玉屋2060%(Wienners)×三原健司(フレデリック) 対バンライブ直前インタビュー「実はすごい昔に1回だけ対バンしてるんです」

Text:小川智宏 Photo:かい

9月、10月に開催されるWiennersのツーマン企画『W Dutch 2024 -Wienners 2MAN SHOW-』。9月26日に梅田CLUB QUATTROで行われる大阪公演で彼らと対バンするのがフレデリックだ。かたやハードコアシーンから浮上して果敢に挑戦し続けるWiennersと、かたや踊れるビートとキャッチーなメロディの中に潜むマニアックでストレンジな音楽性で中毒者を生み出し続けるフレデリック。交わりそうで交わってこなかった2組が今回対バンに至った経緯とは? 知られざるミッシングリンクを辿るべく、玉屋2060%(Wienners)と三原健司(フレデリック)、両フロントマンによる対談を実施した。

――Wiennersのツーマン企画『W Dutch 2024 -Wienners 2MAN SHOW-』大阪公演で対バンが実現したわけですが、フレデリックとの組み合わせはありそうでなかったなと。

玉屋 ずっと対バンしたかったんですよ。フェスとかで一緒になって一瞬話したりはあったんですけど、ライブハウスでやる機会が全然なかったので。でも実はすごい昔に1回だけ対バンしてるんです。まだ「オドループ」とかが出る前。

三原 そのときはまだデビュー前で、2013年とかやったと思うんです。水戸でやったんですけど、「Wiennersとやれんねや」って思ってました。「SCHOOL YOUTH(玉屋が以前やっていたバンド)の人だ!」って。

三原健司(フレデリック)

玉屋 マジで? それを知ってたのはヤバいっすね。

三原 うち、双子の上に姉がふたりいるんですけど、その2番目の姉がパンクスなんですよ。

玉屋 そうなんだ!

三原 それでライブハウスによく行ってて、弟の康司もよくそこに行ってたんですよ。それでハードコアのバンドを組んでたりしたこともあって。だからSCHOOL YOUTHとも実は同じ界隈にいたというか。だから対バンしたときはその界隈にいた人たちと一緒にやれてる不思議もあったんですけど、なんていうのかな、その界隈から圧倒的にポップなメロディでシーンを切り裂いていってる感じっていうのが僕にとっては結構衝撃的で。ライブを観ていても交わるのか交わらないのか分からないというかWiennersっぽいバンドは現れないだろうなって。それは今も思ってるんですけど。

玉屋 ああー。

三原 自分たちもそこを目指してバンドをやっているので、そういう理想の位置にいる人たちだなって。

――そう考えると、どこかで交わっていてもおかしくなかったけど、なぜか交わらなかった2バンドなのかもしれないですね。

玉屋 たぶん僕ら、初めてやったときとかはすげえイヤなやつだったんですよ。

三原 めっちゃ怖かったですよ(笑)。

玉屋 昔は虚勢張ってた部分もあったと思うので。そのときって話してないですよね?

三原 話してないですね。なんか、楽屋でもずっと自分たちのバンドだけでいる、みたいな感じでした。僕らだけじゃなくて、Wiennersに話しかけてる人はほぼいなかった。

玉屋 でもたぶん、そうしながら話しかけてくれるのをずっと待ってたんですよ(笑)。自分からは絶対行くもんかとか思ってるけど、話しかけてもらいたいっていう気持ちもあった。それは当時いたシーンがシーンだったんで、舐められちゃいけないっていうのがあったんです。だから対バンと仲良くするみたいなのが一切なくて。リハから「は?」みたいな感じで来ちゃってたから、今のシーンになじむのが遅れたのかもしれない。

玉屋2060%(Wienners)

――その当時から比べると、玉屋さんはだいぶ変わりましたよね。

玉屋 めっちゃ変わりましたよ。フレンドリーになったと思います。

三原 前に武道館で『ONAKAMA』っていう、04 Limited Sazabys、THE ORAL CIGARETTES、BLUE ENCOUNTのイベントがあったときに思いました。玉屋さん、楽屋挨拶に来てたじゃないですか。

玉屋 ああ、行きましたよ。

三原 そんなんする人なんやって(笑)。パッと観てサッと帰るみたいなイメージだったんで。

玉屋 本当はそれに憧れてるんですよ。かっこいいじゃないですか、スッといなくなるみたいな。でもせっかく行ったんだから、誰かと「来たよ」みたいなことをしないともったいなくて帰れない(笑)。でも昔は、ライブに行くことすらしなかったと思います。盛り上がってるのが悔しいから観れなかった。でも今は素直に「ここがすごいな」っていうのを思えるから。

