立ち上がれ! 自分らしく生きるために働く女性たち! ミュージカル「9 to 5」観劇レビュー

ミュージカル『9 to 5』


ミュージカル『9 to 5』 和希そら、明日海りお、平野綾

職場環境や恋愛事情に悩む、すべての女性たちへ!!
勇気を持って逆境に立ち向かった、キャリアウーマンたちの姿を描く、ポップで痛快でパワフルなミュージカル・コメディ、開幕!

※せっかくなのでなるべくまだ世に出ていない場面写真を選ぼうとした結果、記事の内容には沿わない形になっていますが、お許しを。すべてのネタバレが嫌な方は、そっと閉じてください。

舞台となるのは、ロサンゼルスの大企業。まだまだ女性蔑視が横行していた時代。毎日9時から5時まで、自分をも騙しながら働く大人たちの物語。

これだけ簡単に説明してしまうと、少し遠い世界の物語のように感じるかもしれませんが、これは決して過去の話ではない。登場人物の個性が豊かで、思考の端々にアメリカンなテイストは感じるものの、きっと観る人それぞれ、感情移入して応援したくなる人物がいるはず。
というわけで、ざっくりと、会社という荒波に力強く立ち向かう、3人のヒロイン(プラスワン)をご紹介。

ミュージカル『9 to 5』


ミュージカル『9 to 5』 和希そら、明日海りお、平野綾

【ヴァイオレット・ニューステッド(明日海りお)】
夫に先立たれ、ひとり息子を真面目に育てるシングルマザー。パワハラ兼セクハラ社長・フランクリン(別所哲也)にこき使われ、男尊女卑の社風に嫌気がさす一方、社内の若手社員ジョー(内海啓貴)に慕われ、「年の差がありすぎる」と悩んでいる。
目指すのは、“女性たちが生き生きと働ける社内環境”。

【ドラリー・ローズ(平野綾)】
フランクリンの秘書。プライベートはそれなりに充実し、仲睦まじい彼氏もいる。しかし、華やかで艶のある風貌からフランクリンに目をつけられ、セクハラに悩み、社内の女性たちからは嫌煙されている。
目指すのは、“見た目に囚われずに生きること”。

【ジュディ・バーンリー(和希そら)】
新入社員。主婦としての務めを果たしてきたため、社会人としての経験はゼロ。夫は若い女性と不倫中。何をするにも不器用で、オドオドしている。フランクリンに怒鳴られ萎縮していたところを、ヴァイオレットに救われる。
目指すのは、“自立した強い自分”。

ついでにご紹介したい。
【ロズ・キース(飯野めぐみ)】
フランクリンの秘書。フランクリンに惚れている様子。社員たちは「9 to 5」毎日労働することに不満を抱いているが、ただひとり、会社にいない「5 to 9」の孤独さを嘆く。ヒロイン3人の策略を盗み聴きして…。
目指すのは、“????”。

ミュージカル『9 to 5』


ミュージカル『9 to 5』 和希そら、別所哲也

別所哲也さんが演じるフランクリンが、何周も回って清々しいくらいのハラスメント社長。観ながら「最悪だわぁ」と思いつつ、時にクスっと笑えるコミカルさも出してくるのが別所さんが演じるからこそのズルイところ。
とはいえハラスメントは、誰が何の理由であれダメ絶対! ヒロインたちによってなかなかの強行成敗されますので、ぜひ本編でご覧ください(笑)。
※男性のお客様は、そこそこ観るのしんどいかもしれないです(苦笑い)。

ミュージカル『9 to 5』


ミュージカル『9 to 5』 内海啓貴、明日海りお

明日海りおさんが演じるヴァイオレットは、母としても女性としても社会人としても、様々な人生経験を積んだ、たくましさのある人。出で立ちがとにかくスマートで、社長に怯えるジュディを救ったさい、あまりのカッコよさにジュディが恋する展開来るかと思いました。私だったら惚れてる。(物語が変わってしまう)
かと思えば、愛する夫を亡くした傷を抱え、内海啓貴さん演じる若手社員ジョーからのどストレートな想いを受け入れられずにいる、そのひとりの女性としての心の揺れが可愛らしくもある。ギャップ…。私が惚れそう。(?)

