サバンナ八木「決定権は100%相方」 独特ルール貫き結成30周年 高橋には「感謝しかない」

●「コンビも夫婦も話し合いで決めるようにしたら揉める」
今年コンビ結成30周年を迎えたお笑いコンビ・サバンナ。月1ペースで劇場にコンビで出演するほかは、個人の活動がほとんどだという2人だが、八木真澄は「コンビの活動が軸であるというのは変わらない」と語る。そして、「決定権は100%相方」というルールでやってきたからこそ衝突することなく続けられているという。特殊なコンビの関係性や相方・高橋茂雄への思いを八木に聞いた。

同じ高校の柔道部の先輩後輩という八木と高橋。中学から知っていたものの、高校で同じ柔道部に高橋が入ってきてから深い関係になり、大学生のときにコンビを結成した。

「柔道部の後輩3人を誘って『お笑いやろうよ』と。グーパーでコンビを決めることにして、僕と相方がグーでもう一組がパーで。きっかけはそんなもんです」

今年4月に結成30周年を迎え、八木は「相方と1回も話し合いせずこの年齢まで来たなと。将来について話し合うことなく今日に至っているので、それはすごく不思議ですね。僕らはかなり特殊な関係だと思います」としみじみ。

大学生のときに活動を始め、明確にお笑いの道に進もうというターニングポイントはなかったという。

「僕が先に大学を卒業して就職活動しなかったんですけど、相方はどうするつもりなのか聞くこともなく。相方が授業に出ないと単位が取れず留年するかもしれないという日に、NGK(なんばグランド花月)の出番があり、そこで出番を優先したんです。その瞬間にプロでやっていく覚悟なんだと僕が勝手に思っただけで」

サバンナにおいては「決定権は100%相方(高橋)」と決めているそうで、だからこそ話し合わずとも2人の考えにズレが生じることはないという。

「最初に決定権を100:0で相方と決めて、相方にすべて任せているんです。コンビはだいたい50%ずつとか、6:4や7:3ですが、うちは100:0にして全部相方が決めています。僕より相方が決めたほうが絶対うまくいくと思ったので。ネタ合わせを始める時間も終わる時間も相方が決めています」

そうした理由は「揉めるから」。「例えば、出囃子を決めるにしても、2人で決めようとしたら揉めますが、相方が決めれば揉めることはない。空調も人によって暑い寒いが違いますが、相方が思う温度が正解なんです。それで自分が暑いと思ったら服で調整すればいいので。それが一番コンビがうまくいく方法ではないかと、30年やってきてこのやり方は間違ってなかったなと思います」と語る。

○夫婦関係においては決定権は100%八木「奥さんも納得してくれている」

夫婦関係においては「決定権は100%自分」だそうで、「コンビも夫婦も話し合いで決めるようにしたら揉める。絶対どちらかがコントロールしないとうまくいかないと思います。夫婦関係においてはすべて僕が決めていて、奥さんも納得してくれています」とのこと。

決定権を100%持つということは「その分、責任も大きい」と語る。

「嫁は働いていないので、僕が仕事を失ったらダメだし、100%決められるということは100%責任を背負うので、しんどいことでもあるんです。相方も同じで、全部決めるというのはしんどさもありますが、どちらかが決めるようにするというのが夫婦においてもコンビにおいてもうまくいく秘訣だと思います」

また、「コンビは運命共同体」だと八木は言う。

「例えば、どちらかが遅刻してきたとして、それに対して怒るという次元ではないというか、もっと深いところでつながっていないとやっていけないと思うんです。相方が遅れたということは自分が遅れたのとほぼ一緒と思わないといけない。それくらいの領域に入らないと30年も続かないと思います」

●多くの営業の仕事がもらえているのも「相方のおかげ」

高橋はレギュラー番組を10本以上抱える売れっ子。八木も、レギュラー番組は0本でも“吉本の営業王”と呼ばれるほど営業に引っ張りだこで、今年4月には書籍『未確認生物図鑑』を発売するなど幅広く活躍している。

個人での活動が圧倒的に多い日々だが、あくまでもコンビの活動を軸に考えていると八木は言う。

「個人の仕事は、相方が1人で活動していて空いた時間にやっているだけなんです。優先順位が全然違います」

そして、「本当はコンビで動くことが理想」と言うも、将来的にコンビの仕事をもっと増やしていくかどうかは「相方が決めることで、僕が決めることではない」ときっぱり。「決定権は100%相方」という考えがブレることはない。

多くの営業の仕事をもらえているのも、「相方のおかげ」だと感謝している。

「相方がテレビで活躍してくれて、名前を売ってくれているからこそ、その知名度で営業に行けている。僕だけの力じゃなくて、相方の力であり、吉本興業の歴史そのものでもある。僕がただのピン芸人として行くのと、サバンナであり、吉本興業の芸人として行くのでは全然信頼度が変わるので」

個人の仕事もコンビに還元したいという思いが強い。

「1人だとしてもサバンナとして活動している意識でやっています。僕の頑張りは10分の1ぐらいで、9割は相方の頑張りだと思いますが」

○あくまでもコンビの活動が最優先「個人の仕事は空いた時間で」

営業先で観客を大いに沸かせ、楽屋を掃除して帰るなど、気配りも満点の八木。

「お客さん第一で、来てくれたお客さんたちに楽しんでもらうというのが一番ですが、クライアントも第一なので、事前に打ち合わせをしてクライアントの意向に沿った内容に。クライアントの方たちに呼んでよかったなと思ってもらえるように心がけています」

そして、何においても大事な順番を間違えてはいけないと語る。

「もし仮に未確認生物がブームになったとしても、そこでコンビの活動をないがしろにするのは順番が逆。あくまでもコンビの活動が一番で、個人の仕事は空いた時間でやるというのは変わりません」

30周年を迎え、相方へのメッセージを求めると「相方には感謝しかないです」としみじみ。

高橋は2022年12月に女優の清水みさとと結婚したことを報告したが、八木は「相方が結婚したことが、ここ5年、10年で一番うれしかったです。家族の幸せを見つけ出しているというのがすごくうれしいです」と目尻を下げる。

結婚して高橋の変化も感じているそうで、「今まではあまり休みをとらず仕事をしていましたが、最近はオフをとってどこかに出かけるようになったり、変わりましたね。コンビ組む前から先輩後輩で、僕がこの世界に誘って。その後輩が幸せになってくれているのは本当にうれしいです」と語っていた。

■八木真澄
1974年8月4日生まれ、京都府出身。1994年に高校の柔道部の後輩だった高橋茂雄とお笑いコンビ・サバンナを結成。1997年にABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞を受賞。一発ギャグを得意とし、そのレパートリーは1000を超える。筋肉芸人としても知られ、レイザーラモンHGと「ネオ☆健康ボーイズ」として活動している。

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