結成10周年リーガルリリーインタビュー「ゼロから作っていく感じでツアーを回っていきたいので、毎回変化が起きると思います」

Text:石角友香 Photo:吉田圭子

たかはしほのかと海の新体制となって初めてのシングル「キラキラの灰」が人気TVアニメ「ダンジョン飯」第2シーズンエンディング主題歌に起用され、ストリーミングデイリーで50,000回再生を記録するなど、確実に新しいリスナーにリーチしているリーガルリリー。

一度はなくしてしまった大切な存在を探しにいくというアニメとの親和性も高い歌詞、バンドのアイデンティティであるオルタナティヴロックサウンドはそのままに、より日常の延長線で聴ける軽やかさを纏った曲調に今の彼女たちのスタンスが伺える。

2024年は結成10周年イヤー。バンドのこれまでとこれからをライブで表現する全国ツアーも毎年恒例、7月5日の「海の日」を起点にスタートする。しかも「海の日」は対バン企画で、その後は「わたしたち、はだしたち」と題したワンマンを展開。前向きに新体制を楽しむ様子のたかはしと海に現在のリーガルリリーについて話してもらった。

――「キラキラの灰」はYouTubeの再生回数が早々に100万回を突破したり、サブスクのプレイリストにも数多くリストインしていますね。

リーガルリリー「キラキラの灰」MV

海(b) ありがたいことに。

――新しいリスナーに届いている手ごたえはありますか?

たかはし(g/vo) SNSで普段見慣れないような“パーティピーポー!”(笑)みたいなアイコンの方とか、あとは海外の方にも聴かれてるっていうのはうれしいですね。

――以前「ハイキ」の時、テーマがある楽曲制作をたかはしさんは面白いとおっしゃったと思うんですが、今回はいかがでしたか?

たかはし 今回も楽しかったし、おもしろかったです。「ダンジョン飯」ってゲームみたいな要素が入っていて。私自身、幼少期からゲームに救われて生きてきたので、ゲームに対して音楽に近いものをちょっと感じるんです。そういうこともテーマにあるアニメのタイアップだったので、今まで以上にかつての自分に言ってあげたいなって思える大切な曲になりました。

――ゲームの要素というとRPGっぽいということですか?

たかはし そう。仲間とともにそれぞれの得意不得意を合わせて、4人ぐらいのパーティを作ってラスボスに立ち向かう形態みたいなものに憧れがあって。だからバンドを組んで音楽をやる形も好きなんだなって。音楽においても影響を受けてるんだなって思います。

――海さんはゲーム要素で共感するところは?

 私、ゲームはあんまりしなくて。大好きな「ぼくのなつやすみ2」しかしないんですよ(笑)。今回リーガルリリーが担当した「ダンジョン飯」はSeason2から、どんどんシリアスになってくるんです。で、仲間の絆がどんどん深まっていったり、大切なもの、なくしてしまったものとの向き合い方も色々変化して行く中で、「このタイミングでリーガルリリーが担当できるってすごくうれしいなあ」というのと、「これはなんか掴める気がする」というのは思いましたね。

――掴めるっていうのは?

 バンドとしてタイアップをしっかり掴みきれそうな予感がしたというか。それは作品との親和性もあると思うんですけど、タイミングよくいろいろハマって。今までストリーミングでどれだけ聴かれてるとか、アナリティクスみたいなものはあんまり見ないので不安だったんですけど、MVの再生回数とか月間のリスナー数とか目に見えるところにちょっとずつ反映されてきて、「もしかしたらちゃんと掴めたのかな」っていう気持ちにはなりました。

――曲作りは何から始まりましたか?

たかはし まず原作の漫画を読んで、自分の心が動いた場所や、自分が思っていた感情が漫画に描かれている部分を探していきました。その中で共通していた部分が一度手放してしまったものや、なくしてしまったものを助けに行くということで。過去に失ったものをダンジョンを進んで助けにいくってことが、昔の灰色がかった思い出に色が宿って今の自分の背中を押してくれてた気がして、私の現実の世界でも未来に進んでいくような感じがあったんです。それを曲にしましたね。

――なるほど。去年リリースの「泳いでゆけたら」以降の曲にはリーガルリリーなりの軽快さを感じていて。新しいトーンかなと思ったんですけど、どうでしょう。

 「泳いでゆけたら」以降、「17」とか「春が嫌い」とかは繰り返し何度も聴ける、いい意味で軽快なものというのは作曲中に意識していた気がします。それまでの大きい波のダイナミクスで1曲を作るっていうよりは小さい波で1曲、でも繰り返し聴けるっていうのは考えました。

