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清宮幸太郎のプレースキックの記憶。父・克幸「衝撃を最大化するセンス」

高校通算本塁打107本は、史上最多タイ。フルスイングではないように見えても大飛球が飛ぶのは清宮ならではだ。 photograph by Yuki Suenaga

 私が清宮幸太郎君をはじめて見たのは、秩父宮ラグビー場だったかと思う。

 お父さんの克幸さんが早稲田大学ラグビー部の監督を務めていた時、何度かスタンドに応援に来ているのを見ていた。

「野球もラグビーも凄いんだって」

 ラグビー愛好者の間でも、幸太郎君の評判はすでに響き渡っていた。

 その数年後、克幸さんがサントリーの監督となり、サントリーのグラウンドで幸太郎君がプレースキックを蹴っていたのを目撃した。たしか、ファンとの交流会の日だったと思う。幸太郎君がそこに遊びに来ていたのだ。

 その時のキックを見て、驚いた。いや、たまげた。

 小学生が40mほどのプレースキックをゴールポストに決めていたのだ。

 当時から身体は大きかったが、それだけでパワーが生まれるわけではない。ボールに対する力の伝え方に並々ならぬものがあると感じた。

 当時はまだどちらの競技をプレーするか知らなかったから、ラグビーでも相当な選手になるだろうな、と思った。

球にインパクトを与えるセンス、というのがある。

 私はその時の記憶が鮮明に残っていて、数年前、お父さんと同席する機会があり、プレースキックを見た時のことを話した。

 すると、お父さんの克幸さんは幸太郎君のアスリートとしての能力を読み解く、「鍵」を教えてくれた。

「プレースキックにしても、バッティングにしても、球に与えるインパクトが大きい。このセンスに独特のものがあるよね」

 ボールを蹴る、打つ、といったアクションには当然のことながら技術が必要だが、幸太郎君にはスポーツに親しみ始めたころから、「衝撃を最大化」するセンスがあったという。

「幸太郎にはその力が子どもの時からあった」

「野球でもラグビーでも、球に伝える力が強ければ強いほど、遠くに飛ぶし、飛び出しも速くなる。誰もが知っていることだけど、簡単には出来ない。ラグビーのプレースキックも、自分が生み出した力をうまく足を通じて伝えられるから飛距離が出る。たぶん、その時も全力では蹴っていないでしょう。ボールのどの部分を、どんな角度で、どんな力を入れればいいのか、自然と分かっていたんじゃないかな」

 衝撃の最大化は、なかなか教えられるものではない。

「体重や動きの中で生まれた『力』をどうボールに伝えるのか。ラグビー、野球ともボールと接する時間は本当にわずかだし、それを教えるのはなかなか難しいですよ。ただ、幸太郎にはその力が子どもの時からあった」

 幼い頃から、いろいろなスポーツに親しんできたことが魅力的なスラッガーへと成長する要因になったのかもしれない。

木のバットに持ち替えても、すぐに対応できそうだ。

 来季からは、大学進学にせよプロに進むにせよ、木製バットを手にすることになる。

 バットが変わると、衝撃の与え方にも微妙な違いが生まれるといわれているが、バットの芯、スイートスポットで捉えるセンスが失われることはないと思う。きっと、調整能力も高いだろうから、早晩、鋭い打球を飛ばすようになるだろう。

 夏の甲子園で好投手との対戦が見たかった、というのが本音だが、向こう20年にわたって野球界を楽しませてくれるに違いない人材だから、長い目で選手としての成長を見守っていきたい。

 それにしても、あのプレースキックは見事だったなあ……。

(「スポーツ・インテリジェンス原論」生島淳 = 文 / photograph by Yuki Suenaga)