佐々木(a flood of circle)×ヤマグチ(SIX LOUNGE)×サイトウ(w.o.d.)「本音の部分をライブでがっつり出せる3バンドですね」
Text:荒金良介 Photo:小杉歩
a flood of circle、SIX LOUNGE、w.o.d.によるスリーマンスプリットツアー『BAND BOOM』が9月に開催(愛知、大阪、大分の3カ所)されることになった。世代は微妙に異なる3バンドだが、ロックという名の下に共鳴し合う“ありそうでなかった”組み合わせに興奮せずにはいられない。今回はバンドを代表してフロントマンである佐々木亮介(vo/g、a flood of circle)、ヤマグチユウモリ(g/vo、SIX LOUNGE)、サイトウタクヤ(vo/g、w.o.d.)の3人に集まってもらい、お互いの出会いから音楽的な魅力、今ツアーに秘めた思いまで赤裸々に語ってもらった。
――この3バンドの出会いというと?
佐々木亮介 サイトウは絶対に対バンだよね?
サイトウタクヤ そうですね。
佐々木 w.o.d.が今のように人気者ではなく、周りの人から教えてもらったんですよ。で、下北沢SHELTERでカウントダウンイベント(2018年12月31日、『AFOC x SHELTER presents「ROCK’N’ROLL NEW SCHOOL <’18-’19 Count Down Party!!!>」』)をやったときに呼んだんですよ。年末だったから、みんな酔っ払って。
サイトウ a flood of circleの演奏中がカウントダウンのタイミングで、もうベロベロでステージの横からにらんでいるという(笑)。
佐々木 「俺、かましますよ!」という感じで来たから、自分のホワイトファルコンを貸したんですよ。そしたら「自分、アドリブとかそういうのは……」みたいな空気を出して。それでチューだけして終わるという。
サイトウ そうですねぇ。その節は申し訳ありませんでした(笑)。
佐々木 大きくなったなぁ!
サイトウ ははははは。
佐々木 その後、w.o.d.のツアーで金沢に呼んでくれたんですよ。夜中に飲みに行ったら、楽器が置いてあるバーで、そこでメンバー3人でNIRVANA(ニルヴァーナ)のコピーをやってくれたんですよ。そんなバンドもいないなと。
サイトウ 佐々木さんが言っていたのは、俺はNIRVANA大好きだから何でも歌えるけど、ベースのKen(w.o.d.)が頑張って曲を覚えている姿を見て、「Ken、ほんとにいい奴だな!」って(笑)。
――佐々木さんから見たSIX LOUNGEの印象は?
佐々木 今回も行きますけど、坪井さん(大分のライブハウスの店長)という九州の厄介者がいて、ライブハウス同志の醜い争いがずっとあって……これは書いてください! それでも意地を張って、自分の店をやっているんですよ。その坪井さんがある日キラキラした顔でSIX LOUNGEのことを教えてくれて。だから、高校生ぐらいの頃から知っていました。初めて会ったのはいつかな?
ヤマグチユウモリ 大分のイベントのときだった気がします。
佐々木 坪井さんがやっている『PIRATE SHIP』(トップスのライブイベント)でライブを観て、これがSIX LOUNGEなんだ!って。歌がすごいから、それにびっくりして。でも歌詞はドラム(ナガマツシンタロウ)が書いているし、珍しいパターンだなと。高校からの友達なんだろうけど、3人がベタベタしていなくて、それもいいなと。
――では、サイトウさんから見た2バンドの印象は?
