新作『ウィッシュ』が公開中。ディズニーが100年愛される“理由”とは?

今年、ディズニーが100周年を迎え、記念作品『ウィッシュ』が公開されている。ディズニーはこれまでに数々の名作を世におくりだし、そこから生まれたキャラクターや楽曲は膨大だ。その歴史を振り返ると、もちろん常に絶頂期だったわけではない。しかし彼らは山あり谷ありを乗り越えて100年の節目を迎えた。

なぜ、ディズニーはここまで愛されるのだろうか? 他のスタジオにはない特徴はどこにあるのだろうか? 『ウィッシュ』でプロデューサーを務めたピーター・デルベッコと、フアン・パブロ・レイジェス・ランカスター・ジョーンズに話を聞いた。

ピーター・デルベッコ、フアン・パブロ・レイジェス・ランカスター・ジョーンズ

デルベッコは劇場でキャリアを積み、ディズニーに入った人物。『プリンセスと魔法のキス』や『アナと雪の女王』をプロデュースし、現在はスタジオの製作担当上級副社長も勤めている。

彼は「私はプロデューサーも含めて“フィルムメイカー”だと理解しています」と語る。

「ディズニーは監督や脚本家、アニメーターなどフィルムメイカーが牽引している“フィルムメイカーありき”のスタジオです。そして、プロデューサーもフィルムメイカーだと思っています。

ですから、映画の源になるアイデアは監督の情熱ですが、プロデューサーはその最初期から関わり、映画が完成して公開されるまでずっと伴走していくパートナーになります。我々の仕事は、監督のビジョンをスクリーンに反映させるため、すべての工程に関わって、彼らのクリエイティブの障害になるものをひとつひとつ取り除いていくことです」

ランカスター・ジョーンズはディズニーに入るまで、いくつかのスタジオで実際に制作に入る前の“開発”に携わってきた経験があるため、ディズニーの創作過程は他のスタジオとは違うと指摘する。

「他のスタジオでは、30ぐらいのアイデアがあったとしても、実現するのは、ひとつかふたつです。でも、ディズニーの場合には、最初の段階で作品を担当する監督が決まっていて、彼らのアイデアや情熱が映画として成功するようにスタジオが助け、見守る文化があります。

創作の過程では監督がアイデアをみんなの前でプレゼンすることもありますが、良いアイデアは活かし切る、会社のあらゆるリソースを使ってアイデアを実現させようとします。ですから、ディズニーでは他のスタジオと違って“日の目を見ないプロジェクト”の方が少ないんです」

多くのスタジオでは時に実現されなかった脚本がたくさん書かれる。成功事例やデータからプロジェクトがスタートする。しかし、ディズニーはいつもフィルムメイカー個人のアイデアや想いや情熱を重視してきた。

「フィルムメイカーの想いをくみとる作品をつくる。これこそがディズニーの最大の特徴であり、他のスタジオにはない強みだと思います」とデルベッコは語る。

「ですから、我々はアイデアや作品ではなく、“人”に投資をします。私たちは彼らに"このような映画をつくってくれ”とも“こんなストーリーを書いてほしい”とも言いません。フィルムメイカーが情熱を持って語りたいものがある時、スタジオはあらゆる手段を使って助けたり、サポートしようとするのです。

私がこのスタジオでプロデューサーとして働く中で学んだことがあります。私はある時まで“映画で重要なのはアイデアだ”と思っていました。良いアイデアがあれば映画は成功すると。しかし違いました。映画を成功させるために必要なのは、良い人、良いチームです」

かつてウォルト・ディズニーというひとりの男のアイデアと情熱から始まったスタジオは100年たった現在も「フィルムメイカーの想いをくみとる作品をつくる」というレガシーを引き継いでいるのだ。

「最新作『ウィッシュ』では、脚本を手がけたジェニファー・リーのアイデアと想いと情熱がまずあって、100周年ではあるのですが完全オリジナルの作品をつくることになりました。『アナと雪の女王』では彼女と共同で監督を務めたクリス・バックが本作でも監督を務めていますが、彼は開発の段階から本作に関わっています。クリスはディズニー作品が観客に訴えかける感情とはどういうものなのかわかっている人ですから」(ランカスター・ジョーンズ)

「私たちのスタジオが100年続いたのは、良いストーリーとキャラクターがあったからだと思っています。キャラクターが世界中で親しみを持って愛されることで、キャラクターには映画から離れて、ひとり歩きをはじめてほしいと思っています。

100年の歴史の中では、その映画がつくられた時代を反映した“タイムリー”なものもあれば、時代を超えて共感できる“タイムレス”なものもあります。私は『ウィッシュ』はこのふたつをかなえるものであってほしいと思っています」(デルベッコ)

『ウィッシュ』
公開中
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