綾野剛×豊川悦司ダブル主演『地面師たち』原作者・新庄耕のインタビューが到着

7月25日(木)に配信されるNetflixシリーズ『地面師たち』より、原作者・新庄耕のインタビューが到着した。

地面師とは、他人の土地の所有者になりすまして売却を持ちかけ、偽造書類を使って多額の代金を騙し取る不動産詐欺を行う集団のこと。地面師詐欺は、1980年代後半から1990年代初期にかけてのバブル期に、土地の価格が高騰した都市部で多発。その後、必要書類の電子化などで一旦鎮静化したが、東京オリンピック招致決定を機に土地の価格が上昇し、再び地面師事件が発生するようになった。

本作は、実在の地面師事件に着想を得た新庄の小説『地面師たち』を、映像ディレクターの大根仁が映画化。不動産売買をエサに巨額の金を騙し取る詐欺師集団〈地面師〉による前代未聞の事件を描く。ダブル主演として、綾野剛が地面師詐欺の道に踏み込む男・辻本拓海を、豊川悦司が巨額詐欺を率いる大物地面師・ハリソン山中を演じる。

新庄耕(原作)インタビュー

──2019年の12月に『地面師たち』の単行本が出版された直後から、映像化の打診がいくつもあったとか?

そうですね、ありがたいことに。私としては願ったり叶ったりというか、公言はしてなかったですけど、実は最初から映像化を意識していたところがありました。この作品は、エンターテインメント性をもたせたいと思って書いていたところがあって、実際──集英社では年に1回、各部署の「目玉」をメディアに向けて披露する機会があったのですが、そこに選んでいただいたときの反響が、すごかった。結局、何社からも、映像化したいという話をいただきました。

──そこに、大根監督の名前もあったのですか?

順番的なところは、ちょっと覚えてないんですけど、大根さんだけ、会社ではなく個人だったんですよね。編集部に、とつぜん電話が掛かってきたみたいで(笑)。もっとも、各社でコンペをすることは決まっていたので、企画書の提出をお願いしたみたいなんですけど、大根さんだけ、その企画書の内容が全然違いましたね。他の会社さんは、パワポで作ったよくある企画書というか、どれもビジュアルを中心にした感じだったんですけど、大根さんの企画書は、企画意図が文字でビッシリと書いてありました。

──どんなことが、書いてあったんですか?

それまで自分が、どのような作品を作ってきたのか、そこにどのような問題意識をいまかかえているか、そしてそれを乗り越えるために次は圧倒的に新しいものを作らなければならない、その題材を探しているところに、本屋で私の本に出会ったみたいなことが書かれてありました。とにかく、説得力ある熱い文章だったんです。それで、集英社の方々も、大根さんがいいんじゃないかっていう話になって、私もほぼ即決で、これは大根さんにお願いするのが一番だなって思ったんですよね。

──ちなみに、新庄さんご自身は、大根監督について、どんなイメージを持っていたのでしょう?

すべての作品を拝見していたわけではないですけど、『モテキ』とかは私も観ていて……あと、大根さんって、電気グルーヴのふたりと仲が良いじゃないですか。なので、ああいう感じの人というか、サブカル的というか、ポップな感じの方なのかなって思っていたところがありました(笑)。ただ、実際にお会いして話してみたら、いわゆる「作家」で、ご自身の世界観を完璧なまでに築き上げるタイプの監督なんだなって思いました。脚本を最初に見せていただいたときも、「気になるところがあれば遠慮なくおっしゃってください」みたいなことは言っていただいていたんですけど、これは全部お任せしたほうがいいんだろうなって思ったんですよね。

──というと?

私は、文字を使った小説という形で作品を作っていますけど、映像をやっている人が見ているイメージって、同じ脚本でもやっぱり全然違うじゃないですか。そこで映像の素人が中途半端に口を出して、大根さんが目指した世界観が濁るよりも、ここは全部お任せした方が作品のためになると思いました。大根さんは今回、脚本も書かれていますけど、それこそ、私が脚本を読んでイメージしきれなかったものが、実際に映像になって「ああ、こういうことだったのか」って腑に落ちたところが多々ありました。結果論かもしれませんが、あのときの判断は間違っていなかったと思っています。

──実際に完成した映像を観て、率直にどんな感想を持ちましたか?

