【町田啓太「光る君へ」インタビュー】公任の人物像と道長への想い まひろは「俗に言う“おもしれー女”ポジションだったかも」

【モデルプレス=2024/11/17】大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合テレビ、毎週日曜午後8時~/BS・BSP4K、毎週日曜午後6時~/BSP4K、毎週日曜午後0時15分~)が、11月17日に「望月の宴」が描かれた第44回「望月の夜」の放送を終えた。このほど、一条朝の四納言の一人・藤原公任(ふじわらの・きんとう)を演じた町田啓太(まちだ・けいた/34)が合同取材会に出席。「西郷どん」(2018)、「青天を衝け」(2021)以来、3作目の大河出演となり、約1年半の撮影を終える心境から共演者とのエピソード、公任の心中の変遷についてたっぷりと語ってくれた。

町田啓太「光る君へ」第44話(C)NHK


(写真 : 町田啓太「光る君へ」第44話(C)NHK)

◆吉高由里子主演大河ドラマ「光る君へ

大石静が脚本を手掛ける今作は、平安時代を舞台に、壮大で精緻な恋愛長編「源氏物語」を書き上げた紫式部が主人公。紫式部(まひろ)を吉高由里子が演じ、「源氏物語」執筆に欠かせない1人の男性・藤原道長を柄本佑が演じる。

公任は道長とは同い年で、友情を育むが、出世レースが進むにつれ関係が変化。道長のライバルから、後年は道長を支える政治家として活躍する。

序盤は麗しいビジュアルと自信たっぷりのキャラクターが反響を呼び、道長、斉信(はんにゃ.金田哲)、行成(渡辺大知)の4人を指す“平安のF4”も話題になった公任。一方で音曲、漢詩、和歌など文化面に秀で、まひろ(紫式部)の才能に早くから注目し、「源氏物語」にも興味を示したという役どころ。様々な習い事の役作りの苦労も振り返った。

◆町田啓太、序盤の公任の役作り F4の撮影エピソード

― 1年以上撮影を続け、町田さんにとってどんな作品になりましたか?

町田:ほぼ1年半ずっと作品のことを考えてきましたし、ちょうど先ほど最後のシーンのリハをやってきたところなので、ちょっと今はしみじみとしてしまっています。最後をしっかりとしめくくるように考えながらやっていきたいです。

― 序盤では、公任の女性に対しての発言などボーイズトークのシーンも話題になりましたが、役作りはどんなことを意識されましたか?

町田:序盤は、エリート街道を進んできた何も疑っていない自信に満ち溢れた青年だったので、その勢いを思いっきり出せたらと思っていました。本当に上から目線のつもりがなく、ただ自分が一番だと思っているんですよね。ひけらかしているような感じもするけど、「そこまで言っちゃうんだ」と正直すぎることを言ったところで何も悪びれていない感じが逆に気持ち良く見える面白みが出たら良いなと思っていました。

― “平安のF4”も人気を集めましたが、4人での撮影中のエピソードを教えて下さい。

町田:やはり心強かったし心地良かったし、4人での撮影はすごく楽しみにしていました。中盤はかなりF4のシーンは少なくなってきて、年が経ってから30代で道長主催の鍋パーティーのシーンがあったんですけど、あのときは久々に込み入った話ではなくて日常会話だったので、懐かしかったです。風貌や生き様がそれぞれ変わっているけど、集まると昔の感じに戻ってしまうのが不思議で、同窓会で同級生に久々に会った感覚でした。要所要所で集まるごとにその雰囲気が戻ってきたのは最初にしっかりと関係を構築できたからだと思います。

◆町田啓太、金田哲・秋山竜次との撮影での“トラップ”明かす

― 公任は四納言(公任のほか一条天皇に仕えた斉信、行成、源俊賢の4人)の中でどういうポジションだったと思いますか?

町田:非常に難しかったです。情熱的な俊賢(本田大輔)さんが入ってきて、行成は行成で以前は帝と道長の板挟みで苦労していましたけど本当によく動いていたし、斉信は一番良いとこ取りを狙っている人なので実務をしていたのか疑問なところはあるんですけど(笑)、割と陰ではたくさん働いていたんだろうなと思いますし、文芸の世界でもとても活躍されていたと思います。当時は公任と実資(秋山竜次)さんの仕事量が半端なかったみたいなので、その中でも若干俯瞰して支えられるような人でありたいと思っていた節はあると思います。

― 公任は実資や斉信とのシーンも多かったと思うので、お笑い出身の方との演技で印象深かったことは?

