土方歳三だけじゃない、町田啓太の“切り替え上手”な役者力とは

町田啓太さん(2021年3月、時事)

町田啓太さん(2021年3月、時事)

 放送中のNHK大河ドラマ「青天を衝け」(毎週日曜 後8:00)で、主人公・渋沢栄一を演じる吉沢亮さんや、もう一人の主人公とされる徳川慶喜役の草なぎ剛さんが注目を浴びています。が、それ以外にも多士済々の役者が登場し、輝きを放っています。町田啓太さんもその一人でしょう。

 町田さんが演じているのは、土方歳三。剣の達人で新選組副長として活躍した幕末の英雄です。と同時に、時代劇におけるイケメン枠でもあります。

 何しろ、洋装洋髪でかっこよくキメた写真も残されていて、いわゆる「歴女」人気も抜群。2004年の大河ドラマ「新選組!」(NHK総合)では、山本耕史さんが演じて評判になりました。「青天を衝け」版・土方歳三も、それに勝るとも劣らない存在感です。

定評のある演技幅

 9月10日、町田さんがゲスト出演した「あさイチ」(同)では、その立ち回りなどが共演者から絶賛されていました。「めちゃくちゃキレイ」(吉沢さん)、「現場のたたずまいが男らしくてかっこよかった」(高良健吾さん)というものです。「青天を衝け」を見ている人なら、誰もが納得することでしょう。

 そんな町田さんが芸能の魅力に目覚めたのは、高校時代。パイロットを目指して入学した高校でダンスに夢中になり、大学は体育系に進みました。そして、劇団EXILEのオーディションに合格。「LDH JAPAN」に所属し、俳優としての活動を始めて現在に至ります。

 この「EXILE」「LDH」という選択が彼の資質にもピタリとハマったのでしょう。「きれい」と「男らしいかっこよさ」という魅力を磨き、表現するにはふさわしい場だったからです。また、ダイナミックな舞台にも力を入れているため、ダンスからは地続きな感じで、スムーズに移行できたと考えられます。

 地続きといえば、「EXILE」「LDH」には男子校的な雰囲気があり、そこにも水が合ったのでしょう。というのも「ほぼ男子校みたいなところで、高校生のときは男子寮で生活していた」という町田さん。「男子ならではのおバカなノリ」で「どうしようもないことをやってました」などと振り返っています。

 ちなみに、この話は昨年、ドラマ「女子高生の無駄づかい」(テレビ朝日系)に出演したときのインタビュー(WEBザテレビジョン)で語られたものです。同名漫画の実写化で、女子高生の「おバカ」な日常をコミカルに描いたこのドラマにおいて、彼は「ワセダ」というあだ名の教師を演じました。最初の自己紹介で「私は女子大生派だ」と宣言したり、不人気なボカロPでもあることを隠していたりという、いまいちイケてないキャラです。

 これがある意味、土方歳三と同じくらいハマり役でした。コメディーに不可欠なリズムや間の良さに加え、全体的にちょっと下品なところもあるドタバタ劇の中で、気品を感じさせたところもすてきだったものです。

 こうした演技の幅にも彼は定評があります。昨年の映画「きみの瞳が問いかけている」で共演した横浜流星さんはパンフレットの中で「引き出しが多い役者さんで、学ぶべきことが多かった」と語りました。町田さんが演じたのは半グレ集のリーダー・佐久間恭介です。

 三木孝浩監督もその起用理由について、「本当に恐ろしい人物ほど普段は柔らかい物腰のはず」として、「底知れない闇をどこまで表現できるか」「すごくカッコいい恭介になりましたね」と称賛しています。

 このあたりが順調、かつ着実に町田さんが飛躍してきたゆえんでしょう。実はLDH、あるいはジャニーズといった事務所の役者には独特の難しさがあるのです。それは事務所の業界的なパワーゆえに色眼鏡で見られやすく、実力を正当に評価されにくいというもの。

 その難しさをクリアしていくには、一つ一つの仕事で結果を出し続けていくしかありません。演技における切り替えのうまさが、どんな役にも対応できる柔軟さにつながっているわけです。

土方歳三に通ずる人生の切り替え

 思えば、パイロットからダンス、そして、俳優へという人生の切り替えもなかなかのもの。これは「青天を衝け」の土方歳三にも通じるものです。農民から、剣の腕によって武士となり、さらに洋式化の進んだ新政府軍に幕府軍が敗れると、土方は考えを切り替えました。

 8月22日放送の第25話では、高良さんが演じる渋沢喜作の危急に際し、銃を発砲して救います。「銃の腕もおありとは」と驚く喜作に対し、「俺は潔く旧来の戦い方は捨てた」と宣言するのです。

 そんな“町田歳三”の勇姿もそろそろ見納めです。9月19日放送の第27話では、新政府軍との最後の戦いがクライマックスを迎えます。

 しかし、「青天を衝け」での出番が終わっても、10月には新たなドラマがスタートします。江口のりこさんが主人公の女社長を演じる「SUPER RICH」(フジテレビ系)です。町田さんの役は社長を支える秘書的存在で、いちずに敬愛する忠犬系男子。「内容を聞けば聞くほど挑戦的で魅力たっぷり」な作品だと語っています。

 今後もさまざまな作品で、町田さんは鮮やかな切り替えと変化を見せてくれることでしょう。

作家・芸能評論家 宝泉薫

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