【レポート】NODA・MAP新作『正三角関係』で、松本潤が13年ぶりに舞台に立つ
野田秀樹が作・演出を務める「NODA・MAP」の新作『正三角関係』が、7月11日、東京芸術劇場プレイハウスでその幕を開けた。ドストエフスキーの傑作『カラマーゾフの兄弟』をモチーフにした、日本人花火師一家・唐松家を巡る法廷劇。そこで公演初日前夜に行われた、公開ゲネプロの模様をレポートする。
舞台はひと昔前の日本。花火師で長男の唐松富太郎は、父・唐松兵頭への尊属殺人の罪で裁判にかけられている。不知火(しらぬい)弁護人のもとには次男で物理学者の唐松威蕃(いわん)と三男で聖職者の唐松在良(ありよし)が、盟神探湯(くがたち)検事のもとには唐松家の番頭呉剛力(くれごうりき)がそれぞれ証人として出廷している。そして開廷。時折、空襲警報が鳴り響く中、それぞれの証言とともに過去の出来事が浮かび上がっていき……。
父殺しを巡る法廷劇ということで、派手な舞台装置や仕掛けは決して多くないが、粘着テープを多用した演出はなんともユニーク。テープで四角く囲えばそこは裁判所から戦いのリングとなり、そのテープをパッと切断すれば、一瞬にしてまたも裁判所へと戻る。またある時はテープレコーダーへと変貌し、役者の体にテープを絡めることで、そのレコーダーから聞こえる声の主を表現。NODA・MAPらしい疾走感を表すのはもちろん、演劇ならではの見立てのひとつとして、この身近なアイテムが非常にいい働きをしている。
物語の中心となる長男・富太郎役には、2011年の『あゝ、荒野』以来の舞台出演で、野田秀樹作品への参加は初となる松本潤。本作の前売り券は即完売(※全公演当日券の販売あり)となったが、松本への期待値の高さが、その大きな一因になっていることは間違いない。昨年には大河ドラマ『どうする家康』で堂々タイトルロールを務め上げただけに、初のNODA・MAPながら、その“センター感”はやはり盤石。直情的で一本気な富太郎という人物を、エネルギッシュに、それでいて時に悲哀を滲ませつつ好演している。
次男の威蕃を演じるのは、13年の『MIWA』、16年の『逆鱗』以来三度目のNODA・MAP参加となる永山瑛太。物語のキーを握る人物でもあり、目立つわけではないがしっかりとそこに居る、影響を及ぼしている、という存在の仕方は、野田の永山に対する強い信頼感ゆえだろう。
さらに三男の在良を演じたのは、21年の『THE BEE』以来のNODA・MAP参加となる長澤まさみ。聖職者としての清らかさと苦悩を体現する一方、父殺しの要因となった女性グルーシェニカ役では、妖艶さと奔放さで親子を惑わし、両極にあるふたつの役どころを見事に演じ分けて見せた。
同じくふた役に挑んだのは、父・兵頭と盟神探湯検事演じる竹中直人。強欲な兵頭と田舎出身の冒頓とした検事という、こちらも真逆の役どころだが、瞬時の入れ替わりが圧巻かつ、笑いをもたらす場面もあり、まさに竹中のハマり役と言える。またウワサスキー夫人演じる池谷のぶえも、これまたぴったりの役どころ。かわいらしさと残酷さは紙一重である。
兄弟三人の三角関係。親子と恋人の三角関係。それぞれの関係性が揺らいだ時……。その行く末は――プラチナチケットとはなるが――ぜひ劇場で目撃してもらいたい。
取材・文:野上瑠美子
<公演情報>
NODA・MAP 第27回公演『正三角関係』
作・演出:野田秀樹
出演:
松本潤 ⻑澤まさみ 永山瑛太
村岡希美 池谷のぶえ 小松和重
野田秀樹 竹中直人
【東京公演】
2024年7月11日(木)~8月25日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
【北九州公演】
2024年9月5日(木)~9月11日(水)
会場:J:COM北九州芸術劇場 大ホール
【大阪公演】
《9/1(日)チケット一般発売》
2024月9月19日(木)~10月10日(木)
会場:SkyシアターMBS
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/seisankaku/
【ロンドン公演】
10月31日(木)~11月2日(土)
会場:サドラーズ・ウェルズ劇場
『正三角関係』公式サイト
https://www.nodamap.com/seisankaku/
NODA・MAP公式Instagram
@nodamap_official
07/14 12:00
ぴあ