秋田県民が本気で考えた――秋田にプロ野球球団を誘致すべき4つの理由

※こちらは「文春野球学校」の受講生が書いた原稿のなかから、文春野球ウィンターリーグ出場権を獲得したコラムです。

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 プロ野球の球団数を増やすとしたら、秋田県ほど新球団の本拠地に最適な地域はない。

 いま秋田県内に住んでいる僕は、本気でそう考えている。決して、人の背丈ほどもある雪の多さで気が触れたわけではない。

 昨今、既存の12球団に加えて新たに4球団、具体的には「静岡県」「沖縄県」「新潟県」「愛媛県」の4県を本拠地とする球団を追加する「16球団構想」が盛んに議論されている。

 いやいや、秋田県にはこれらの地域、いや既存の12球団の本拠地にも勝るとも劣らないポテンシャルがある。そして、誘致を目指すなら今だ。

 僕はそう確信している。決して、男鹿のなまはげに脅されて無理矢理主張させられているわけではない。

 今回は、とりあえず4点ほどその理由を紹介したい。

なまはげ ©iStock.com

秋田県がプロ野球チームの本拠地として最適な4つの理由

(1) 歴史的な背景が強固である

 あなたは、中馬庚(ちゅうまん・かなえ、読みは諸説あり)をご存知だろうか。

 19世紀末にアメリカから日本に伝来した「baseball」を「野球」と初めて翻訳した偉大な人物である。これはよく愛媛県出身の歌人・正岡子規の功績だと混同されるが、詳細はここでは省略する。いずれにせよ、中馬はその功績により野球殿堂入りを果たしている。

 中馬は東京帝国大卒業後に旧制中学の教員として20世紀初頭の日本全国に赴任したが、その中の一校が旧制大館中学校、現在の秋田県立大館鳳鳴高校である。当時から一世紀以上も存在し続けている同校の野球部は2011年に21世紀枠でセンバツへの出場を果たし、また昨年のドラフト会議でOBの佐藤宏樹(慶大)がホークスから育成1位で指名されている。

 つまり、中馬と関わりの深い秋田県には、正岡子規を擁する愛媛県に匹敵しうる「本拠地候補」としての歴史的な背景があると言っていいだろう。

 県北部の大館市にそんなエピソードがあるほか、県南部の横手市には伝説の大投手・ヴィクトル・スタルヒンの墓が存在する。墓所の寺院がスタルヒンの夫人の実家だったことがその理由だが、無国籍者として流浪の生涯を送ったスタルヒンが秋田に縁を持ち、その地で永い眠りに着いていることにただならぬ巡り合わせを感じずにいられない。

 北から南までこんなエピソードが満載の秋田県は、やはりプロ野球チームの本拠地として最適であると僕は思っている。

 決して、乳頭温泉郷の秘湯でのぼせて言っているわけではない。

(2) 郷土料理「きりたんぽ」がスタジアムグルメに最適である

「秋田県の郷土料理と言えば?」

 日本各地の人々にそう質問したとき、最も多い回答は「きりたんぽ」であろう。説明不要のあの料理だ。

 ところで、きりたんぽの細長い棒状のシルエット、とくにこんがりと焼き上げてお好みで味噌を塗って食べる「焼ききりたんぽ」スタイルの見た目は、何かに似ていないだろうか。

 あっ! バットにそっくり! これは野球のスタジアムグルメにピッタリ!