三原 ふと思い出したんですけど、2014年くらいにTHE ORAL CIGARETTESとツアー回ってたじゃないですか。4バンドくらいで。

玉屋 そう、2回くらいやったんですよね。オーラルが呼んでくれて。まったく接点はなかったんですけど。「THE ORAL CIGARETTESっていうバンドからツアーに誘ってもらってる」って聞いて、それだったらということで。そしたらめちゃくちゃいい人たちだったし、現場でやっている感じもあるし、すごいなって。

三原 実は、今までWiennersと一緒にやる機会がなかったのはそれもあるんですよ。うち、オーラルと事務所が一緒で、同じ時期に入ってるんです。やっぱりそういうバンドとは追いつけ追い越せみたいなことになるじゃないですか。だからお互いライバル視していたというか、同じ動きはしたくないっていうのがあって。でもお互いの動きはチェックして分かってるんで、「Wienners取られた!」って。オーラルがいろいろなことをやってる中で、そこが一番悔しかった(笑)。

玉屋 はははは(笑)! でもその、ライバルをずっとチェックしちゃう感じも分かります。で、絶対に同じ感じにはしたくないっていうのも。

――フレデリックは今度ついにオーラルとツーマンをやるんですよ。

三原 そうなんですよ。

玉屋 うわ、今の話を聞くと感慨深い。どういう経緯でやることになったんですか?

三原 まあ、今言ったように、がっつり喧嘩したとかはないんですけど、なんとなくお互いに意識してちょっと避けてるみたいなのがずっと続いてたんです。事務所のイベントとかで一緒にやることはあったんですけど、そういうイベントって自分たちの現在地がリアルに出ちゃうから「悔しい」しかなくて。だからツーマンはずっと避けてたんですけど、今、デビュー10周年のタイミングになって、お互い目指してる方向性とかも全然違うし、そもそもの自分たちがどう生きていきたいかみたいなフェーズに入っていってるわけで、そこで「今のオーラル見てみたいな」って素直に思った瞬間があったんで。それでツーマンやりたいなと思ったんです。

――10年っていう時間もあるだろうし、歳を重ねたってのもあるだろうし、自分たちのやるべきこととかスタイルみたいなのがちゃんと見えたっていうのもあるでしょうけど、若いときにあった界隈感とか派閥みたいなものがどんどんなくなってきている感じがしていて。それはWiennersもそうだと思うんですよ。

玉屋 うん、そうですね。唯一そこでグダグダ言ってるのは忘れらんねえよの柴田(隆浩)だけ(笑)。もう、ずーっと言ってる。そうやって怒れるバイタリティはすごいと思うんですよね。

三原 でもそういう感覚が一番大事な気もするんですよね。10周年ぐらいがなんかちょうど難しい立ち位置だと思うんですよ。「あのバンドは大丈夫でしょう」になったときが一番ヤバいと思う。フェスでも「あのバンドはたぶん埋まってるやろうから行かなくていいかな」ってみんなが思ってる感じになってしまうと。やっぱり興味はずっと引き続けたいなって。

玉屋 ああ。それでいうと僕らは最近まではライブを必死にやりすぎていたところがあって。でも結局楽しまないとなって思うようになったんです。それでこういう社交性が出てきたっていうのもある。もともと音楽が好きで、音楽で感動したくてやっていたのに、なんか気づいたらライブやって必死になって、終わってみても別に感動してないな、みたいな感じで。コロナがあったのが良くも悪くもきっかけになったんですよ。それまでライブで盛り上げなきゃいけないみたいな感じで思ってたけど、コロナになって盛り上げなくていいってなったら、めちゃくちゃ気持ちよかったんです。

三原 ああ。

玉屋 無駄な動きみたいなものをなくなって音楽に集中できるようになったので、これは楽しいぞ、みたいな。そこからなんかちょっとずつ楽しめるようになってきた。今ではなんでもありみたいな感じになって、ギターを弾かない曲ができたりするようになりましたからね。

――フレデリックの場合は、コロナ禍を経てどんな変化がありました?