町田:お二人とのシーンは大変でしたね(笑)。秋山さんが何の前触れもなくちょっとずつ変えてくるので、「次は何が来るんだろうな」とアンテナを立てながら演技をしていました。あとは“斉信トラップ”というのがあって、若干セリフを変えてくるんですよ。ご自身も無意識でやられているときがあって、僕はずっとビクついていました(笑)。金田さん自身もすごくゲラなので、自分が耐えられなさそうなときはあの大きな目を見開いて見てきて、僕も「やめてくれ~」と思いながら演技していて、思い出すだけで変な汗をかいてきましたが、楽しかったです。

◆町田啓太が考える公任の変化と人物像

― 公任は、政治や権力から一歩引いて冷静に見ている印象があるのですが、その辺りはどう思われますか?

町田:後ろ盾がちゃんとあって道筋ができている人が優遇されるという世界でもあるので、やはり後ろ盾がなくなって父(藤原頼忠/橋爪淳)から「お前はお前で頑張れ」と言われたところから、引かざるを得なかったんだろうなと思います。公任はとても仕事ができた人ですし、文芸の世界で本当に秀でた才能を持っていたということはたくさんの資料に残っています。才能があることは自負していましたし、それだけの努力もしていると思うので、ある程度政治とは関係のないところでも戦えるのではないかと。その才能を磨けば、きっと報われることを自分でも分かっていたから、そちらにシフトしていったんじゃないかなと思います。でも途中でちょっと出世を企てるシーンが出てきたときは「大石先生面白いな」と思いました。

― 出世欲は変わらず心のどこかにあったと。

町田:それは生きていく上で必要だったんではなかろうかと。自分自身、父が職を辞したことで苦労したから、当時、家族がどうなっていくかは大事な部分だったと思うし、自分の息子たちにはある程度ちゃんとしたレールが残るように出世欲を使っていたんだと思います。

◆公任の道長に対する想いとは

― 道長に対する公任の心の推移についてうかがいたいです。これまでは常に道長の味方であり続けた公任でしたが、第44回で道長に権力が集中し過ぎるから左大臣を辞するように促します。道長に対しての気持ちは変わったと思いますか?

町田:道長への気持ち自体は変わっていないだろうと僕の中では思っています。僕の解釈ですが、辞するように促したのは、道長が権力者となり自分の発言ですべてが動かせる立場だから、何でもかんでも首を突っ込んで頑張りすぎだと。しかも色々な人に良い顔をしながら意見を全部聞いてやっていたら危ないし回るものも回らなくなって、誰も得しない。時代は移り変わっていくものだし、任せるべきところに任せてどんどん変えていった方がいいんじゃないかという想いを持って敬意を持って話したんじゃないかなと思います。

― では欲張りすぎというよりは、親友として心配していると。

町田:そちらの方があるんじゃないかなと思いますね。あとは、地位も上がって道長に意見を言える人がなかなかいなくなったけど、旧友でもある公任自身が元々割と言いたい放題言う人柄だったから、周りと話して自分が一番言えると思ってその役を買って出たんじゃないかと思います。

― 視聴者目線からすると、だんだん道長の黒いところが出てきていると感じますが、公任は道長の黒い部分は全く気が付いてなかったと思いますか?

町田:そこは気付いていると思いますが、「変わらないで欲しい、自分のことを裏切らないで欲しい」という想いがあったんではなかろうかと思います。道長がしていることに関しては自分が信じたいからと、ポジティブに変換していたと思います。

◆町田啓太が語る公任とまひろの関係性

― まひろとの共演シーンで印象的だったところはありますか?

町田:吉高さんは以前に共演させていただいたとき、コミュニケーションを率先して取ってくれて、それで僕は救われていた部分がたくさんあったので、今回も共演をすごく楽しみにしていました。本当に変わらない方で、結構僕に対してツッコミを入れたりイジってくれたりするので、公任とまひろの関係性とあんまり変わらないかもしれません。もちろん僕は公任みたいに悪態をついたりはしませんが(笑)。公任とまひろは、第33回でようやく言葉を交わせたので、その撮影の前もすごく楽しみにしていて、ちょこちょこチクリと返されるのが公任も逆に癖になっているんじゃないかなと思い始めました。公任は道長にも割と放任されているので、実はあそこまで返してくれる人はいなくて、自分も結構ズバッと言うタイプだからもしかしたら嬉しかったかもしれないですよね。まひろの能力もとても買っているし、実は公任が「源氏物語」のきっかけも作っているので、公任にとってまひろは俗に言う“おもしれー女”というポジションだったかもしれない。この時代背景で唯一男女関係なく本音を言い合える関係性ができたのが芸事の分野だったから、そこも興味深いなと思います。