平野綾さんが演じるドラリーは、バービー人形のようなコケティッシュなビジュアルゆえ、“単純な女っぽい”と見られがちなタイプ。だけど、こういう女性ほど処世術に長けているし、賢くて強い。正直、演者によってはもっといやらしくなってしまうような危うさを秘めた人物だと思うけれど、キュートとパッションのバランスが本当に巧みで、平野さんで拝見できて良かったと思いました。

ジュディを演じる和希そらさんは、宝塚歌劇団退団後ミュージカル初出演。下界へようこそ。本当にありがとうございます。宝塚にいらした頃から、「これ以上歌唱力をあげられても困るよ?」と思っていたのですが、やっぱり困りました。音域が広いうえにブレない。新しい何かしらの伝説の幕が開いた気がして、ニヤニヤが止まりませんでした。
ジュディはたぶん、本作で一番変化を遂げる人。初めのか弱い(でもたまに口が悪いのが可愛い)和希さんも新鮮でしたし、徐々に強くなっていく姿を応援したくなります。
インタビューはこちら↓

【インタビュー】ミュージカル『9 to 5』にて宝塚退団後初舞台 和希そらの飛躍はまだまだ止まらない!

ミュージカル『9 to 5』


ミュージカル『9 to 5』 明日海りお

フランクリンを成敗するために何をするか。3人のヒロインたち、それぞれの妄想劇も本作の見所のひとつ。
妄想は自由ですから、誰しもイラっとした相手を脳内でどうにかしたこと、あると思います。それにしても3人の妄想は大胆でおもしろい。ヴァイオレットは白雪姫、ドラリーはウエスタンガール、ジュディはナイトクラブのダンサーなど、各演者さんのファンにとってはサービス仮想(装)シーンだと思うので、こちらもお楽しみに。

実際の成敗の方法もなかなかに強硬手段で、現代日本ではまず無理だろうと思うのですが、力強く立ちあがった3人の生き生きとした姿を見ているうちに、「私にも逆境に立ち向かうパワーは秘められているはずだ!」という生きる力、やる気を与えてもらえたような気がします。

私は、「ハイスクール・ミュージカル」や「ヘアスプレー」のような、人生の光を見つけられる物語が大好きなのですが、物語的にも世界観的にも似た雰囲気の爽快感があり、楽しかったです。※何度も言いますが、男性は肩身が狭いとは思います(苦笑い)。

本作は東京・日本青年館ホールで上演されたのち、大阪、福岡、静岡でも上演されます。
詳細は公式HPで!
https://9to5.jp/

(撮影・文:越前葵

公演情報

ミュージカル『9 to 5』

【音楽・歌詞】ドリー・パートン
【脚本】パトリシア・レズニック
【原作】20世紀FOX同名映画

【翻訳・訳詞・演出】上田一豪

【出演】
明日海りお 平野綾 和希そら 内海啓貴 飯野めぐみ 別所哲也

ひのあらた 俵和也 高橋里央 高瀬雄史 小原悠輝 古田伊吹 望月凜 小林諒音 舩山智香子 コイタ奈央美 友部柚里 堤梨菜 杉山真梨佳 吉田彩美 柴田実奈 石井千賀 ルイス魅麗セーラ 飯沼帆乃佳

【東京公演】2024年10月6日(日)~21日(月)/日本青年館ホール
【大阪公演】2024年10月25日(金)~28日(月)/オリックス劇場
【福岡公演】2024年11月1日(金)~3日(日)/キャナルシティ劇場
【静岡公演】2024年11月7日(木)~8日(金)/静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール

公式サイト
https://9to5.jp/

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