三原 僕らはコロナ以降にライブのスタイルをガッツリ変えて、今はめっちゃ盛り上げる感じになってるんです。その前は、BPMは速いけど、そんなに煽ったりするような感じではなくて、クールにダンスミュージックを作っていきたいタイプだったんですよ。でもコロナ禍でそれが完全にリセットされて、「じゃあ何やってもいいやん」みたいな。ライブって、お客さんからもらえる楽しみもあるんですけど、実際、リハーサルでやってるときが一番ミュージシャンらしい楽しさがあるじゃないですか。

玉屋 分かる!

三原 コロナのときはオンラインライブをずっとやってたんですけど、オンラインライブってその感覚があってめちゃくちゃいいなと思ってたんです。でもそこからライブハウスに戻ってきましたってなったときに、そこでいつも通りのフレデリックが戻ってくるのがなんかダサいなって思ったんです。今まで通りにクールにやってるバンドとしてずっとい続けるっていうのを逆手に取りたいと思って、スタンスが変わっていった。

玉屋 Wiennersも、ちょっとずつだけどそうやってスタンスを変えていくというのがあって。今でこそこうやってオープンにライブやってるけど、今まであまりにもオーバーグラウンドっていうものを知らなすぎたから、お客さんを盛り上げる行為をダサいと思ってしまっていて。みんなで手拍子しましょうとか、そういうのは嫌だと思ってたんです。当時のマネージャーには「ここで手拍子したら盛り上がるからやってよ」って言われてたけど、絶対やらなかった。でもふと、「なんでやれって言われるんだろうな」って考えて。結局盛り上がっていないからやれよって言われているわけで、やっぱり曲が伝わってないからなんだなってすごく思ったんです。そう考えると手拍子を煽るのも説明のひとつなんだな、みたいな。

三原 ああ。

玉屋 まず興味を持ってもらうために、「ここでこういうふうにやったら楽しいですよ」みたいなことを伝えないといけないのに、俺はずっと説明してこなかったなって思って。なるほど、ずっとみんなが「もっと分かりやすくしろ」って言ってたのは、根本を変えろっていうことじゃなくて、この音楽を説明しろってことだったんだなって思ったんです。だから絶対に4つ打ちはやらなかったけどやるようになったり、ライブで手拍子を求めるところを作ったり。でも「手拍子」っていうのはダサいから「リズムください」って言うみたいな謎のこだわりはあるんだけど(笑)。そうやって、みんな必死に自分たちの音楽を説明して伝えてるんだなって思ったら、それまでダサいって思ってたバンドの見方も一気に変わって、自分たちのライブのスタンスも変わっていったんです。

――なるほど。

玉屋 もともとを辿ると、自分たちはパンク、ハードコアのシーンにいたけど、そこからなぜ抜けたかといったら……これはパンクの大好きなところでもあるし、大嫌いなところでもあるんですけど、「分かるやつだけに分かればいい」みたいなスタンスが蔓延しているのがめちゃくちゃ腹立ったんですよ。政権批判しているようなバンドが10人のお客さんの前でそれ言っても国は動かないよって単純に思っちゃうんですよ。そういうのにムカついて、そういうところに「ざまあみろ」ってやりたいから上に行こうと思ったんです。なのに「手拍子やるの嫌だ」とか言ってるのはなんか違うし、それこそ俺が「分かる人に分かればいい」ってなってたなって。それこそフレデリックとかは何年もそこをやってきたバンドだから、観ていると楽しいというか、学んでいる感じもあるんですよね。

三原 僕らも、もともとはBPMもまったく速くなかったんですよ。でもメジャーに上がっていく上で、ちゃんとフレデリックの色のまま売れたいと思って、当時のマネージャーとかと話をしている中で、「今はフレデリックの色がすごく濃いから、それをちょっと薄めていくことでメジャーのシーンと重なってくる部分がある」みたいな話になって。その頃ちょうどKANA-BOONとかKEYTALKが出てきた時期だったんで、あれにフレデリックの色を混ぜたらどうなるんやろっていうので、実験的に作ったのが「オドループ」だったんです。そこから自分たちの軸を作っていった。

玉屋 今の話し方で面白かったのが、普通だったら「フレデリックにこれを混ぜてみたらどうなるんだろう」っていう話し方になるんだけど、逆に「ここにフレデリックを混ぜてみたらどうなるのか」って言っていて。たぶん無意識だと思うんですけど、そういう発想なんだなと思った。

三原 でもWiennersもそっち側じゃないですか?