◆町田啓太、3回目の大河での挑戦

― 大河ドラマが3回目ということで、挑戦的にやってきたことがあれば具体的に教えて下さい。

町田:序盤の方が特に挑戦が多かったです。漢詩を詠んだり打毬などやることがかなり多かったのでそれはとても挑戦だったし、平安の世界観を作り上げる上ですごく大事なところではあるのでそこを任せていただけたことはありがたかったです。その中でもやはり漢詩は丸暗記だったので特に難しかったです。実際のシーンよりも多めに覚えていたので、リハーサルなどで指導して下さっている先生方が「公任に見えました」と拍手して下さった瞬間はすごく勇気づけられて、今でもハイライトして記憶に残っています。

― プライベートの趣味として続けていきたいことはありますか?

町田:今のところはないんですけど…(笑)。ただ、書は現代でも書く機会がたまにあるので、それはちょっとでも美しく書ければ良いと思っているのと、自分のサインも漢字で書いているんですが、すごく下手くそな小学生が書いた字みたいになっちゃっているので、ちょっと先生にご指導いただけないかとだいぶ前に相談していて、そこから時が経ったので打ち上げまでには何とか捕まえたいなと思います(笑)。

― 乗馬、打毬、龍笛など、特に苦労したものは?

町田:打毬は皆経験はないですし、ビデオなど現代の資料を見て学んでどうやったら良いかを考えて練習しました。龍笛については本当にただ吹けばいいというものではなく、心境をどう表現するかということがすごく難しかったです。2回シーンがあるんですけど、一度目はエリート街道まっしぐらで何も自分の将来を疑っていない状況、二度目は雲行きがどんどん怪しくなり陰りに陰っているときに吹く状況だったので、そこは違いを出せたらと思いました。一度目は勢いが出るように息遣いや体勢も力強く、視覚的なところも意識して、二度目は帝の前だったので恐れ多いながらも、「自分は芸事の道の方が合っているんじゃないか」と思っていた頃でしたからそれを心から楽しんでいるようなテンションでした。

◆町田啓太、藤原公任の人生から感じた刺激

― 1年以上にわたって髪を伸ばされたと思いますが、カツラを使う選択肢はなかったですか?

町田:髪に関しては、僕は元々半分カツラでやっていてそこに合わせて馴染むようにどんどん伸ばしていきました。こんなに髪を伸ばしたこともなかったので、髪問題についてはキャストの皆さんとも色々話して、皆同じような髪型にどんどんなっていくので「どうケアしてる?」「寝るときは上げるよね」「暑くて髪で起きるよね」という話をしていたのが懐かしいんですけど、今は皆さんが徐々に髪型が段々変わってきているのでそれを見て終わりが近づいてくるのを感じて、この時代背景ならではの不思議な経験だなと思います。

― 終わったら髪を切りたいですか?

町田:それは皆言っていますけど、切りたいですよね(笑)。でも次の役柄にもよるし、僕は「絶対こうしたい」みたいな髪型はないので、逆にもっと長くなっていたら笑いますけど、そうではないんじゃなかろうかとは今思っている次第です。ちなみに人生で1回ぐらいはやりたいなと思っている髪型は角刈りですね。

― 1年半演じてみて公任の人生に思うことは?

町田:俳優をやっている自分も芸術の世界で生きている人間なので、芸事で誰しもが認められるような能力があってそれが1000年先まで残っていて語り継がれている公任は本当に偉大な方だなと思ったので、僕ももっと頑張っていきたいと刺激を受けました。

― ありがとうございました。

(modelpress編集部)

◆「光る君へ」第45回(11月24日放送)あらすじ

まひろ(吉高由里子)の源氏物語はいよいよ終盤を迎えていた。ある日、まひろは娘・賢子(南沙良)から、宮仕えしたいと相談され、自分の代わりに太皇太后になった彰子(見上愛)に仕えることを提案。まひろは長年の夢だった旅に出る決意を固める。しかし道長(柄本佑)の反対にあい、ついにまひろは賢子にまつわる秘密を明かすことに。旅立つまひろを思わぬ再会が待ち受けていた。一方、道長は出家を決意する。

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