年間で約3億円を“投げ銭”される“顔出ししない”Vライバー、驚きの配信ノウハウ「スマホに向かって話すだけで稼げるってラクですか?」「1日、何して過ごしているんですか?」と失礼な質問も訊いてみた〈きゃべつ氏インタビュー〉

「この1年半で、3億円以上の投げ銭をいただきました」そう語るのは、ライブ配信サービス「TikTok LIVE」にて「Vライバー」として配信活動をする男性・きゃべつ氏(29)だ。Vライバーとは、顔出しをせずに、自身が作成したキャラを駆使しながら、声のみでの配信を行なう配信者のこと。きゃべつ氏にはTikTok LIVEの、いわゆる“投げ銭”を通して年間約3億円ものギフトが送られているという。そんなトップライバーとして活躍するきゃべつ氏に、TikTok LIVEの魅力や戦略について訊いた。

〈画像〉取材に答える「アバターではない」リアルなきゃべつ氏に、これまでいくら稼いだんですかと質問すると…

Vライバーの活動開始後、最初の1ヶ月で500万円稼ぐ

──きゃべつさんは現在29歳とのことですが、いつからVライバーとしての活動を始めたのでしょうか?

きゃべつ(以下同) 2023年3月からですね。実は、もともと学校を卒業してから、3年間ほど看護師として働いていたんです。勤務先は大学病院の整形外科病棟だったのですが、患者さんを車椅子からベッドに移動させることが多くて、ぎっくり腰を発症してしまったんですよ。そこからけっこうメンタル的に落ち込んでしまって、「これはあと40年も働き続けられないな」「体を使った仕事はやめよう」と思い、退職しました。

看護師を辞めてからは、ちょうど「インスタグラマー」という言葉が流行り始めた時期だったので、SNSと広告を掛け合わせた会社を起業しました。いろんな企業案件をカバーして、それなりに利益は出せたのですが、共同創業者だったということもあり、仕事を進めていくうちに自分が考えている将来と会社のビジョンにズレが生じてきてしまって。その会社からは離れることにしました。

それからも新しい会社を起業し、SNSを主軸としたWebマーケティング、Web3領域や仮想空間(メタバース)の開発にも会社として事業展開をし、さらに新しい事業領域を模索していました。SNSを使って何かしたいと思ったのですが、「今からYouTubeを始めるには、ちょっと遅いし、難しいな」と。
TikTokも流行っていたのですが、それも自分の性には合っていないと感じたんです。そんなときに、「『TikTok LIVE』っていうのがよさそう」っていうのを耳にして。配信市場は新型コロナウイルスの蔓延をきっかけにグッと伸びましたが、今はそれを超えるほど流行っているというので、始めてみることにしたんです。

──なぜ顔出しをしない「Vライバー」として配信しようと思ったのでしょう?

「TikTok LIVE」を見ると、全員顔出しをしていて、既視感のあるライブ配信ばかりだったんですよ。でも、私はすごくイケメンなわけでもないし、「顔出しをして売れる」というイメージが持てなくて。一方で、顔出しをせずに、画像だけで配信している人も少しだけいたんです。「あ、これでも成立するんだ」と考えたら、自分も顔出しをしないという選択肢を思いついて。配信者の99%が顔出しをしているなか、「顔出しをしない」というジャンルで客を取りにいこうと戦略的に考えました。

ただ、それで人気が出るかどうかは、正直手探りでした。それでも、開始してすぐに数百万円稼げちゃったんですよ。最初の1ヶ月で、もう500万円とか。しかも、そのときはまだアバターを使っておらず、「きゃべつくん」の画像だけで配信したので、「アバターを使って本格的に取り組んだら、もっと人気が出るんじゃないか」と。

配信アプリの中には、アバター専用のものもあるんですよ。つまり、顔出しをしないアバター配信にも需要がある。しかも、TikTokはユーザーが多くて、経済圏も大きい。なので、ここを本気で取りにいこうと決めたんです。

「イケメンだからって、投げ銭してもらえるわけではない」 

──TikTok LIVEでは、どんな人が配信をしているのでしょうか? 

最近では様々なジャンルの人が配信をしています。サラリーマンや、主婦やシングルマザー、夜職、アイドル、アーティストなど。田村淳さんやメンタリストDaiGoさんなど、芸能人や有名人の方々も配信していますし、幅広いジャンルの人が配信している印象です。

一方で一般のライバーには意外に甘くなくて、イケメンだからといって、視聴者が投げ銭してくれるわけではない。ホストとか、モデル級のインフルエンサーとかも配信しているので、イケメンはたくさんいるんですよ。

大事なのは、やっぱりトーク力なんですよね。ライブ配信は画面越しに行なわれるので、リスナーは視覚と聴覚を使うわけですが、見た目に関しては、やはり飽きが生じるというか。No.1ライバーも、もちろんイケメンではあるんですけど、やっぱりトークが面白かったり、他配信者とのコラボレーションが魅力的だったりする。ライバーには、見た目以上にそういうスキルが必要なんです。

──スマホに向かって話すだけで大金が入るなら、正直ラクな商売に見えてしまいます。人気を維持するコツはありますか? 