サイトウ a flood of circleは学生の頃から知っていて、すごくかっこいいバンドやなと。その頃はまさか対バンするとは夢にも思ってなかったですね。一度、弾き語りを福岡で佐々木さんとふたりでやって、それがめちゃくちゃ楽しかったんですよ。で、たまたまそのとき読んでいた本が一緒で、PRIMAL SCREAM(プライマルスクリーム)の『ボビー・ギレスピー自伝』でそこでも話が合ったから。
佐々木 そうそう! ボビーの写真が超カワイイんだよね。
サイトウ 佐々木さんのオタクっぽさにも共感しました。先輩ですけど、そのときに友達になれた気がして。SIX LOUNGEに関しては全国各地にかっこいいバンドはいるけど、九州代表・SIX LOUNGEみたいな。しかも俺らより若くて……どんだけ尖っている奴が来るんだろうと思ったら、めちゃくちゃいい奴らで(笑)。最初に対バンしたのは俺ら企画のツーマンかな?
ヤマグチ いや、僕らが先に呼んだんですよ、ツアーの宇都宮で。だから、わりと最近ですね。
サイトウ お互いに人見知りやから……
ヤマグチ そうっすよ!マジ感じ悪かったですもん。
サイトウ はははは。でもライブがかっこよかったから、俺らも誘わせてもらって。名古屋CLUB QUATTROで中打ちしたときにやっと話せた感じで、それで仲良くなったのかな。その後に飲んだけど、ユウモリも(イワオ)リクもベロベロになって帰るし、こいつらなんやねんって(笑)。
――SIX LOUNGEから見た2バンドの印象は?
ヤマグチ a flood of circleは昔から好きですね。で、CLUB SPOT(大分のライブハウス)の店長がナベさん(渡邊一丘/a flood of circleのドラム)を紹介してくれると。それだけでテンションが上がりました。最初に対バンしたときも好きすぎて、佐々木さんには話しかけられなかったですね。
佐々木 そんな感じだっけ? (ヤマグチの)親父がやっているラーメン屋があって、そこでかまされたんですよ。「ウチの子は絶対に負けないんで」みたいなことを言われて。
ヤマグチ なんで親父がかますんだろう(笑)。親父は、音楽は矢沢永吉の話しかしないんですけど。a flood of circleのライブを観た後、佐々木さんの立ち姿がかっこいいと言ってました。
佐々木 良かった。親父にかませていたのかな(笑)。
――w.o.d.の方はいかがですか?
ヤマグチ w.o.d.は対バンツアーをやるときに、今までやったことがない人とやろうと。ちょっと取っ付きにくそうだけど……距離感が微妙な打ち上げを経て、仲良くなりました。音楽も人間も大好きですね。
――3バンドそれぞれの音楽的な魅力については?
サイトウ 2バンド(a flood of circle、SIX LOUNGE)とも声ですかね。それは俺が持っていないもので、もはや嫉妬すらしないくらいです。俺がNIRVANA好きな理由もカート・コバーンの声なんですよ。この時代に泥臭いロックンロールをやっていることもそうだし、有無を言わせぬ声の説得力がこの2バンドにはあるなと。
――佐々木さんはいかがですか?
佐々木 w.o.d.はアナログレコーディングだったり、どういう音で勝負するのか、そこにこだわりがあって。その次にどうするのかと思ったら、BOOM BOOM SATELLITES(ブンブンサテライツ)の中野さんに頼みたいと言っていて、めっちゃかますじゃん!って。自分では分かっていないかもしれないけど、すごいボーカルだと思うし、w.o.d.は90年代以降のオルタナ以降のロックに心の底から酔ったことがある人たちだから。蛸壷的にジャンルを狭くするんじゃなく、コード進行ひとつとっても何かやばいことをしたいという気持ちがいつも伝わってくるんですよ。サイトウは顔も声も好きだし(笑)、華もあるし、音楽へのこだわりもあって、奇跡のバランスだなと。SIX LOUNGEはもちろん歌が最高だし、「メリールー」のMVを観たときに最後のサビでBまで行くじゃん。あっ、坪井さんが言っていることはこういうことなんだなと。あそこでやられました。ユウモリの歌のすごさは九州というか、日本代表じゃない。
ヤマグチ いやいやっ!
佐々木 あと、シンタロウの歌詞のかまそうという気持ち(笑)。SIX LOUNGEはみんなかっこいい父ちゃん母ちゃんがいて、そういう人間パワーを感じますね。
――ユウモリくんは?
