『ベル・エポック―美しき時代』10月5日から パリが最も華やいだ時代を絵画、工芸、文学、モードなどから重層的に紹介

19世紀末から1914年頃まで、パリが芸術的に最も華やいだ時代「ベル・エポック」に焦点をあてて、美術、工芸、舞台、音楽、文学、モード、科学など、様々なジャンルで花開いた文化を紹介する展覧会が、東京・港区のパナソニック汐留美術館で、10月5日(土)から12月15日(日)まで開催される。

1870年代初頭、普仏戦争と「パリ・コミューン」という革命的な自治体による統治を経験したパリは、その後は第一次大戦勃発までの数十年にわたり、平和と政治的な安定を享受した。パリの都市景観を象徴するオペラ座やエッフェル塔といった建造物も、この時期に完成したもの。市内には大小様々な劇場が誕生し、またモンマルトルの歓楽街には、キャバレー、ダンスホール、カフェ・コンセールが軒をつらねた。こうした娯楽施設の告知のためにポスター芸術も興隆し、ブルジョワから庶民まで、様々な層の人々が舞台、音楽、文学、モードなどをそれぞれに楽しんだ。

同展の大きな特色は、この「古き良き時代」の賑わいを伝える展示品が実に多彩に並ぶこと。当時のパリの暮らしを伝える絵画をはじめ、人々が身にまとった衣装や装身具、自宅を飾ったガレのガラス作品やラリックの宝飾品などアール・ヌーヴォーの工芸品、ロートレックやシェレのポスター、ボードレールやヴェルレーヌなどの詩人の初版本、人々が蒐集した稀覯本などが、総合芸術が花開いたパリの文化の繁栄や活気を鮮明に伝えてくれる。

ジュール・シェレ《ムーラン・ルージュ》1889年 デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵 © Christopher Fay

展示の中核をなすのは、大手通信企業の創設者デイヴィッド・E.ワイズマンと、弁護士で慈善事業家でもあるジャクリーヌ・E .マイケル夫妻のコレクション。ベル・エポック期にモンマルトルで活躍した若い芸術家の前衛的な作品を積極的に収集したことで知られる夫妻の貴重なコレクションが日本で公開されるのは、今回が初となる。

シャルル・モラン《ロイ・フラー(黄色の衣装)》1895年頃 デイヴィッド・E.ワイズマン&ジャクリーヌ・E.マイケル蔵 © Stéphane Pons

同展でもうひとつ興味深いのは、この時代に社会的自立を目指して活躍した女性たちにも注目していること。印象派のメアリー・カサットや、モデルから画家となったシュザンヌ・ヴァラドン、女優のサラ・ベルナールといった芸術分野以外にも、ノーベル賞を受賞した物理学者のマリー・キュリーなどにも目配りし、広範なジャンルからベル・エポックという時代に重層的に光をあてた印象深い展覧会となっている。

<開催概要>
『ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に』

会期:2024年10月5日(土)~ 12月15日(日)
会場:パナソニック汐留美術館
時間:10:00~18:00、11月1日(金)、22日(金)、29日(金)、12月6日(金)、13日(金)、14日(土)は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:水曜(12月11日は開館)
料金:一般1,200円、65歳以上1,100円、大高700円

公式サイト:
https://panasonic.co.jp/ew/museum/

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