『劇場版ドクターX FINAL』──米倉涼子+豪華キャストのシリーズ集大成にして、最大の危機! 【おとなの映画ガイド】
テレビで放送されるたびに旋風を巻き起してきたドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』の映画化『劇場版ドクターX FINAL』が、12月6日(金) に全国公開される。米倉涼子を主演に、これまで物語を彩ってきたキャストが集結し繰り広げる最新作。現代社会の縮図ともいえる医療現場を舞台に、待ってました!と言いたくなる名セリフや定番のシーンを交えながら、未だかつてない危機と、ドクターXのルーツを描く、医療ドラマの枠にとどまらないサスペンスの傑作だ。
『劇場版ドクターX FINAL』
『ドクターX』といえば、2012年にテレビ放送された第1期から2021年の第7期まで、数々の流行語を生み出して、大ヒットし、すでに名作の域に達しているドラマ。それが映画化されるのは、ごく自然な成り行きなのだけれど、この映画が、12年間つづいたシリーズの、“最新作”にして“最終作”だと発表されたのだから、これは衝撃。
本作で大門未知子(米倉涼子)に相対する敵は、東帝大学病院の新院長・神津比呂人(染谷将太)。自身も天才外科医であり、双子の弟・多可人(染谷将太 2役)は最新鋭の医療機器を製造するメーカーのCEO。兄弟ともにメディアでよく取り上げられるセレブ的存在の実力者だ。神津は弟の財力をバックに病院の経営危機の救世主として起用される。旧弊な病院組織と運営に大ナタを振るう神津は、超人的な未知子の才能に目をつけ、呼び寄せる。
天才外科医同士、実力を認め合うふたり。しかし、神津が未知子に接触した狙いはそれだけではなかった。鍵を握るのは、大門未知子が所属し敬愛する「神原名医紹介所」所長・神原晶(岸部一徳)の存在……。
未知子は“師匠”と慕う神原とどう出会い、いかにして「ドクターX」になったのか。テレビドラマの中では、ふたりの過去がときおり走馬灯のように映し出されていたのだけれど、なかなか全体像を結ばなかった。そのあたりが、やっと鮮明に明かされる。この神原と未知子の物語が、本作最大のみどころだ。
ドラマ同様、映画も大門未知子のスーパードクターぶりを冒頭から見せつける。危篤状態だった某国大統領を奇蹟の手術で救う、その活躍は、さながら世界を股にかけるゴルゴ13。あちらは人を殺めるが、こちらは命を救うという決定的な違いはあるけれど、その本人の成功や栄光が、世に知られないところが共通点であり、なんともシビレる。
大学病院を派手なドレスとヒールで闊歩する爽快感、「いたしません!」とはっきりモノ言う大胆さ、手術が終わるとガムシロを一気飲みする豪快さ。にもかかわらず、あれほど稼ぎがいいのにたこ焼き、ラーメン、神原紹介所での麻雀やりながらの缶ビールと、妙にオヤジ趣味なところ。語りだしたらきりがない大門未知子の魅力も「集大成」にふさわしい。
米倉、岸部を中心に、仲間の麻酔科医役・内田有紀、大学病院の元院長・西田敏行、腹腔鏡手術の魔術師・勝村政信、憎めない医師・遠藤賢一、気弱ながら温かい医師・鈴木浩介、元医療インフルエンサー・田中圭、頑張り屋の看護師・今田美桜といったメンバーは、ドラマシリーズから変わらず出演。新入りの研修医としてなにわ男子の西畑大吾、未知子の過去を知る医大同期として綾野剛、未知子の医学生時代役に八木莉可子が、新たに加わった。
脚本の中園ミホ、監督の田村直己は、まさにドクターXを生み出した名コンビ。緊張感あふれるサスペンスフルなドラマとユーモラスなシーンのバランスは、やはり絶妙だ。
よく考えると、スゴ腕のフリーランスという存在は、同じ中園ミホが書いた『ハケンの品格』にも相通じるところがある。あまりにも有名になった「わたし、失敗しないので」という決めゼリフ、これを聞くたびに水戸黄門の印籠シーンみたいな痛快気分を味わうけれど、でもそれは、大門未知子の“努力”と“責任感”あってのセリフなのだということを、本作はひしひしと感じさせてくれる。
神原名医紹介所のかわいい2匹の看板猫につけられた名前は、医者が主人公のアメリカのドラマ『ベン・ケーシー』『外科医ギャノン』からとっているし、大学の医局を鋭く描いた『白い巨塔』の教授回診シーンもパロってみせる。医師免許についてのせりふは、『ブラックジャック』を思い起こさせる。そんな遊び心を散りばめながらも、ハイテクな医療機器を駆使して神の手のような超人技でメスをふるう手術シーンの迫力は、ドクターものの作品のなかでも明らかにトップクオリティだ。
エンドクレジットで、西田敏行さんへの献辞が捧げられる。おとぼけ演技、一瞬みせる『アウトレイジ』の親分のような迫力、すごい役者さんだった。
文=坂口英明(ぴあ編集部)
(C)2024「劇場版ドクターX」製作委員会
11/18 12:00
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