ヤマグチ a flood of circleの音楽は聴いてきたので、俺らの音楽にも含まれているというか。俺らはa flood of circleでもあるし、SIX LOUNGEでもあるんです(笑)。俺が作ったコード進行やメロディに対して、軽やかな4つ打ちをつけると、a flood of circleになるんですよ。好きなものが似ているのもあるかもしれないですね。一度、佐々木さんとAge Factory(エイジファクトリー)の(清水)英介さんが喋っているのを横で聞いていて、詳しすぎて、ついていけなくて。それから佐々木さんのことをクリエイティブだなと思うようになりました。
佐々木 ははははは。
ヤマグチ ロックスターでもあり、超作り手なんだなと。
――w.o.d.については?
ヤマグチ 音楽は最高にかっこいいし、向こうのオルタナ感を出しているけど、昔すぎないというか。すごくポップなわけではないのに、ポップに感じるんですよ。やっていることはめっちゃおっさんだけど、そういう風に聴こえなくて、今っぽいオシャレ感もある。若い人が聴いてもかっこいいと思えるものにしているところがすごいなと。
――今回の対談はギター/ボーカル同士の対談ということで、自分のポジションに対するこだわりを教えてもらえますか?
佐々木 最初はギターから始めて、歌はおまけみたいな感じだったんですよ。ギターは普通に弾けるけど、スペシャルなギタリストではないから。でもギターを持っている自分でいたいなと。ギターを持っていることが大事ですね。
サイトウ ギターって名前も全部かっこいいんですよ。「Fender」、「Gibson」、「Stratocaster」の文字の多さやば!って(笑)。超センスいいやんって。俺もギターを持って歌う人に憧れがあるし、このふたり(佐々木、ヤマグチ)から受けた影響で言うと、ギターを持って歌う姿がかっこいいから。だから、違うやり方で自分が自分のことをかっこいいと思えるギター/ボーカルになれたらいいなと。
ヤマグチ 個人的なド偏見で言えば、ギターを持って歌っている人が一番かっこいいなと。それに尽きるというか。斉藤和義、奥田民生、チバユウスケ、宮本浩次もいたなぁ。でもあの人に関してはギターを弾いていない方がかっこよくて。
佐々木 宮本さんもただギターを持ってる時間の方が長いもんね。で、突然ギターソロとか弾くからズルい!
ヤマグチ 佐々木さんがギターを持っている姿は、俺がカメラマンだったら、一番撮りたいですね。芸術です。サイトウさんはサイトウさんでキャラクターっぽくて、超似合っているから。そのままフィギュアにしても様になるし、家に飾りますよ。
サイトウ はははは、やめてよ。
――そして、今回スリーマンスプリットツアー『BAND BOOM』をやることになったきっかけは?
佐々木 共通のツアーマネージャーがいて、迫田さんが言い出したのかな。なぜやろうと思ったのか、その理由は聞いていないけど……悩んだ挙句、結局かますしかないでしょ!と思っているバンドたちかなと(笑)。
おっさんの人たちからはハードコアなロックンロールをシュガーコーティングしている奴らだし、若い人からしたらそれでもまだハードという印象を与えてしまうかもしれないけど、ナメんなよ!って振り切っている3バンドだと思っていて。迫田さんはその臭いをキャッチして、「一緒にやってみれば?」と言ってきたのかなと。
サイトウ 3バンドとも素直なロックバンドやと思うんですよね。いろいろ悩みながら、進んだり後退するけど、素直やからこれしかできへん!というバンドたちかなと。ライブは小手先がモロにバレる場所やし、本音の部分が見えると思うから。その本音の部分をライブでがっつり出せる3バンドですね。
ヤマグチ (この3バンドは)ライブがかっこいい!というだけで相当な共通点だと思うんですよ。ライブがかっこ悪いバンドはたくさんいるんで。
佐々木・サイトウ (苦笑)。
ヤマグチ ずっとやりたかったけど、言い出しっぺとしてできなそうな3バンドなので、それをやっとやらせてもらえる感じですね。
――今回のツアー場所の切り方も独特ですよね。東京がなくて、愛知、大阪、大分の3公演になります。唯一、SIX LOUNGEの地元・大分が含まれてますよね?
