ライブ、バラエティー、ドラマ…なぜCreepy Nutsは無双状態になったのか

Creepy Nuts

Creepy Nuts

 バラエティーなら、ぺこぱやフワちゃん、ドラマなら、上白石萌音さんや森七菜さんら2020年もさまざまなタレントがブレークしましたが、テレビ業界の中で「急激に売れた」と言われているのがヒップホップユニット・Creepy Nuts。

 Creepy Nutsは日本最高峰のMCバトル「UMB GRAND CHAMPIONSHIP」で3連覇を達成した日本一のラッパー・R-指定さんと「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP FINALS」で優勝した世界一のDJ・DJ松永さんによるヒップホップユニット。

 彼らは11月11、12日に初の日本武道館公演を成功させ、オフィシャルファンクラブの開設と来年1月からの全国ツアー開催を発表しました。続く15日には「情熱大陸」(MBS・TBS系)でフィーチャーされ、22日の「関ジャム」(テレビ朝日系)では第一人者の立場でヒップポップを解説するなど、本業のアーティスト活動は順風満帆。

 さらに、10月6日スタートの冠番組「イグナッツ!!」(テレビ朝日系)をはじめとする数多くのバラエティー出演をこなしつつ、「Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)」(ニッポン放送)でラジオパーソナリティーを務め、R-指定さんは現在放送中の連ドラ「危険なビーナス」(TBS系)と「閻魔堂沙羅の推理奇譚」(NHK)に出演しています。

 ライブ、バラエティー、ドラマ、ラジオ……まさに「何でもこい」の無双状態に突入していますが、なぜ彼らは急激にブレークし、多くのジャンルで活躍できるのでしょうか。

気さくなキャラと定評のあるトーク力

 彼らの活躍をひもとく上で最も分かりやすいのがバラエティー番組で見せる姿。

 例えば、「バナナサンド」(TBS系)ではジョイマン、永野さん、とにかく明るい安村さんのネタをユーモアたっぷりにアレンジし、「有吉の壁」(日本テレビ系)の「なりきりの壁を越えろ!ご本人登場選手権」では“ご本人”として若手芸人と共演し、「IPPONグランプリ」(フジテレビ系)では観覧ゲストなのにR-指定さんが「写真で一言」を振られてスベっていました。彼らはとにかくノリがよく、気さくなキャラクターでバラエティーの作り手や視聴者から親しまれているのです。

 ヒップホップというと嗜好(しこう)性が高く、「ディープ」「怖い」「悪そう」などのイメージを持たれがちですが彼らの印象は真逆。「日本一」「世界一」の圧倒的な実績があるにもかかわらず、どのヒップホップユニットよりも楽しげ、かつ穏やかな姿で親近感を醸し出しています。

 また、テレビマンたちに彼らのすごさを感じさせているのは、ラップやDJのスキルを一切出さなくてもバラエティーを成立させてしまえること。「若手芸人みたい」「お笑い第7世代かと思った」と言われるR-指定さんのノンストップトークと「顔がDJっぽくない」「近所のお兄ちゃん」と言われるDJ松永さんの素朴なキャラクターでバラエティーの構成に溶け込み、笑いにつなげてしまうところが評価されているのです。

 トーク力だけをピックアップしてみても、「イグナッツ!!」でEXITと対等に渡り合っているほか、現在、「木村拓哉 Flow supported by GYAO!」(TOKYO FM)の11月度マンスリーゲストとして4週連続で出演中。「『木村』と呼び捨てにする」などのトークで盛り上げていましたが、もともと、ラジオ業界では評価が高かったのです。

 ラッパーであるR-指定さんのトーク力があるのは理解できる気もしますが、DJ松永さんも劇団ひとりさん、ファーストサマーウイカさんとともに「任意同行願えますか?」(読売テレビ・日本テレビ系)でMCを務めるなど業界人の評価は上々。あるキー局のディレクターは「バラエティーは前に出ようとするタレントが多いから、DJ松永さんのように素朴だけどしゃべると面白いくらいがちょうどいい」と言っていました。2人そろったら強いのはもちろん、1人ずつでも盛り上げられるのが彼らの強みなのです。

「イケてなさ」を前面に押し出す強さ

 もう少し、彼らの活動スタンスを掘り下げると、バトルの機会が多いラッパーとDJであるにもかかわらず、彼らは「イケてなさ」を隠そうとせず、むしろ、前面に押し出しています。

 例えば、メジャーデビューシングルのタイトルは「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」であり、ミニアルバムのタイトルも「たりないふたり」「助演男優賞」でした。そんな彼らが醸し出す負のムードはバトルでの強さや戦績、ひいてはヒップホップ自体とは真逆のものがあり、それが聴く人々に驚き、共感、笑い、切なさなどをもたらしているのです。

「単に強く、自信満々というわけではなく、弱さや不安も自然体で見せられる」というヒップホップユニットは前例がないだけに、彼らが愛されるのは当然かもしれません。その才能とスキルは音楽にとどまらないだけに、今後もテレビやラジオなどの作り手から、さまざまなオファーが届くでしょう。

 しかし、それでも、彼らのホームグラウンドは音楽であり、ヒップホップ。まだまだ、「敷居が高い」「入り口が少ない」と言われるヒップホップの新たな宣伝マンとして、幅広いジャンルの場で2人の姿を見かけることになりそうです。

コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志

ジャンルで探す