にしおかすみこ、執筆業に喜び 女王様キャラでのブレイクにも感謝「一発屋だからこそ…」

●“書く”という好きなことができている幸せを実感
2007年に女王様キャラのSMネタでブレイクし、近年は認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父との同居生活を描いた「FRaUweb」での連載「ポンコツ一家」が注目を集めているお笑い芸人・にしおかすみこ。同連載を加筆修正し、書き下ろしも加えた『ポンコツ一家2年目』が9月20日に発売された。今年芸能生活30周年となるにしおかにインタビューし、今の仕事に対する思いを聞いた。

――30年間芸能界で活動されてきて、今のお仕事に対する思いをお聞かせください。

ずっと書くことがしたいと思っていたので、連載をさせていただき、好きなことができているという幸せはすごくありがたいなと。これがずっと続くように頑張っていきたいと思っています。

――昔から書くことが好きだったのでしょうか。

子供の頃から好きでした。『ポンコツ一家』の前も1冊本を出しましたが、今みたいに毎月連載をしたり、2冊目を出すという風にずっと続くのは初めてで、やっと間口が広がりつつあるなと感じています。今は家族のことを書いていますが、最近ちょっとずつ単発で違うことも書いているので、そういう風に違うジャンルも書いていきたいなと思っています。

――連載や本を出版する喜びは、どういう時に感じますか?

『ポンコツ一家』に関しては、「笑った」「泣いた」「感動した」と言ってくださることがすごくうれしいです。あと、自分が思っていることを自分の言葉で表現するのが楽しいのかなと思います。もうすぐ50歳になるので徹夜はしんどいんですが、好きなことだから徹夜もいけるなって。そういう時に書くことが好きなんだなと感じます。

――子供の頃から書くことが好きだったということですが、小説家になりたいと思ったことは?

小さい頃は小説家、評論家、料理家など、「家」がつくものに憧れていて、その中に小説家もありました。

――そういった願望もありつつ、お笑いの道を選んだ理由を教えてください。

目立ちたい、人気者になりたい、有名になりたいというミーハーな気持ちで雑誌のオーディションに申し込んだのがきっかけでした。なので、お笑いがやりたいとかではなく、テレビに出てみたいという、ふわっとした気持ちでした。

――2007年に『エンタの神様』(日本テレビ)をきっかけに女王様キャラでブレイクされましたが、当時はどんな心境でしたか?

それまでずっと暇で、30歳過ぎてやっと女王様で注目していただいて、こんなに忙しいんだと思いました。よく「寝る時間がない」という話を聞きますが、オーバーだと思っていて。でも本当に寝る時間がないんだなとわかりました。

――ミーハー心から飛び込んだ芸能界ということですが、いろいろなテレビやステージに出演され、お笑いの楽しさも感じられていましたか?

そうですね。私が考えたネタで笑っていただけると、めちゃくちゃうれしいです。

――『ポンコツ一家』も「笑った」という反響があり、表現方法は違えど、笑いを届けることが大きなやりがいになっているのでしょうか。

最初はそこまで考えて本を書いたわけではないですが、偶然そうなって、まだ笑ってもらえるんだと思った時はすごくうれしかったです。一発屋なので終わっていき、リポーターの仕事などはさせていただいていますが、お笑いからは離れたと思っていたんです。でも、書いたことで、「たくさん笑った」と言っていただけて、場所を変えても笑ってもらうことがまだできるんだと感じることができました。

●仕事の幅の広がりに感謝「小説にも挑戦してみたい」

――ブレイク時の忙しさを一度経験すると、その後、物足りなさを感じることも?

それはありますよ。一発屋なので、全然仕事がない時もありますし、でも、どうしていいかわからないし、お金もないし。

――そういった葛藤をどのように乗り越えてきたのでしょうか。

全然乗り越えてないです。ずっとそのままで、今はたまたま本を書く場所があって恵まれていますが、いつどうなるかわからないので。

――最近では、介護に関する講演も行われるなど、『ポンコツ一家』をきっかけにお仕事の幅が広がっていらっしゃいますね。

呼んでいただけるのはうれしいし、ありがたいなと思います。ただ、介護のことや、認知症、ダウン症に関するイベントが多いので、本を書いている時もそうですが、盛らずに正しく伝えることを意識しています。うちの家族が誤解されるのも嫌ですし、認知症やダウン症の方々が傷つかないようにというのは心に留めています。もちろん、イベントを見に来てくださった方々に楽しんでいただきたいという思いもありますが、一番は誰も傷つけたくないというのがあるので。

――11月18日に50歳を迎えられますが、今後の人生はどのように思い描いていますか?

計画を立ててそれ通り行ったこともないので、どうなるかわからないですね。一発屋になったというのも、最初から一発屋を目指している人なんていないと思いますし、思いもよらぬ方向に行っていて。でも、書くことは続けたいなと思っています。せっかく間口が開いたので、チャンスを生かして、たくさんの方に読んでいただけたら。

――ご自身のプライベートに関してはいかがでしょうか。

自分で稼いだお金で気心知れた仲間たちと食事に行ったり、旅行に行ったり、好きなことができたらいいなというぐらいです。

――執筆業での目標や夢をお聞かせください。

家族以外のことも書いていきたいですし、小説にも挑戦してみたいなと思っています。

――小説の内容はもう思い浮かんでいますか?

考えてはいますけど、まだこれからです。

――家族以外のことも書いていきたいということですが、『ポンコツ一家』もずっと書き続けていきたいという思いでしょうか。

家族次第です(笑)。家族の幸せが一番なので、それありきで本が続くならば続いてほしいと思いますし、私の健康も第一なので、私が病んでしまうようだったら全部捨てて逃げるというのも選択肢の一つとしてあり、「逃げました」と書くかもしれませんし、わからないです。

――改めて女王様キャラでブレイクした経験はご自身にとってどのようなものになっているかお聞かせください。

女王様キャラがあったから『ポンコツ一家』につながっているというか、一発屋だからこそ思い出して『ポンコツ一家』を読んでくださるというのもあるので、すごくありがたい経験をしたなと思っています。何にもなくて『ポンコツ一家』を書いていたら、まだ世に知られていない可能性もあるので、感謝しています。

■にしおかすみこ
1974年11月18日生まれ、千葉県出身。1994年にデビューし、2007年に『エンタの神様』(日本テレビ)で女王様キャラのSMネタを披露しブレイク。2009年には春風亭小朝に弟子入りし、落語家デビュー。高座名は「春風こえむ」。現在は『なないろ日和!』(テレビ東京)などでリポーターとしても活躍中。2021年より「FRaUweb」にて「ポンコツ一家」を連載中。2023年1月に『ポンコツ一家』を刊行した。

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