「あまちゃん」の岩手では今も売れっ子、のんは今日も“居場所”を探し中

のんさん(2018年11月、時事)

のんさん(2018年11月、時事)

 女優の能年玲奈さんが「のん」に改名して間もなく3年ですが、その姿をテレビなどで見かける機会はすっかり減ってしまいました。そんなのんさんが5月4日、東京・日比谷野外音楽堂で行われたイベント「忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー」に登場しました。サプライズゲストとして木村拓哉さんも出演したビッグイベントです。のんさんは、昨年発売したアルバムの収録曲「わたしはベイべー」を矢野顕子さんとのコラボで披露。自身のブログに、

「会場全体に、清志郎さんへの愛が満ちてて少し切ないけど幸せな空間でした。(中略)最高のショーに参加できて一生もんの記憶となりました!」

と感動をつづりました。

 また、来年公開予定の映画「星屑の町」でヒロインを務めることも決定。ラサール石井さんらが長年上演してきた同名の音楽娯楽劇の映画化で、のんさんは東北の田舎町に住む歌手に憧れる娘を演じます。

「朝ドラ」「大河」で完全復活という夢

 4年前に独立騒動が勃発して以降、久々に明るい話題が続いたものの、ファンは今年、もっと大きな期待をかけていたことでしょう。ズバリ、朝ドラと大河です。

 現在放送中のNHK連続テレビ小説「なつぞら」は、通算100作目の朝ドラということで、かつてのヒロインが多数出演。のんさんは、ヒット作「あまちゃん」に主演していました。同じく放送中の大河ドラマ「いだてん」は、「あまちゃん」を手掛けた宮藤官九郎さんの脚本です。彼女にとってゆかりの深い「朝ドラ」「大河」にダブルで出演して完全復活、という夢を描いたファンも少なくないはずです。

 しかし、現時点で、それが実現しそうな気配はありません。今年4月には「週刊文春」とかつて所属していた大手芸能事務所との間で争われていた裁判の判決が出ました。のんさん寄りの記事を書いた同誌に賠償命令が下され、かつての所属事務所が勝利。同誌は控訴したものの、彼女にとっては逆風が吹き続けています。

 ところが、全国で唯一、のんさんをテレビで毎日見られる土地があります。筆者の住む岩手です。「あまちゃん」の舞台でもあったこの地で、彼女は数多くのCMに出演中です。岩手銀行のCMで行員の制服姿で歌ったり、JA全農いわてのCMで、お笑いタレントのゴー☆ジャスさん、どぶろっく、ANZEN漫才、カミナリらと共にコントを演じたりしています。

 今年3月には、三陸鉄道の「全線開通記念式典」に出席するなど、岩手県内のイベントにもちょくちょく呼ばれ、その都度、テレビにも登場しているのです。宣伝ポスターや県産商品のパッケージなどにも起用されているので、街中でもしょっちゅう目にします。

 実はのんさん、2016年7月に改名した翌月、岩手県庁を表敬訪問し、サブカル好きで「あまちゃん」ファンでもある達増拓也知事から「県庁内に『プロジェクトN』を立ち上げ、のん活躍の場を作ります」というエールをもらっていました。

 知事によると、「被災して岩手の人たちが苦労をしていた時に、のんさんはじめ、スタッフが苦労して真剣勝負で番組を作ってくれた。番組のおかげで岩手のことが全国のお茶の間に届けられた。同じ苦労を共にしたという気持ちが、家族みたいな意識につながりました」とのこと。

 家族のように感じているからこそ、逆風状態ののんさんを放っておけないという雰囲気は、知事をはじめ、岩手全体に存在するのです。そこには、昔ながらの“判官びいき”という気質も関係しています。かつて、源義経(九郎判官)が世に出るのを助け、兄・頼朝に追われてからも庇護(ひご)したのは、岩手人の奥州藤原氏でした。

第2のシンデレラストーリーは可能か

 そういえば、毎年、岩手・平泉で行われる「春の藤原まつり」の東下り行列では、芸能人が義経役を務めます。今年は、元KAT-TUNの田口淳之介さんでした。こちらも今や、テレビではなかなかお目にかかれない人ですが、その人気は健在。田口さんが登場した5月3日は、20万人もの観衆が集まり、「毛越寺があれだけ人で埋め尽くされた東下り行列は久しぶり」(観光協会)と地元を喜ばせました。

 そう、今の時代、テレビが全てではありません。「新しい地図」の3人がインターネットテレビへの出演などで存在感をアピールしているように、さまざまな形で魅力を伝えることは十分可能です。

 のんさんについては、岩手ほどではないものの、神戸や広島、横浜でもCMの仕事をこなしています。昨年は、海を越えた中国でも、化粧品のイメージモデルに起用されました。クラウドファンディング「CAMPFIRE」のCMのように全国で流れるものもあります。

「あまちゃん」のヒロイン・天野アキは、東京と岩手を行ったり来たりしながら、自分の居場所を見つけようと葛藤していました。のんさんもまた、芸能界での居場所を探す旅の途中なのです。2度目のシンデレラストーリーへのハードルは高いとはいえ、彼女らしさがもっと発揮できるよう、温かく見守りたいものです。

作家・芸能評論家 宝泉薫

ジャンルで探す