東かほり監督と道本咲希監督、初の女性同時起用に「貴重なチャンス」…ENBUゼミナールのシネマプロジェクト

撮ってみたい映画を尋ねると、東かほり監督(左)は「命がけで食べているので、食べ物がおいしそうな映画」、道本咲希監督は「ヒューマンドラマ。そして、めっちゃエンタメ撮りたい」=米山要撮影

 「カメラを止めるな!」「茶飲友達」などで知られるENBUゼミナールのシネマプロジェクトが、女性監督2人を起用して、2作品を製作した。これまで18作品を世に出してきたが、女性監督の同時起用は初めて。19日まで上映中の「とりつくしま」の ひがし かほり監督と28日公開の「ほなまた明日」の 道本みちもと 咲希監督は、「貴重なチャンスをいただいた」と口をそろえる。(近藤孝)

 プロジェクトは2012年にスタート。俳優や映画監督の養成学校であるENBUゼミナールが若い才能に実践の機会を与える企画で、第10弾まで毎回1、2作品を製作してきた。「とりつくしま」と「ほなまた明日」は第11弾。同ゼミの市橋浩治社長は「近年は女性監督のデビューが増えている。才能ある女性たちと仕事をしたかった」と話す。

 東監督は1989年生まれで、デザイン会社勤務を経て万田邦敏監督らが講師を務める映画美学校で学んだ。道本監督は97年生まれ。河瀬直美監督らを輩出したビジュアルアーツ専門学校大阪(現大阪ビジュアルアーツ・アカデミー)を卒業し、映画予告の編集などを経験した後、本格的に映画制作を始めた。東監督の初長編映画「ほとぼりメルトサウンズ」と道本監督の短編映画「なっちゃんの家族」を市橋社長が見て、2人の起用を決めた。

 「とりつくしま」は、東監督の母親で小説家、歌人の東直子の小説を映画化。死者がマグカップやジャングルジムなどにとりつき、大切な人の姿をそばで見つめるエピソードを4話に構成した。「母の作品を映画にしたいと思っていた」(東監督)。一方、「ほなまた明日」は、写真家を目指す女性が主人公。彼女と同じ道を進みつつ、複雑な感情を抱く若者たちの姿を描いた。「何かを表現したいという気持ちを写真という表現に託した」と道本監督は言う。

 プロジェクトは、ゼミナールの在校生や卒業生に限らず一般から参加者を募り、オーディションを実施。その通過者が撮影前に監督とのワークショップ(体験型の学習講座)に臨み、キャストを選抜する。「ワークショップは初めての経験だったので、難しかった」と道本監督。東監督は「参加者のことを深く知ることができた」と振り返る。

 将来の映画制作について、東監督は「映画が撮れることは当たり前のことではないので、まずは撮りたい映画を撮るのが目標」と意欲を見せる。道本監督は「多くの知り合いが、SNS向けのショートドラマなどを、低予算で撮っている。そういう姿を見ると、映画を続けたいけど、不安はある」と明かしつつ、「チャンスをつかめるように努力していきたい」と強調した。

ジャンルで探す