国立劇場による入門公演「はじめての邦楽─箏の魅力─」と歌舞伎名作入門『夏祭浪花鑑』 文楽と観比べるチャンスも

8月31日(土)、東京・文京シビックホールにて、国立劇場による夏の邦楽公演が開催される。今回取り上げられるのは、箏。あまり邦楽を聴いたことがない人や初めて聴くという人にもおすすめの入門公演『はじめての邦楽─箏の魅力─』だ。
中世以前から続く雅楽でも弾かれ、現代でも新しく作曲されたり演奏技法が工夫されたりと、進化し続けている箏。この公演では、そんな箏の魅力を誰でも聴きやすい構成で紹介。まずは、「箏の弦は何本?」「どうやって弾くの?」といった基礎知識の解説からスタート、さらには箏の曲目の聴きどころ、演奏しながら歌う歌についての解説。その後、古典箏曲『夏の曲』、沢井忠夫作曲による現代邦楽『三つのパラフレーズ』という、響きの異なる2曲を鑑賞する。上演時間は90分と、親子での鑑賞にもぴったり。解説には英語の逐次通訳も付くという。お話と演奏は、古典・現代音楽ともに積極的に演奏活動を行う実力派演奏家の日原暢子と平田紀子。案内役には、邦楽に関わりの深い一家で育ち、幼少より箏の研鑽を積む鈴木福が登場する。

また9月1日(日) 〜25日(水) には新国立劇場 中劇場での歌舞伎名作入門『夏祭浪花鑑』(なつまつりなにわかがみ) の公演も控えている。
本格的な歌舞伎の名作をわかりやすい案内付きで鑑賞できる国立劇場の「歌舞伎名作入門」がスタートしたのは2021年のこと。4回目を迎える今年は、大坂の夏の情趣に満ちた義太夫狂言の人気作『夏祭浪花鑑』を、コンパクトな解説とともに上演する。延享2年(1745) 7月に大坂・竹本座で人形浄瑠璃として初演され、同年中に歌舞伎でも上演されるようになった本作。無頼の徒であったといわれる実在の人物・団七をモデルとする堺の魚売りが起こした事件を取り入れ、大坂の市井で様々な思いを胸に生きる人々の様子が描かれる。今回、片岡亀蔵による解説ののち上演されるのは、「住吉鳥居前」「釣船三婦内」「長町裏」という本作の中心をなす場面。また団七、徳兵衛、お辰という主要な役柄を勤める三人は、いずれも初役での挑戦だ。団七の坂東彦三郎、徳兵衛の坂東亀蔵はともに歯切れのよい口跡と、力強い演技に定評があり、兄弟ならではのイキの合った舞台に期待が。徳兵衛女房お辰を演じる片岡孝太郎は、上方の匂いとあだな風情に満ちた芝居で、義太夫狂言の味わいを引き出す。

国立劇場歌舞伎名作入門『夏祭浪花鑑』

今回の公演は、現代演劇の殿堂ともいえる新国立劇場 中劇場での開催。客席内に花道を特設、通常はオーケストラピットとなる部分にも舞台を設ける。特に「長町裏」における団七と義平次の泥まみれの立廻りは、客席最前列からの距離も近く、臨場感のある舞台を体感できる。

さらに9月7日(土) 〜22日(日) には、同じく新国立劇場の小劇場にて9月文楽鑑賞教室 / 社会人のための文楽鑑賞教室も実施、ここでも『夏祭浪花鑑』が上演される。『夏祭浪花鑑』は1745年に大坂・竹本座で人形浄瑠璃として初演され、間もなく歌舞伎に移されて人気演目となった作品。名作の醍醐味を、歌舞伎と文楽の両ジャンルで堪能できるのは、国立劇場ならでは、それぞれの魅力と違いを味わえる絶好の機会となる。

<公演情報>
国立劇場 第 209 回邦楽公演
『はじめての邦楽─箏の魅力─』

出演:
ご案内:鈴木福
演奏とお話:日原暢子 平田紀子

2024年8月31日(土) 11:00開演 / 15:00開演
会場:東京・文京シビックホール 小ホール

公式サイト:
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2024/6810/

歌舞伎名作入門『夏祭浪花鑑』

出演:
坂東彦三郎、坂東亀蔵、片岡孝太郎 ほか

2024年9月1日(日) 〜25日(水) 
会場:東京・新国立劇場 中劇場

公式サイト:
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2024/9/

文楽鑑賞教室

『伊達娘恋緋鹿子火の見櫓の段』
解説 文楽の魅力
『夏祭浪花鑑 釣船三婦内の段/長町裏の段』

2024年9月7日(土) 〜22日(日)
会場:東京・新国立劇場 小劇場

公式サイト:
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2024/6912/

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