリーグ2位の2.82と健闘した。

 一方で苦しんだのが打撃陣だ。昨年はリーグトップだったチーム打率が5位に低迷。故障者が多く、広島からFAで獲得した西川龍馬外野手だけではカバーできなかった。

 主力の流出による戦力不足に怪我が重なる不運な状況の中で、なんとかチームをまとめてきた中嶋監督を責める声はほとんど聞かれなかった。

 しかし中嶋監督自身は、チームへの希望を失いつつあったのかもしれない。5位でシーズンを終えることが決まった後のコメントにも失望感が滲んでいた。

「人って慣れるじゃないですか。全力疾走であり、攻守交代であり、そこだけはしっかりやってくれと。どれだけ言っても、それが改善されなかった部分が慣れなんだと思う。1年間通してやるっていう最低限の約束をしていたんですけど……」

 そう言って、自身の求心力と選手たちのモチベーション低下が辞任の要因になったことを匂わせたのだ。

 加えて、戦力不足が解決されるメドが立っていないことも辞任の遠因の1つだろう。

 福良GMとは日本ハムコーチ時代の同僚で、オリックスでもまさに二人三脚で絆は固いと見られていた。しかし、その福良GMの度重なる引き留めを受けても辞任の決意は揺らがなかった。

「恐らく中嶋監督は、自分のチーム作りと球団の編成方針にズレを感じていたんだと思います。

 毎年のように主力が抜け、ソフトバンクに抗うための補強が見込めない中で、現場のやり繰りは監督が一手に引き受けなければならない。ポスティングやFAの案件には福良GMも手が出せず、実質的に球団に任せるしかないジレンマはあったと思います。なによりオリックスの監督として3連覇という申し分ない実績は積んだので、引き際としてもちょうどいい。そして、一度決めたらテコでも動かない性格ですからね」(前出・元NPB球団監督)

西武やDeNA、日本ハムでの監督復帰説も…?

 今回スパっと身を引いたことで、他球団を含め監督“再登板”への見通しも明るいという。

「オリックスが今年勝てなかった責任は誰が見ても中嶋監督にはなく、監督としての手腕への評価にキズが付くことはありません。まだ55歳と若いですから、オリックスでの再登板だけではなく、他球団から声がかかる可能性は十分にありえます。辞任の理由を“慣れ”と言ったのも、ことを荒立てないためでしょう。フロントへの不満をぶちまけてしまえば、他の球団も声をかけづらくなりますからね」(同前)

 中嶋監督は現役時代に、オリックスのほか西武、横浜(現DeNA)、日本ハムでもプレーしている。今後については「とりあえずゆっくりします」と言い残したものの、球界は休む暇を与えてくれないかもしれない。

(木嶋 昇)

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