ラクじゃないですよ(笑)。人気を維持するコツは、とにかくちゃんと継続すること。あと、配信時間をしっかり確保することですね。それこそ、トップライバーと呼ばれる人たちは毎月平均100時間以上も配信しているんです。僕はだいたい月200時間に届かないぐらいなので、トップライバーよりも2倍近く配信しています。1日5~6時間配信しているので、けっこう大変です(笑)。

──では、きゃべつさんの1日のスケジュールを教えてください。

朝はだいたい7時前後に起きます。実は僕、配信者としてだけでなく、1500人くらい所属している配信事務所や配信関連のSNSマニュアルマーケティングの会社も経営しているんです。まずはそちらの業務連絡を確認して、それがひととおり終わったら、ウォーキングの配信を行ないます。顔出しせず足元だけを映して、歩きながら「今日も歩いています」「今日も暑いよ」みたいな。

その後、11時から会社に行き、ミーティングまで2~3時間ほど配信します。そこから夕方〜夜まで仕事をし、その日のスケジュールがすべて終わったら、また寝るまで配信する、という流れです。

「TikTok LIVEバトル」で合計2億円投げ銭してもらう

──配信ではどんな話をされているんですか? 

たとえば僕だったら、今までの人生や仕事のことも話しています。それに看護師として働いた経験があるので、医療関係のことを話すこともありますし、「今日こういうことをしてきた」と自身の体験をリスナーと共有することもあります。

事前に話を作ることはしていなくて、何かコメントが来たときは、それに紐づくような話題をいろいろ考えて展開していく、という感じです。あとは、ほかの配信者とコラボしてトークするとリスナーも喜んでくれますし、本当にリアルタイムでエンタメを作り出すという感覚ですね。

プライベートの話だと、今、僕には彼女がいないので、「なんで俺に彼女ができないんだ」とか。あと最近意外と人気なのは、料理の話です。僕はそんなに料理が上手くないんですが、逆にそれがいいみたいで。たとえば、配信でたこ焼きを作ったときは、千枚通しではなく割り箸を使っていた様子がウケたり、生地の量が明らかに多すぎるってツッコまれたりもしました。

──そんな雑談で、3億円も投げ銭してもらえるものなのでしょうか?

TikTok LIVEには「バトル」という機能があって、配信者同士でコラボ対戦できるんですよ。対戦時間は5分間で、受け取ったギフトの数で勝敗が決まり、勝者はそのギフトの35%を手に入れることができるんです。

まさにこれがTikTok LIVEの肝で、僕は1人で配信するときは雑談が多いのですが、バトルでは猛烈に盛り上げて、しっかり勝ちにいくようにしています。やっぱりリスナーには「自分の推しに勝ってほしい」という競争心が働くのか、推し活に似ている感じで、まさにサッカーのワールドカップみたいにバトル中は配信者もリスナーも熱狂しています。僕の場合、これまで投げ銭してもらった3億円のうち、2億円以上はバトルによるものだと思います。

今年6月にはアジア圏のトップライバーが参加するイベントの日本代表に選ばれて、マレーシアのライバーと対決したのですが、そのときは1個9万円のギフトを数秒ごとにボンボン投げてもらいました。15分で約1000万円近くのギフトが飛ぶくらい盛り上がりました。視聴者は10000人ほどいましたね。今こういうのが世界中に広がっていて、四六時中、行なわれているんです。

推しのライバーが勝って視聴者に何があるかというと……「推しが勝って嬉しい」のだと思います(笑)。自分が応援しているライバーが勝てたら嬉しいですし、ギフトを投げて名前が呼ばれるとファンとしては嬉しいでしょうし、アイドルのグッズとかも、全部買いたくなるじゃないですか? 結局、投げ銭というのは推し活にかなり近い気がしますね。

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きゃべつ氏は、多いときで月4000万円以上の“ギフト”を受け取ることもあるという。送られたギフトなどの利益は、配信者が約50%近く得ることができるそうだ。「税金はもちろんしっかり払っています」と話すきゃべつ氏に、高額なギフトを貢ぐファンたちをどう思うのか、配信者が抱えるトラブルや課題についても訊いてみた。

後編へつづく)

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

「僕がきゃべつだって家族も知らないんです」1年間で約3億円“投げ銭”されるVライバーに「高額を貢ぐファン」「アンチ」「配信中の事故やトラブル」について訊いてみた〉へ続く

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