玉屋 そうかもしれない。この培養液に自分たちを垂らしてみたらどうなるんだろう、みたいな。最近はそれが面白く思えているんですけど、それは楽曲提供をやったのが大きいかもしれない。自分では恥ずかしくてやれなかったことも、楽曲提供だと自分も歌うわけではないから、いい意味で恥ずかしくなくできる。そこから「やっぱり自分でもやりたいな」って思って、どんどん還元されてくるところもあるし。最近は好き勝手作れていますね。でもキャッチーなものは昔から好きだから、結局ポップでキャッチーになるっていう。

――フレデリックも、康司くんから出てくるものって結構変態的だと思うんですよ。

玉屋 うん、変態ですね。

――でもそれをフレデリックでやって、健司くんが歌うことでキャッチーになっていく。そのメカニズムがすごいなと思うんですよね。

玉屋 歌がうまいというのもあるけど、リズムがキャッチーなんですよね。去年出たミニアルバム『優游涵泳回遊録』の、「銀河の果てに連れ去って!」って曲あるじゃないですか。あれ、くっそキャッチーじゃないですか。

三原 ありがとうございます。

玉屋 あの曲、僕めっちゃ好きで。あれすごいですね。イントロのリフもすごいし、その後サビであのリフの上にボーカルが乗るじゃないですか。「きた!」って、本当にガッツポーズしました。そういうの大好きなんです。普通ああいうのをやろうとしたら、すでにあるリフに歌を乗せるんで、どこかでディスコードになって気持ち悪くなったりするじゃないですか。それがないんです。よく聴くと6音目が半音当たってるんですけど、それがちゃんと経過音として聴けるっていう……すげえマニアックな感じになってますけど(笑)。キャッチーさの中にもこれがあるからいいんだよって思う。でも、それを説明しなくてもみんなが好きっていうのが一番すごいんですよね。

――それって計算?

三原 いや、今気づきました(笑)。あとで「そうやったらしいよ」って言っときます。

――そういう意味では実は2バンドとも近いところがあるように思うんです。裏側にはすごくマニアックで変態的なところがあるけど、でもあくまでキャッチーなところで戦っているっていう。だからこのツーマンはすごく面白いことになるんじゃないかと思います。

玉屋 どうなるのか、めっちゃ楽しみですね。

――フレデリックは今年ずっと対バンツアーをやってきたし、ツーマンをたくさんやってきていますよね。

三原 ツーマンが一番好きなんですよね。お互いのことをめちゃくちゃよく知れるから。

玉屋 面白いですよね。濃くできるから。ツーマンだとしっかりと今日だけのライブができるっていうか。ワンマンだと自分たちが見せたいものを見せるって感じですけど、対バンだと予測もしなかった方向にライブが転がっていったりするんです。でもそれが4バンド、5バンドになってくると、今日だけのライブになったとしても、そこに自分たちのバンドが関与してない瞬間も生まれたりするじゃないですか。でも2バンドだったら絶対に関与せざるを得ない。そこがめっちゃ面白いです。

三原 あと、ツーマンをやるとその先が楽しみになるんですよね。その日がきっかけになるというか。僕ら、初めましての人でも誘ってもらったら受けたりするんですよ。全然音楽を知らなかったとしてもそこで関係性が生まれるみたいなことがあるし。

玉屋 それは僕らも同じ。関係性がまったくなくても、とりあえず1回声かける。声かけてみてダメだったとしても、1回声かけたことで向こうも覚えてくれるかもしれないから。フレデリックもまさにそうですよ。1回声かけてみようと思って声かけたらやってくれたんで。

三原 そりゃやりますよ(笑)。本当に楽しみですね。

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<ライブ情報>
『W Dutch 2024 -Wienners 2MAN SHOW-』

9月26日(木) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
出演:Wienners/フレデリック

10月2日(水) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
出演:Wienners/キュウソネコカミ

【チケット情報】
料金:4,500円
※別途ドリンク代必要
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2452486

<リリース情報>
■Wienners
New Single「TOKYO HOLI」(作詞・作曲:玉屋2060%)

配信中

【収録曲】
M1. TOKYO HOLI
M2. おどれおんどれ

Wienners「TOKYO HOLI」MV

配信リンク:
https://wienners.lnk.to/TOKYOHOLI

■フレデリック
「Happiness」

配信中

フレデリック「Happiness」MV

配信リンク:
https://a-sketch-inc.lnk.to/frederic_happiness

関連リンク

Wienners公式サイト:
https://wienners.net

フレデリック公式サイト:
https://frederic-official.com/

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