人類初の核実験はどうやって描かれた? 『オッペンハイマー』217分におよぶ特典映像でその裏側を知る

今年3月に日本でも公開され、大ヒットを記録した映画『オッペンハイマー』の4K Ultra HD & Blu-ray、Blu-ray & DVDが、9月4日(水) に発売になる。本アイテムには合計約217分にもおよぶ豪華な特典映像が収録されており、本作を手がけたクリストファー・ノーラン監督の創作哲学や、その裏側を知ることができる。

本作は天才物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの半生を描いた作品で、彼が世界初の原子爆弾の開発に参加した「マンハッタン計画」のエピソードが中軸に据えられている。注目なのは、本作は第三者的な視点で描く“伝記映画”ではなく、オッペンハイマーの半生を観客が追体験し、彼が立ち会った“歴史が永遠に変わってしまった瞬間”に共に立ち会っているような描写が続くことだ。

CGを嫌っているわけではないが、可能であればどんな効果やエフェクトも実物を撮ろうとするノーラン監督は、人類初の核実験「トリニティ実験」の場面もデジタルの力に頼らずに撮影することを決めた。

特典映像には監督だけでなく、プロダクションデザイナー、リサーチャー、特殊効果、視覚効果のメンバーが登場し、撮影に向けた準備の過程や、取り組んだ課題が紹介される。実際に核爆弾を爆発させて撮影することはできない。さらにアングルを変えながら複数回は撮影する必要がある。

そこで彼らは核爆弾が設置された“トリニティ・サイト”をロケ現場に作り上げた。実際に30メートルあるタワーを建て、電柱が建っている場所や電線の張られ方も資料をもとに再現。リサーチャーは記録写真だけでなく、当時そこにいた人の証言も掘り起こし、機器の設置されていた場所や人が動く動線まで調べたという。

さらに爆発で起こる炎や光もカメラの前で作り出さなければならない。通常の映画は撮影が終わった後に視覚効果のメンバーが撮影された映像に効果を加えていくが、本作は撮影現場に視覚効果のスタッフも参加。爆発ひとつでもガソリン、マグネシウム、黒色火薬など複数の素材が持ち込まれ、それらが別々のタイミングで燃焼する緻密かつ壮大な作業が繰り返された。

劇場公開時には、その手法が具体的に公開されることはなかった“トリニティ実験”の場面。ブルーレイ発売のタイミングでついに“歴史を変えたあの日”がどのように表現されたのかが明らかになる。

また、ノーラン監督が信頼を寄せるIMAXフィルム撮影に関する映像も特典ディスクには収められている。『フィルムの革新:「オッペンハイマー」における65ミリ モノクロフィルム』は映画ファン垂涎の内容で、本作の撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマがフィルム撮影、IMAX撮影の利点、魅力を語るだけでなく、彼が本作のために65ミリの大判のモノクロフィルムの開発をコダック社に依頼する過程や、本作の現像を手がけたフォトケム社のメンバーの証言が登場する。

ちなみに本作はフィルムでの全仕上げ作業が終わった後に、デジタル版が作成されたが、特典映像にはフィルム版とデジタル版を同時にスクリーンに映して、熟練のスタッフがフィルム上映時の見え方、色味に合わせてデジタル版を1カットずつ手で調整していく場面がある。

間もなく発売になる4Kディスクやブルーレイはもちろんデジタルの映像だが、その基になっているのは、プロフェッショナルがギリギリまでフィルムのルック、味わいに近づけた“こだわりのデジタル映像”だ。自宅で繰り返し『オッペンハイマー』の深みのある映像を楽しんでほしい。

『オッペンハイマー』ジャケット

<リリース情報>
『オッペンハイマー』

2024年9月4日(水) デジタル販売開始 4K UHD、ブルーレイ&DVD発売
2024年9月25日(水) デジタルレンタル開始

※アウターケース(Oリング)仕様

【特典映像】
■現代の物語:メイキング・オブ・「オッペンハイマー」
1. 我は死なり
2. 先覚者たち
3. マンハッタン計画
4. 神は細部に宿る
5. この世界に生きる
6. 音楽は聴けるか?
7. 奇跡を起こす
■フィルムの革新:「オッペンハイマー」における65ミリモノクロフィルム
■ミート・ザ・プレス:「オッペンハイマー」Q&A
■戦争のない世界へ:オッペンハイマーと原子爆弾
■予告編集

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