 既に十分な説明を尽くしたと思うが、せっかくなのでもう少し続ける。

「持ち手の棒を片手で持って食べる」系のスタジアムグルメは既に珍しくはないが、このスタイルはスポーツ観戦に最適だと言っていい。

「もう一方の手にカメラや応援グッズをキープできる」

「汁気がないので観客席でも『こぼす』心配がない」

「目の前の試合からほとんど目を切らずに食べることができる」

 ……など、弁当や汁物、麺類などと比較するとその優れた機能性は明らかである。

 既存の郷土料理がスタジアムグルメとして既に完成されていることを鑑みれば、直ちにこの地にプロ野球チームを設立し、このソウルフードを最大限に活かさなければならない。

「人が少ないから集客力が劣る」と決めつけるのは早計だ

(3) 秋田に対する国政の影響力が大きい時期である

「16球団構想」の発端は、2014年に自由民主党が「日本再生ビジョン」の中で地方創生の起爆剤として政策提言したことにある。

 つまり、政権与党の中心に「秋田県に影響力を持つ政治家」がいる状況ならば、円滑に球団を新設するために秋田県を候補地とする意味は非常に大きい。

 とはいえ、いま秋田県出身で国政の中心を担う政治家なんて……

 いるぞ! 菅義偉内閣総理大臣が! 秋田県立湯沢高校卒、秋田県出身者初の宰相が!

 あわよくばもう1名、秋田県から選出された自民党議員のなかにスポーツに詳しい人物、欲を言えば元プロ野球選手がいればもう秋田への新設は決定したも同然である。しかし、そんな都合のいい政治家が……

 いた! 石井浩郎参議院議員が! 秋田県立秋田高校卒、近鉄-巨人-ロッテ-横浜の元選手が! 1994年のパ・リーグ打点王が!

 これほど新球団設立に適した条件が揃っていることに、果たして現政権は気付いているのだろうか。他の地域との比較はもとより、タイミング的にも憲政史上またとない好機である。

(4) スポーツ熱が高く、集客力がある

「でも、秋田って人が少ないからお客さんが呼べないじゃん……」

 そうお考えのあなた! 今からそのイメージを覆す。

 確かに、秋田県の人口は現在約95万人、かつ県内に人口10万人を超える自治体は秋田市しかない。秋田市にしても人口約30万人と、プロ野球チームの本拠地としては小規模な都市である。

 だが「人が少ないから集客力が劣る」と決めつけるのは早計だ。

 近年成長著しい男子プロバスケットボール・Bリーグのトップカテゴリ・B1の昨期の平均観客動員数をチーム別に比較すると、なんと秋田市を本拠地とする秋田ノーザンハピネッツは大阪市(大阪エヴェッサ)や横浜市(横浜ビー・コルセアーズ)といった大都市のチームを上回り、B1全体でも上位の数字を叩き出している。

 言うまでもなく、これらの都市はプロ野球チームの本拠地でもある。バスケで互角以上の集客ができるということは、秋田県は人口に関わらずプロ野球チームの本拠地としても高い集客力が期待できるのではないだろうか。

「秋田ではバスケ熱のみが高いだけでは」というご指摘にも当たらない。

 2006年にTDK硬式野球部(にかほ市)が都市対抗野球で優勝し、2018年には夏の甲子園の「金足農旋風」に酔いしれた。そんな秋田県民の野球熱が低いわけがない。

 今年から男子サッカーのブラウブリッツ秋田がJ2に昇格し、男子バスケのハピネッツはB1で戦い続けている。新たなプロ野球チームがここに続く姿が、僕の目にはハッキリと浮かんでいる。

 決して、秋田のおいしい日本酒の飲みすぎで見えないものが見えているわけではない。

 これほどの理由があるのに、なぜ新たなプロ野球チームの本拠地に秋田県を推す声がないのだろうか。全国学力テストで常にトップクラスの秋田県民の頭脳をしても、全くもって理解しがたいことである。

 まだまだ理由はいくらでも挙げられるが、長くなりそうなので一旦ここで筆を置くこととする。

「秋田の話はもう飽きた」と言われる前に。

 今年の秋田の冬は、例年よりも寒い。

〈参考資料・文献〉

・秋田県立大館鳳鳴高等学校創立九十周年事業実行委員会「大館鳳鳴九十年史」(S63)
・自由民主党日本経済再生本部「日本再生ビジョン」(H26、自由民主党HPに掲載)
・公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ「B.LEAGUE Monthly Marketing Report 2020年2月」(R2、Bリーグ公式HPに掲載)

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(森杉 駿太郎)

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