『生誕140年 YUMEJI展』展示の模様をレポート! 6月29日には夜間貸切鑑賞会も開催
明治から大正、昭和にかけて、甘くセンチメンタルな「夢二式」と呼ばれる美人画で一世を風靡した竹久夢二。グラフィックデザインや生活雑貨などのデザインも手掛けたほか、文筆家としても活躍し「大正浪漫」を象徴する存在でもある夢二の生誕140年、没後90年を記念した展覧会『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』が6月1日(土) に東京都庭園美術館で開幕。8月25日(日) まで開催されている。
1884(明治17)年、岡山県に生まれた竹久夢二は、正規の美術教育を受けることはなかったが、雑誌に投稿したコマ絵が入選したことをきっかけに画家の道へと進むことを決意。職業画家として新聞や雑誌のコマ絵やスケッチを手掛ける一方、妻たまきをモデルにした「夢二式」と呼ばれる美人画を発表し、大きな注目を集めるようになる。さらにグラフィックデザインの分野でも活躍し、夢二デザインの着物や文具などの生活雑貨を扱った「港屋絵草紙店」をプロデュースするなど多岐にわたって活動し、暮らしの中の美を追い求めた。
夢二の故郷である岡山の夢二郷土美術館の収蔵品を中心に構成される同展では、近年発見された大正中期の油彩画《アマリリス》や同じく近年発見された外遊時のスケッチなどをはじめ、初公開の資料を含む187点を展示。最新の研究をふまえた新しい視点から、夢二の魅力を紐解いていく。
東京都庭園美術館というアール・デコ様式の邸宅空間で夢二の作品世界を味わうことができるというのも、同展の大きなポイントのひとつだ。同館の本館は、1933(昭和8)年に旧皇族・朝香宮家の自邸として建てられたもの。夢二が活躍した時代とも重なっており、宮家の姫君は自室の壁に夢二の色紙や短冊を飾っていたという逸話もある。
今回は大広間や食堂、書斎や居間など、かつて宮家の生活空間だったさまざまな場所に夢二の作品を展示。「暮らしの中の美」を追求した夢二の作品と、同時代の香りを残す邸宅空間とが響きあう、この会場ならではの展示空間となっている。
また、同展では、これまであまり語られてこなかった油彩画家としての夢二に注目している。本館1階の大広間に入ると、まず最初に目に飛び込んでくるのが今回の目玉作品でもある油彩画《アマリリス》だ。本作は、かつて文人たちに愛された東京・本郷の菊富士ホテルのロビーを飾っていたが、ホテルの閉館後、行方がわからなくなっており、近年の調査によって発見され夢二郷土美術館に収蔵された。岡山では5日間限定で公開されたが、本格的に展示されるのは今回が初めて。鉢植えの赤いアマリリスの花とともに描かれているのは、後に夢二の恋人となった職業モデルのお葉と考えられている。
現存する夢二の油彩画は約30点と少ないが、同展ではそのうちのほぼ半分が展示されている。2階の書庫に展示されている《初恋》は、1912年に夢二が初めて開催した個展「第一回夢二作品展覧会」に出品した最初期の油彩画だ。
新館に展示されている《西海岸の裸婦》は、1931年から1932年にかけて欧米を外遊した際、アメリカ西海岸で描いた作品。夢二が外国人女性の裸婦を描いた唯一の油彩画で、異国の地で新たな油彩表現を模索していたことが見て取れる。
欧米への外遊時、夢二は滞在中の出来事を多数のスケッチブックに残していた。新館では、夢二の最期を看取った医師であり歌人でもあった正木不如丘の手元に残され、近年発見されたスケッチが初公開されている。旅の先々で出会った人物や風景などを描いたものや、《西海岸の裸婦》の下絵のようなものもある。夢二が晩年の旅で何をみて、何を感じていたか、その足跡を伝える貴重な資料だ。
ほかにも日本画や屏風絵、版画などのほか、雑誌や楽譜の装幀、「港屋絵草紙店」で扱っていた封筒や千代紙、着物の帯や半襟など、多彩な作品が展示されている。草花などの身近なモチーフに明るい色調を用い、当時の若い女性たちを魅了した夢二のデザインは、今みても色あせることなくおしゃれで、かわいい。そんな夢二のデザインの世界も存分に味わうことができる。
なお、6月29日(土) には「ぴあアプリ」ユーザー限定の夜間貸切鑑賞会を開催。夢二デザインの柄をあしらった箱入りで、付録の「レターブック」がついた豪華図録セットのお土産や、ギャラリートークも聴講できるスペシャルな鑑賞会となっている。
<開催概要>
『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』
2024年6月1日(土)~8月25日(日)、東京都庭園美術館にて開催
公式サイト:
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/240601-0825_yumeji/
<イベント情報>
『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』ぴあプレミアムナイト
日時:6月29日(土) 18:30~20:30(入館は20:00まで)
料金:【ぴあニスト】5,000円 【よくばりぴあニスト】4,000円
※チケットの購入には「ぴあアプリ」のダウンロードが必要です。
内容:
・展覧会鑑賞(通常:1,400円)
・図録セット(箱入り・レターブック付き/通常:4,500円)
・ギャラリートーク
講師:岡部昌幸(本展監修者:帝京大学名誉教授・群馬県立近代美術館特別館長)
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06/11 18:00
ぴあ