「ポスト坂本勇人」の遊撃手を!巨人・吉川尚輝の天才性とは。

今季の飛躍が期待される吉川尚輝。2016年、ドラフト1位で巨人に入団。昨季は92試合に出場した。 photograph by Kyodo News

 能力の高さは折り紙つきである。

 3月10日に京セラドームで行われた日本代表対メキシコ代表の侍ジャパン強化試合。この試合で「1番・ショート」で先発した巨人・吉川尚輝内野手が注目を引いたのは、その守備力の高さだった。

 1回にいきなり2本のゴロを処理すると、最初の見せ場は2回だった。

 フェルナンド・ペレスの三遊間の打球を逆シングルで捕球。すぐさまジャンピングスローで一塁に送球してアウトにした。その後も9回に二塁に回るまで、遊撃では11回の守備機会があり、1失策はしたものの、三遊間の深い位置や緩い当たりでの前へのチャージ、そして二遊間の打球と右に左に前にと広い守備範囲を見せつけたのである。

「まだまだミスもあったし、そういうのをどれだけ少なくしていけるか。ただ、緊張感の中でプレーして、いい経験はできたと思う」

 試合後の吉川のコメントだった。

複数ポジションをこなせる吉川。

 もともとプロ入り前の中京学院大学まではショートを守っていたが、ご存知のように巨人での現職は二塁である。

 しかしベンチ入りメンバーも24人と制約の多い東京五輪を睨んで、複数ポジションをできることが選手選びの1つの条件である。

「(巨人では)セカンドだけど、ショートもやってもらおうと考えている」

 稲葉篤紀監督もそこを意識した上での、吉川の今回の遊撃起用となったわけだ。

スピードを生かしたその守備は絶品!

「今は二塁もショートもできる選手はそんなにいない。しかも動きに制約のある二塁より、ショートの方が吉川の持っている能力はより出しやすいとは思いますね」

 こう語るのは、昨年まで巨人の内野守備走塁コーチとして吉川を指導してきた日本代表の井端弘和コーチだった。

「吉川の一番の持ち味はやっぱりスピード。三遊間の当たりや、前の打球へのチャージなど、そのスピードを存分に生かした守備ができる。ショートを守らせたときの守備範囲の広さでいけば、今はもう坂本(勇人)より広い。尚輝のスピードを守りで生かせるという点では、ショートは一番のポジションだと思います」

 実はこれは巨人でも、チームの将来像を描くときに、大きなカギとなる問題なのだ。

坂本には負担が多いショートの守備。

「いずれは勇人が三塁に回るときがくる。そのときのためにどういうチーム作りを考えていくかということです」

 昨年のドラフトで大阪桐蔭高の根尾昂内野手を1位指名した背景を、原辰徳監督はこう説明した。

 残念ながら根尾は抽選で外れて獲得はならなかったが、昨年の監督復帰の時点から指揮官の頭には、将来的な内野の布陣として坂本は三塁という構想があるわけだ。

 2016年、'17年とゴールデングラブ賞を受賞しているように、坂本も決して守備が下手な選手ではない。むしろうまい部類の選手である。

 ところが守備での貢献度、守備範囲の広さの指標とされる「UZR(アルティメット・ゾーン・レーティング)」は2015年の32.3(数字はデルタ社サイト)を頂点に、'16年の15.1、'17年の10.6となり、昨シーズンは10.0。この数字も、昨年の12球団の遊撃手では西武の源田壮亮内野手(30.9!)に次いで2番目の数字と平均以上のレベルは十分に維持してはいるが、それでも長らく下降線をたどっている事実は隠しようがないところなのである。

守備面では坂本を越える……か?

 慢性的な腰痛を抱えるなど、坂本には肉体的な問題もある。

 実際に昨年は7月から故障で33試合を欠場。その時は既に吉川は二塁に定着(後に骨折で離脱こそしたが)していたこともあり田中俊太、山本泰寛両内野手らが主に遊撃のポジションをカバーしている。そうした故障のリスク管理も含めて、坂本を負担の大きい遊撃ではなく打撃を生かすために三塁にコンバートすることは、巨人の近い将来の必然でもあるわけだ。

 そこで本格的な坂本のサードコンバートとなれば、その後釜の1番手に上がるのが吉川尚であることは衆目の一致するところである。

 3月3日のヤクルトとのオープン戦では「9番・二塁」で先発したが、7回から田中が二塁に入り、吉川はショートにシフトされた。

 これも原監督の将来像を示す起用とも見えた。

 そしてこの起用に吉川もすぐさま応える。

 先頭の西浦直亨内野手の三遊間の深いゴロをさばくと、矢のような送球でアウトにする好プレーを見せたのだ。

「三遊間の深いところからのあのスローイングは、勇人に匹敵するか、もしくは……というくらいですね」

 原監督も改めて吉川の能力の高さを絶賛するほどだった。

早速坂本のコンバート実現も!?

 今季は岡本和真内野手を「4番・三塁」で起用するのが最初の構想だった。ところがキャンプ中に背中を痛めてから、岡本は一塁での起用が続いている。

 一方、三塁には新外国人のクリスチャン・ビヤヌエバ内野手が起用されているものの、日本の野球になかなか適応できないままにオープン戦の打率は1割台まで下がってしまっている。もしビヤヌエバの調子が上がらないままだと、坂本の三塁コンバートという案が予想以上に早まる可能性も出てくるはずだ。

 おそらく今季はシーズン中から試合の終盤に吉川が遊撃に回るケースが増えていくはずだ。その先には必ず坂本の三塁コンバートという流れがあることになる。

 そのときのために吉川には何が必要なのか?

とにかく守って経験を積むこと。

 井端コーチは吉川の可能性を認めつつも、まだまだ遊撃手としての安定感では坂本の方が上だと言う。

「いまの吉川は目一杯に動き回っている。あれじゃあシーズンは持たないですよ。おそらく1週間もしたら動けなくなる。もっと余裕を持ってプレーできないとレギュラー選手として1年間は働けないですからね。

 そういう点ではまだまだ勇人の方が上なんです。尚輝の課題はそこ。そのためにはまずいい意味で抜いた動きができるようになること。ショートの動きに慣れていくしかないですね」

 とにかく守って実際に経験を積んでいくことが、吉川の遊撃手としての能力を伸ばしていく一番のエナジーとなる。

 そういう意味ではメキシコとの強化試合での「ショート・吉川」の活躍は、巨人の時代の流れを勢い付けるものだった。

(「プロ野球亭日乗」鷲田康 = 文 / photograph by Kyodo News)

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