たかはし カップリング曲の「ゴーレムの涙」はリーガルリリーの新しい試みというか。私自身さっきも言ったようにゲームが好きなんですけど、ダンジョンに入っていく様をイメージして、ゲーム内で入口に入る時のような音を、曲の冒頭に入れたりしてるんです。その音はエレキギターを使って、ビットクラッシャーっていうエフェクトをかけてゲームっぽい音にしてみたり、打ち込みを入れてみたり。「ゴーレムの涙」っていうタイトルなのでちょっと涙みたいな音を入れてみたり、バンドサウンドではできないような色付けというか、音を使ってもっと情景を広げていくような、そういう新しい試みはしました。

――「ダンジョン飯」の世界は2曲セットで表現してるんですね。

 そうですね。「ゴーレムの涙」も「ダンジョン飯」のインスパイアソングなので。

――大きなメッセージというか、リーガルリリーの曲には毎回喰らうわけですよ。でも最近の曲は割と日常的に聴ける軽快さがあるなと。

たかはし 私はそういう大きい曲って聴く前にちょっと身構えるフシがあって。リーガルリリーってそういう曲が結構多いと自分でも思っているんですけれど、もうちょっとスイッチオンするまで無意識にできるものというか(笑)、「ちょっと聴いてみようかな」ぐらいの曲を自分でも聴きたいなと思って。

――そして今回、「ダンジョン飯」のコラボレーションの中でもアニメとのコラボムービーがあったじゃないですか? あの映像にはかなり感銘を受けました。

TVアニメ「ダンジョン飯」×リーガルリリー「キラキラの灰」スペシャルコラボムービー(Feat. マルシル&ファリン)

たかはし いいですよね。ありがとうございます。

 何度見てもグッときちゃうのは間奏のギターソロのところで、マルシルとファリンの学生時代の回想シーンが流れるところですね。コラボムービーが公開されたタイミングもキメラになったファリンと対峙する放送回の直後だったので、「今はこうだけど昔はこういう思い出あったよね」じゃないけど、そういうのってすごく切なくて。もともと「キラキラの灰」もファリンに向けたマルシル視点の曲でもあるので、やっぱりぴったりハマるなって感じましたね。

――マルシンとファリンっていう女の子ふたりなので余計に。

たかはし ね?(笑)、本当にこのタイミングで。

 ちょうど(リーガルリリーが)ふたりになったタイミングだったし。

――そしてYouTubeLiveには期間限定公開ですが「キラキラの灰」と「リッケンバッカー」の映像も上がっていて。直近のライブですが、自己評価としてはいかがですか?

【期間限定公開】リーガルリリー「リッケンバッカー」YouTube Live in KIRAKIRA

たかはし 自己評価ですか? 演奏してる時はあまり分からないんですけど、作品として見ると良いものができたなって思いますね。あとはなにより映像を撮ってくれた川崎さん(川崎龍弥 / ライブビデオ監督、写真家)のライブを伝える力というか、彼の目でその時のライブを撮っているわけだから、彼の目で見える範囲がすべてなんですけれど、彼はどんな世界でどんな目でリーガルリリーを見てるのかっていうのがすごく伝わってくる映像で、ものすごくかっこいいなって思いました。普通にただライブ映像を見たら「ここちょっと反省点だ」とか見つけるんですけど、川崎さんの作品を見ると「携われてよかった」って思います。だから作品として見てほしい。

――「リッケンバッカー」という初期からの代表曲を今の演奏で改めて見れるっていうのもいいなと思って。

 そうですね。やっぱり新体制でふたりになったからこそ、より一層自分のプレイとかメンバーのプレイを重視するようになって、だからこそワクワクして一個一個のライブが新鮮にうれしいし、新鮮に悔しいみたいなことが最近すごく積み重なっていて。そういう一回を切り取ったひとつだとは思っているんですけど。だからここが真ん中でもないし上でもないし下でもない、常に変わっていく一部だとは思っているので期間限定で出していて、ツアーではまた違うライブにどんどんなっていくだろうなあっていうワクワクはあります。

たかはし これまでは3人でしっかり決めて、ひとつのリーガルリリーというバンドを作っていたんですけど、やっぱり3人でいると誰かひとりが喋ったらそれに影響されて回答が変わってくるというか、ゲームで言ったら選択肢が3つあるってことじゃないですか。それがふたりになると今までとは別の選択肢が用意される感じがあって。また新しく本当にゼロから作っていく感じで今回のツアーを回っていきたいなと思っています。なので毎回変化が起きると思いますね。