ヤマグチ 単純にa flood of circle、w.o.d.を大分に呼びたいなと。
佐々木 正直、そこも迫田さんが決めただけで、場所にこだわりはないんですよ。東京がないのはなぜなんですかね? まぁ深い意味はないと思います。
――ツアータイトル『BAND BOOM』について、”あいつらがバンドに興味なくなっても俺たち昔からずっとバンドブームなんですけどみたいな態度"というコンセプトがあるそうですが、これはどなたが付けたタイトルですか?
佐々木 ノリで付けちゃって、自分が言い出したんですよ。『BAND BOOM』のフォントのイメージはBLACK SABBATH(ブラックサバス)の『MASTER OF REALITY』、NIRVANAの『NEVERMIND』の波打つ文字のイメージがあったから。w.o.d.、SIX LOUNGEのデザイナーをやってくれている人がフライヤーも作ってくれて。言葉はダサくても、ロゴがかっこいいから、みんな騙されるかなと(笑)。
――佐々木さんの中で『BAND BOOM』という言葉に込めた思いは?
佐々木 ロックバンドのロックの部分を定義することがどんどん難しくなってきて……ブームじゃないと困るというか、ライブに来る人はみんなロックバンド好きでしょ? それって最高じゃん!って、その気持ちを肯定したいなと。
――曖昧になりつつあるロックを、この3バンドで再度提示したい気持ちもあります?
佐々木 うん、お前ら興味なくても、俺たちの中ではずっとバンドがバズってるんだよ!って。ほんとのことを言えば、これはパクリなんですよ。金属バットという漫才師が好きで、『漫才ブーム』というイベントをやっているんですよ。「漫才ブーム」、「バンドブーム」も昔っぽい言葉だけど、俺たちの間で流行っているかどうかが大事だから。それでパクリました。
――最後にツアーに向けて意気込みを。
サイトウ 最後は佐々木さんでいいですか?
佐々木 いやいや、そこまで意気込んでないから(笑)。
ヤマグチ 最初に言わせてください! 本当にウキウキしていて、ここ最近で一番楽しみにしているんですよ。仕上げていきます!(ガッツポーズを決める)
サイトウ ほんまに楽しみで、それでしかないというか。ライブをやるのも、ライブに行くのも、自分がめちゃくちゃワクワクする!めちゃくちゃ楽しみ!とか、衝動的なものだと思うから。何も考えずに遊びに行きます!(ガッツポーズを決める)
佐々木 二日酔いで今日は喋りすぎたかもしれない(笑)。もちろん俺もウキウキしているし、ライブは常にエネルギーが爆発している感じにしたいし……SIX LOUNGEの「スピード」という曲が好きなんだけど。
ヤマグチ (ライブで)やります!
佐々木 BPMとかじゃなく、ライブではスピードを感じるから。その中にいたいし、みんなをブームに巻き込めたらいいなと。(ガッツポーズを決める)
全員 はははははは。
<ツアー情報>
a flood of circle × SIX LOUNGE × w.o.d.『BAND BOOM』
9月25日(水) 名古屋・CLUB QUATTRO
9月26日(木) 大阪・GORILLA HALL
9月28日(土) 大分・T.O.P.S Bitts HALL
【チケット情報】
前売:5,000円(税込)
※ドリンク代別途必要
■愛知公演
https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2430983&rlsCd=001
■大阪/大分公演
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2452962
a flood of circle公式サイト:
http://www.afloodofcircle.com/
SIX LOUNGE公式サイト:
https://six-lounge.com/
w.o.d.公式サイト:
https://www.wodband.com/
イベント公式サイト:
https://vintage-rock.com/artists_events/bandboom/
09/06 18:00
ぴあ