「鬼滅の刃」の裏で真価が問われる亀梨和也「正義の天秤」

鷹野の恋人・雨宮久美子役で出演する大島優子さん(2020年1月、時事)

鷹野の恋人・雨宮久美子役で出演する大島優子さん(2020年1月、時事)

 歴代興行収入の記録を塗り替えた「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(フジテレビ系)を世界最速で初放送。9月25日の夜、この話題がツイッターのトレンドランキング上位を席巻することは間違いないでしょう。

 しかし、当然ながら、テレビ放送されている番組はこれだけではありません。同作の放送が始まる午後9時から、レギュラー番組の「サタデーステーション」(テレビ朝日系)、「世界ふしぎ発見!」(TBS系)、「出没!アド街ック天国」(テレビ東京系)が放送されるほか、日本テレビは午後7時から、3時間特番の「はじめてのおつかい 秋の大冒険スペシャル2021」で勝負します。

 実はこれら民放各局の番組以上にひそかな注目を集めそうなのが、NHKのドラマ「正義の天秤」。民放各局より一足先にスタートする秋の新作ドラマです。

 同作は「外科医から転職した天才弁護士・鷹野和也(亀梨和也)がえん罪の悲劇に苦しみながら、戦力外チームを率いて難事件の真相に挑み、事件関係者の魂を救う」という筋書きの法廷ミステリー。主演を務める亀梨さんのファンたちは「よりによって、こんな日のこんな時間にスタートしなくても……」という声を漏らしていますが、演じる鷹野は「鬼滅の刃」と同等以上の難題となりそうな役柄です。

視聴率ではなくクオリティーで評価

 亀梨さんが演じる主人公・鷹野は「徹底した合理主義者」「天才的な思考力と推理力を持つ」「元外科医の天才弁護士」「上から目線で性格に難アリ」「暗い影を抱えている」という複雑なキャラクター。

亀梨さん自身、「自分とかけ離れた役」と語るほどの難しさがある上に「常識にとらわれない方法で、表面的な解決ではなく根治を目指す」という各シーンに説得力を持たせるための演技力が求められます。

 しかも、亀梨さんにとって、今作が初のNHKドラマ挑戦。撮影現場のムードやスケジュール、求められる演技など、民放各局とは異なることばかりだけに、これまで培ってきたものを問われる場となるでしょう。

 ただ、亀梨さんにとって、この挑戦は大きなチャンスであることも事実。35歳という年齢は俳優として演じられる役柄の幅を問われる時期で、難役ほど評価を得やすいところがあります。また、NHKのドラマは民放各局とは異なり、視聴率で評価されることが少なく、低視聴率報道でたたかれることはほとんどありません。

「作品と演技のクオリティーで評価を受けられる」というチャンスであり、「あの作品から亀梨和也は変わった」と言われる転機になりうる作品なのです。NHKは「受信料をベースに番組制作をしている」ため、民放各局より制作期間に余裕があり、よりクオリティーを追求しやすい環境が整っていることも亀梨さんにとってプラスでしょう。

次に狙うはテレ朝の木曜ドラマか

 NHKも亀梨さんも同作で「大人の視聴者層をがっちりつかみたい」という狙いで一致しているため、万全のサポート体制が期待できます。もし、同作で亀梨さんが大人の視聴者層をつかむことができれば、それらの人々が集まるドラマ枠での主演につながっていくでしょう。

 たとえば、近年、同じジャニーズ事務所の木村拓哉さんが「アイムホーム」「BG~身辺警護人~」で主演を務め、来年1月から松本潤さんが主演を務める「となりのチカラ」が放送予定のテレビ朝日「木曜ドラマ」は絶好のターゲット。テレビ朝日の「木曜ドラマ」はTBSの「日曜劇場」と並んで、「最も視聴率が取れるドラマ枠」と言われているだけに、亀梨さんもこの2人に続いていきたいところです。

 昨年、1回目の緊急事態宣言中に再放送された「野ブタ。をプロデュース」が称賛を集めましたが、亀梨さんはまだまだ若々しいイメージがあるだけに“大人の俳優”への脱皮をどう図るのか。実は「ストロベリーナイト・サーガ」(フジテレビ系)と「レッドアイズ 監視捜査班」(日本テレビ系)とここ2作はシリアスな作品で刑事役を演じるなど、明らかな路線変更を見せ始めていただけに、難易度がグッと増した今作での演技に注目が集まるのは当然でしょう。

「鬼滅の刃」一色になりかねない25日の夜、亀梨さんがどんな演技を見せるのか。それとも埋もれてしまうのか。ファンだけでなく、各局のドラマ関係者は「鬼滅の刃」以上に気にかけているはずです。

コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志

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