若手の経験と優勝の二兎を追うラグビー日本代表、アサヒスーパードライPNCプールBを1位突破!
エディー・ジョーンズHCはどこまでも貪欲である。若手の経験と優勝。どちらか一方だけでは満足しない。あくまで『アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ 2024』で二兎を追う。ラグビー日本代表は9月7日・熊谷スポーツ文化公園 ラグビー場にて41-24でアメリカ代表を41-24で撃破、プールB1位突破を決めた。
45分、22mラインを超えた地点からスピードと巧みなコース取りで4人をかわして独走トライを決めるなど、文句なしのパフォーマンスでプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されたディラン・ライリーは本拠地のファンに喜びを語った。
「カナダから帰国して、この暑さの中戦うことは非常にタフだったが、ホームのファンの前でプレーできてうれしく思う。アメリカ戦に向けて自分たちもいい準備をしてきたので、最後いい結果を得られてよかった。FWパックが大きい相手なので、先制パンチを食らわすことと、相手ボールの時にワークレートを高くして動き続けることがキーポイントだった」
指揮官もライリーを絶賛した。
「カナダ戦でも13番にもかかわらずキャリー10回、パス10回という活躍をしてくれた。課題のひとつとして、クオリティの高いアクションを増やしてほしい。13番ながらスピードはWTBのようでストレングスはCTB、ディフェンスの面でもリーダーシップを発揮するなど希有な存在と言える。もっと貪欲に試合に絡んでいくかを考えながらプレーしてほしい。ライリーは世界で一番の13番になる可能性を持っていると思う」
エディー・ジョーンズHCはSH藤原忍&SO李承信のハーフ団も高評価した。
「『PNC』2試合を終えて、我々が望んだ結果は得られている。もちろんまだまだ修正しなければいけない点はたくさんあるし、課題も山積みだが、今回の試合は 9 番の藤原と 10 番の李が素晴らしい働きをして、我々を前へ進めてくれた。藤原は日本の9番にふさわしい。トランジションの早いSH。昨夜のジャージ授与式に参加してもらった堀越(正巳)さんも小さいがパスが速く、ラック周りでうまい。藤原にも同じように取り組んでほしい。李が10番と15番の両方でプレーできるのも大きい」
若いハーフ団もアメリカ戦で自信を深めた。
藤原「(李とのコンビについて)フィットしてきているというか、承信にも助けられている部分がある。練習の映像や試合を見たり、常にふたりでいる時間が増えていくことによって、よくなってきていると思う。よく声をかけてくれるし、本当にやりやすい。
(早い仕掛けやキックについて)エディーさんからも自分で行けるという判断だったら『自信を持って行け』と言ってもらえている。みんなも僕が行くと決めたら、みんなも行くというふうに決まっていたので。チャンスだったら行く、セットされていたらキックという判断をした。ほかのBKからも『行け』という声をかけてもらう場面もあった。
(堀越からのアドバイスは)プレゼンテーションが終わってから堀越さんには『9番はFWと一緒のように戦わないと、今のチームは負ける』と言われて共感した。
球出しのところは結構集中して、コミュニケーションを取って何をやりたいか、できるようになってきているけど、今どういう状況なのか、そういう判断もできるようになったら試合の流れも変えられると思う。相手はひとりしかいないのに、慌てて放ってしまったり、落ち着かせるところで落ち着かないと。僕が急いでしまうと、周りにも影響しちゃうので、そこはしっかりとオーガナイズしてやっていかないといけない」
李「(FB起用について)事前には聞いていなかった。ただ試合始まる前のロッカーでハル(立川理道)さんに『10番で入るのか、12番で入るのか』を聞いていて、基本12番の話だったけど、山沢(拓也)さんが抜けた時に『15番もあるかもよ』と聞いていたので、心の準備はしていた。ディフェンスのポジショニングや10番とコネクションしながらアウトサイドをアタックしていくところは本当に(コベルコ)神戸(スティーラーズ)での経験が生きた。今日15番に入ってみて、悪い手応えではなかった。
(キックについて)練習からすごくいい手応えでできている。プレースキックも本当に自分のルーティンにフォーカスできている。90秒から60秒になって、そこもアジャストできていたので、特にプレッシャーを感じることはなかった。トライした後の流れをしっかり自分の中で作ってできている。
(藤原とのコンビについて)合宿中も常にセットでいるし、ルーミー(同部屋の選手)でもあり、しっかりコミュニケーションを取れている。スペースがあったら仕掛けるというのが忍さんの強みだと思う、自分もスペースがあったら仕掛けるだろうとわかっている部分もあるので、ふたりでもっと成長できたらなと思う。
超速ラグビーの中でキックの使い方やモメンタム、コントロールのところは本当に自分たちのスピードアタックにフォーカスしてやってきた。80分どう勝ち切るかというところが自分もチームもクリアになってきているので、次のサモア戦もしっかりコントロールしたい」
ジョーンズHCはチームをまとめる立川への信頼を口にした。
「ハルを招集して本当に心強い。ハルが入ってゲームをコントロールして、李が戦略的なキックを使い、勝利につながったと思う。若いチームにとって大事なのは勝利するための局面をふたつ三つと重ねていくこと。ハルがひとつにまとめてくれた。これによって次のステージに進むことができたし、それぞれの局面に順応することができた。最後の20分プレッシャーがかかる中、アタックをし続けたことも評価をしたい。今日はフィニッシャーがみないい仕事をしてくれた」
アメリカにトライを返されて31-17と点差を詰められた52分に途中出場した立川主将はチームに落ち着きをもたらすとともに、66分にはパスダミーでゲインし、オフロードパスからライリーにつなぎ、WTBマロ・ツイタマのとどめのトライを呼び込んだ。主将は次のように試合を振り返った。
「トライを取られた後のハドルで『シンプルにやることが一番大事』だと伝えた。ああいうプレッシャーがかかる場面で一番大事なのは何をしなければいけないのか、全員が同じ絵を見ること。シンプルなメッセージを伝えた。フィニッシャーで入った時、どうアダプトし、どうエナジーを入れるかが大事。80分間出た選手がうまく対応してくれた。
(マロのトライを演出するパスについて)前半1回やっていたのを見て、やってみた。自分の前にスペースがあり、うまくいってよかった」
ジョーンズHCは課題にも目を向けた。
「この試合がどう進むのかシミュレーションした。カナダ戦ではボールを動かしながら、試合を進めわれたが、あのような試合をした後というのは、得てして同じようなことをしてしまう。今日は相手にボールを簡単に渡しすぎてしまったシーンが多く見られた。しかし、選手たちがそういう状況の中でもアダプトし、ボールが滑る中順応できたといったところは評価をしたい」
さらにサモア戦に向けて、モールのディフェンスを修正すると続けた。
「今後の課題についてはモールディフェンスが挙げられる。ここに関しては相手に簡単に失点を許していた。次回の試合へ、ここをキーポイントとして取り組んでいきたい」
『アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ 2024』は今週末よりファイナルシリーズへ突入。9月14日(土)・秩父宮ラグビー場にて5位決定戦・トンガ代表×カナダ代表、準決勝・フィジー代表×アメリカ代表、15日(日)・秩父宮にて準決勝・日本代表×サモア代表、21日(土)・東大阪市花園ラグビー場にて3位決定戦、決勝がキックオフ。チケット発売中。日本×サモアの模様はBS日テレにて生中継。
取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)
パシフィックネーションズカップ2024のチケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2453265
09/09 18:00
ぴあ