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イチロー氏の行動原理は「利害関係なく純粋に」 昨年末に智弁和歌山を指導

智弁和歌山の選手を指導するイチロー氏(右)

楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】引退してもなおイチローは時代のアイコンだ。やることなすことが絵になる。プロ野球がオフに入った12月初頭、MLBのマリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏(47)が智弁和歌山高野球部を3日間にわたり指導。選手たちだけではなく、携わった多くの人々に忘れられない思い出を残した。

 イチロー氏が同校を選んだ理由については、すでに世間にも知らされている。2018年の秋季近畿大会での智弁和歌山と明石商の試合(ほっと神戸)を同氏が観戦。応援団の熱心な演奏にほれ込んだことをきっかけに、交流が始まったとされる。ただ、事情はそうシンプルなものばかりではない。

 イチロー氏が動くとなると周囲にもたらす影響はどうしても大きくなる。事前に日程などの情報が漏洩すれば、現場はパニックに陥るだろう。「我々の学校にも来てほしい。公平に全ての学校にチャンスを」との声も多くあるようだが、そう簡単にはいかない。

 今回の智弁和歌山の場合、学校関係者とイチロー氏の面識や交流もあり、入り口がスムーズだった。さらに、同校は東大、京大、国公立医学部などを目指す県内偏差値トップ校。プラス、甲子園で優勝を目指すえりすぐりの野球部員による少数精鋭の生徒構成という要素もある。

 つまり、イチロー氏が来校したと報道されても、コマーシャル的な利害が起こり得ない。イチロー効果で受験者が増えるなどという副作用がないことも大きい。

 ダメ押しは、イチロー氏の高度な野球理論を理解し、今後の指導に生かせる指導者もいる点だ。監督が元阪神、楽天、巨人で活躍した同校OBの中谷仁氏(41)であることも重要なファクターだろう。

 関係者は一様に「イチローさんは純粋に自分の持っているものを伝えたいという気持ちで動いている。周りはその気持ちを大事にしたいと思っています」という内容の言葉を口にする。当然だが大金を積んでイチロー氏を独占したい企業や人物が現れても、興味すら示さないだろう。

 オリックス時代からメジャーで活躍した長い期間、変わらぬ距離感で接してくれた人たちへの恩返し。利害関係なく純粋に。その気持ちがセンサーとなり、引退後のイチロー氏の行動スイッチをONへと導いているようだ。

 ☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。

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