いやあ、もうビックリしました(笑)。完全に予想を上回るものだったというか、トンデモない仕上がりだったので。私は全7話、ぶっつづけで拝見させていただいたのですが、体感としては2時間ぐらいの感覚だったというか、一本の映画を観ているような感覚で観ることができたんですよね。あまりこういうことは言わないほうがいいのかもしれないですけど、私、ドラマ形式って、実はあまり好きじゃないんです。連続ドラマって、身の丈に合ってない長さのものが、結構あるじゃないですか。まあ、多くは長すぎるような気がしていて。でも、今回に限っては、作品にピッタリの尺だったというか、ずっと興奮状態を維持しながら、最後まで観ることができましたね。

──特に印象に残っているシーンなどはありましたか?

やっぱり、ハリソンがある人物をウェスタンブーツで踏みつけるシーンですかね。あれは、原作者としても驚いたというか、「ハリソンは、ここまで狂気をはらんだ恐ろしい人間だったんだ……」って、改めて思ったところがありました(笑)。あと、最後のほうのシーンで、細かくは言わないですけど、群衆がバーッと捌けたあと、ハリソンがひとりただずんでいるシーンがあったじゃないですか。あれは、私が書きながらイメージしていたハリソン山中そのものでしたね。

──あのシーンは、ゾクゾクしますよね(笑)。「拓海」を演じた綾野剛さんは、いかがでしたか?

綾野さんに関しては、実は執筆している段階から、「もし映像化するなら、拓海は誰かな?」みたいなことを編集者と話していて、そのとき名前が挙がったのが綾野さんだったんです。なので、正直拓海そのものというか、私の妄想していた拓海のイメージを超えるほどすべて良かったのですが、ひとつ挙げるならば最後、拓海がハリソンに会う前に、港をちょっと歩いて、高架下の公園みたいなところをフラフラ歩くシーンがあるじゃないですか。あのシーンで、私はいちばん涙が出そうになったというか、拓海の心の揺れとか葛藤とか、それまでのすべてが、あのシーンに全部入っているような感じがしました。私は、あのシーンが、いちばん好きかもしれないです。

──なるほど。

あと印象に残ったのは、やっぱり音楽ですよね。音楽について、どうなるかなと思って観ていたら、まさかの石野卓球さんでした。作品世界の雰囲気と、本当によくマッチしていたじゃないですか。特に、毎回最初に流れるメインテーマは、良い意味で、もう耳から離れないですよね(笑)。しかも、それだけではなく、メロウな感じの音楽も、すごく良くて。ちょっとした会話のシーンとかも、卓球さんの音楽によって、すごく締まったものになっていたと思います。打ち合わせとか交渉、会議とか、実はテーブルトークが多い物語なので、映像化は難しいんじゃないかみたいな話もあったようなんですけど、大根さんは、最初から絶対大丈夫だと。大根さんには、もう最初から画と音楽が見えていたんでしょうね。そこは改めて、流石だなって思いました。

──では最後、改めて本作の見どころを。

「地面師って何?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますけど、まずは全然大丈夫です、と。誰が観てもワクワク、ドキドキ、ハラハラするような、一度観たら最後までイッキ見必至な作品です。ジェットコースターに乗ったかごとく、この疾走感をお楽しみください、といった感じでしょうか(笑)。

──ちなみに、新庄さんの最新刊『地面師たち ファイナル・ベッツ』は、今回のドラマのあとの話になるんですよね?

設定としては3、4年後ぐらいですかね。もちろん、ドラマを観てなくても楽しめるものにはなっているんですけど、今回のドラマシリーズを観てくれた人は、より一層楽しめるものになっていると思います。気になった方は、是非そちらも手に取ってみていただけたら嬉しいです。

<作品情報>
Netflixシリーズ『地面師たち』

Netflixにて世界独占配信中
全7話(一挙配信)

原作:新庄耕『地面師たち』(集英社文庫刊)
監督・脚本:大根仁

■出演
綾野剛、豊川悦司

北村一輝、小池栄子、ピエール瀧、染谷将太

松岡依都美、吉村界人、アントニー、松尾諭、駿河太郎、マキタスポーツ

池田エライザ、リリー・フランキー、山本耕史

Netflix作品ページ:
https://www.netflix.com/jp/title/81574118

「地面師たち ファイナル・ベッツ」
作家:新庄耕
出版者:集英社
発売中

(C)新庄耕/集英社

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