「六月大歌舞伎」を彩る祝幕がお披露目、ビートたけしが描いた“風神雷神”が中村陽喜・夏幹の初舞台を祝う

東京・歌舞伎座にて、6月1日(土) に開幕する『六月大歌舞伎』は、中村時蔵が初代中村萬壽、時蔵の長男・中村梅枝が六代目中村時蔵をそれぞれ襲名し、梅枝の長男・小川大晴が五代目中村梅枝として初舞台に臨む。加えて、中村獅童の長男・小川陽喜が初代中村陽喜、次男・小川夏幹が初代中村夏幹として初舞台を踏む。萬屋一門が揃い、ファンに襲名を披露するとともに、一門の未来を担う若き3人が、歌舞伎俳優としての一歩を踏み出すおめでたい公演だ。

これに先立ち、襲名・初舞台を彩る特別な引幕「祝幕(いわいまく)」のお披露目会見が行われ、萬壽、時蔵、梅枝に提供された日本画家・千住博氏デザインによる祝幕、陽喜と夏幹に贈られたビートたけし原画を用いた祝幕が公開された。それぞれ、高さ約7メートル、幅は30メートル近い大きさで、前者は紅白の色合いで描かれたダイナミックな滝の絵、後者は風神雷神をモチーフに、陽喜と夏幹の名前が踊っている。

力強く流れる滝が描かれた、日本画家・千住博デザインによる初代中村萬壽・ 六代目中村時蔵襲名披露・五代目中村梅枝初舞台「祝幕」

お披露目には、萬壽と旧知の仲でもある千住氏が駆けつけ、「光が当たると同時に、自らも発光する。そんな萬壽さんにふさわしいものは、何かと考えた」と振り返り、「滝が力強く流れ続けるように、ますますの繁栄を願ってこの絵を描いた」と滝に込めた思いを語った。この日、初めて祝幕全体を目にしたという萬壽は「壮観でございます」と感無量の面持ちだった。

初代中村萬壽

左から)六代目中村時蔵、五代目中村梅枝、初代中村萬壽、日本画家の千住博

孫の大晴が五代目中村梅枝として、初舞台に立つことについて、萬壽は「この(女形の)家系に生まれた割には、立ち回りが好きでございますので、今回は、孫の好きなものをすべて要素として、取り入れた」と期待を寄せる。当の五代目梅枝は、会見中、終始緊張した様子だったが、それでも、萬壽は「本番が始まると、結構楽しくやってくれるんじゃないかなと思っております」と心配はしていない様子で、「ここまで来たら腹を据えて、3人で力を合わせて、一生懸命に舞台を勤めることが何より」と意気込んでいた。

中村獅童

一方、獅童は、ビートたけしが原画を提供した経緯について、自身が出演した“北野武”監督名義の映画『』での縁だと説明し、「ずっとたけしさんのファンでしたし、ぜひにとお願いしたら、すぐに『やる』と言ってくださった」と感謝の意。画家としても活動するたけしから、描きためた数点が提供されたといい、陽喜と夏幹の意見も聞きながら、祝幕のモチーフに風神雷神が選ばれ「こんなに素敵な祝幕を送ってくださり、胸がいっぱいです」と感激しきり。たけしからは「この度の初舞台、誠におめでとうございます。これからの歌舞伎界を担っていくお二人及び皆さまの輝かしい未来を、心よりお慶び申し上げます」とお祝いのメッセージが届けられた。

中村獅童(中央)と中村陽喜(右)、中村夏幹

また、獅童は「正直な話、6演目中4演目が初役で、子どもたちの襲名も、自分にとって初体験ですから、もう何が何だかわかりません」と苦笑いを浮かべながら、切実な思いを告白。初舞台を控える陽喜と夏幹に対しては、「兄弟で助け合っているように見えますけど、ライバルなんですかね。とにかく舞台が大好きなので、元気よく最後まで精一杯楽しくやってくれたら」としみじみ。同時に「舞台の上に立てば、私と子どもたちも、家族ではなくライバル。負けたくないです!」と対抗心を燃やしていた。

取材・文・撮影:内田涼

※歌舞伎座では、黒・柿・萌葱の「定式幕(じょうしきまく)」を引幕(ひきまく)として用いているが、今回のような襲名披露・初舞台の際には、後援会や御贔屓の方から俳優に提供される特別な引幕として、「祝幕(いわいまく)」を定式幕の替わりに用いることもある。

<公演情報>
歌舞伎座「六月大歌舞伎」

【昼の部】11:00~
川村花菱 作
齋藤雅文 演出
一、『上州土産百両首』

二、『義経千本桜』
所作事 時鳥花有里

六代目中村時蔵 襲名披露狂言
三、『妹背山婦女庭訓』
三笠山御殿
劇中にて襲名口上申し上げ候

【夜の部】16:30~
曲亭馬琴 原作
一、『南総里見八犬伝』
円塚山の場

初代中村萬壽 襲名披露狂言
二、『山姥』
五代目中村梅枝 初舞台
劇中にて襲名口上申し上げ候

河竹黙阿弥 作
新皿屋舗月雨暈
三、『魚屋宗五郎』
初代中村陽喜
初代中村夏幹
初舞台

2024年6月1日(土)~6月24日(月) ※11日(火)、17日(月) 休演
会場:東京・歌舞伎座

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2451221

公式サイト
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/873

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