――10周年記念ツアーの初日は恒例「海の日」でCody・Lee(李)とねぐせ。との対バン企画なんですよね。従来の「cell,core」とまた違う意味合いを持ってるんでしょうか。

たかはし そうですね。「ロックンロールクロー」という題名で、私は別にロックっていうのはかっこいいだけの音楽だと思ってなくて。それぞれみんなどれがロックだとかいうのはあると思うんですね。たぶんお客さんの世代とかで違うと思うんですけれど、それぞれのロックがあって、きっと何か音楽を聴いて自分の心の中に爪痕を残された人たちがいると思う。そういうものを持った人たちが集まる場所になったらいいなって思います。

 タイトルの「ロックンロールクロー」、これはリーガルリリーの「17」って曲から取ったんですね。あれも17歳の頃にいろんな音楽とかいろんなものに自分たちが爪痕を残されてきた側であることを曲にしてるんですけど、今回フレッシュな人たちを集めてて、しかもみんな同じレーベルのキューンミュージックなんですけど、今度は自分たちが爪痕を残す側になってきたぞっていう気持ちも込めて、「cell,core」とはまた別の企画でできたらいいなって思い、この日は対バンにしました。

――たかはしさんはCody・Lee(李)の新曲に参加されていますね。

たかはし 「生活」という曲にコーラスで参加させて頂きました。

――まさに「生活」っていう感じの曲だなと思って聴いてたんですけど、どういうきっかけだったんですか?

たかはし レコーディング本番当日、響くん(高橋響)に会って、「なんで誘ってくれたの?」って聞こうと思ったんですけど、ちょっとタイミングが見当たらず聞けなかったんですが、生活から切り離された性の部分とかも生活の一部として大切なものとして入ってるということを響くんがSNSに投稿していて。私自身も生活って改めてなんだろうって考えるきっかけになったし、私にはなかった感情とか考え方を新しく提示してくれた機会になったから、誘ってくれてありがとうございますと思っています。

――対バンの時に経緯を披露していただければいいかもしれない。

たかはし はい、聞いてみます(笑)。

――そしてその後全国ツアーが10カ所あります。こちらは『わたしたち、はだしたち』、ワンマンツアーらしいいいタイトルですね。

 そうですね。バンド結成10周年のアニバーサリーツアーっていうことで。裸と裸足っていうのは似ているようで全然違うなっていうのがあって。裸足っていうのは何か着てたとしても足が裸足だったら裸足だし。私たちリーガルリリーは10年間自分たちがかっこいいと納得できるものを大事に作り上げてきて、しっかり纏ってきたつもりなんですが、でも足の裏って一番体重がかかるじゃないですか。そういうところはちゃんとさらけ出して裸足で、痛いとか熱いとかにずっと敏感であり続けながら、それでもちゃんと地に足つけて一歩一歩進んで行きたい、10周年でもまだ進みたい!っていう気持ちがとにかくあるので。『わたしたち、はだしたち』というタイトルで全国ツアー回れるのはすごくいいなって我ながら思ってますね。

たかはし 「生きるために鈍感にして行かなきゃいけない部分」ってあると思うんですけど、「敏感なままのほうが見える世界は絶対に楽しい」という願いも込めています。

――最後に制作中のニューアルバムはどんな段階ですか?

たかはし いまそうですね…えーと。

 7割ぐらい?

たかはし 録り終えて。もうすぐ完成するっていう感じですね。アルバムのための新曲もたくさん入ってます。

 今までのリーガルリリーみたいなものも引き継ぎつつ、新しい挑戦もあるので本当に楽しみにしててほしいなあと思います。

たかはし 早く聴いていただきたいです(笑)。

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<ライブ情報>
リーガルリリー 10th Anniversary TOUR 2024 〜海の日〜
“ロックンロールクロー” supported by Ki/oon Music

7月5日(金) Zepp DiverCity (TOKYO)
OPEN17:30 / START18:30

出演:リーガルリリー / Cody・Lee (李) / ねぐせ。
料金:スタンディング前売5,000円、2F指定席 5,500円

リーガルリリー 10th Anniversary TOUR 2024
“わたしたち、はだしたち”

7月20日(土) GORILLA HALL OSAKA
7月21日(日) 名古屋BOTTOM LINE
8月31日(土) 高松DIME
9月7日(土) 札幌cube garden
9月14日(土) 広島CLUB QUATTRO
9月15日(日) 福岡DRUM Be-1
9月21日(土) 仙台darwin
9月22日(日) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
9月28日(土) 金沢AZ
9月29日(日) 京都磔磔

料金:スタンディング前売5,000円
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/regallily-10th-tour/

公式サイト:
https://www.office-augusta.com/regallily/

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