村上春樹「高校時代にこういう音楽をラジオでずっと聴いていた」と語るインストルメンタル楽曲は?
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。8月25日(日)の放送は「村上RADIO~ソウル・インストルメンタル・グループ~」をオンエア。
今回の「村上RADIO」は、1960年代のソウル・インストルメンタル・グループを特集。ブッカー・T&ザ・MG’sのリーダー、ブッカーT・ジョーンズの自伝『Time Is Tight』を手にした村上さんが、その時代・場所に思いを馳せながらお届けしました。
この記事では、中盤4曲について語ったパートを紹介します。
◆Jr. Walker & The All Stars「What Does It Take (To Win Your Love)」
◆Jr. Walker & The All Stars「Walk In The Night」
ジュニア・ウォーカーはアーカンソー州の出身。1931年の生まれ。1995年に亡くなっています。本名はオートリー・デウォルト・ジュニア、子ども時代自転車がなくて、どこにいくにも歩いていったので、仲間から「ウォーカー」と呼ばれていたそうです。そこからジュニア・ウォーカーという通り名が生まれました。
インディアナ州サウス・ベンドで育った彼は、サキソフォンの演奏に夢中になり、仲間のミュージシャンたちと、R&Bバンドを結成し、地元で人気を得ていきました。ファッツ・ドミノやボー・ディドリーのヒットソングのカバーがそのバンドの主なレパートリーでした。
彼らはモータウン・レコードのスタッフに認められ、そこのハウスバンドのような存在になります。またそれと並行して、彼ら自身の音楽のレコーディングも始めたんだけど、なかなかヒット曲に恵まれませんでした。でも試行錯誤を重ねて、やがて「ショットガン」の大ヒットによって、モータウンの売れっ子バンドのひとつになっていきます。
ジュニア・ウォーカーはなぜか多くの若い英国のミュージシャンに影響を与えました。ミック・ジョーンズはこのように語っています。
「ジュニアは音楽仲間のあいだではとても高く評価されていた。多くのギタリストが、彼のサックスのリフを借用している。エリック・クラプトンでも、ジェフ・ベックでも誰でもいい。訊(き)いてみな。自分たちがジュニア・ウォーカーのサックス演奏にインスパイアされたことを、彼らは喜んで認めるはずだ」
僕は一度、もう40年くらい前のことになりますが、ドイツのハンブルクのディスコで彼らの生演奏を聴いたことがあります。熱々の演奏で、そりゃ楽しかったです。客もみんなノリノリでした。
2曲続けて聴いてください。歌が入りますが、気にしないでください。このバンドの売り物はあくまでインストルメンタル演奏にあって、歌はいわば商売上の添え物に過ぎないんです。
「What Does It Take (To Win Your Love)(君の愛を得るためには何をすればいいのか)」そして「Walk In The Night(夜を歩く)」。
<収録中のつぶやき>
高校時代にこういう音楽をよく聴いていたんだよな。ラジオでずっと聴いていた。そのころのラジオはいい音楽をかけていたんだよ(笑)。
◆Bar-Kays「Humpin'」
◆Bar-Kays「In The Hole」
次はバーケイズです。バーケイズはもともと「River Arrows」というアマチュア・バンドで、メンバーのうちの何人かはメンフィスの床屋で働いていました。その床屋はスタックス・レコードのスタジオの近所にありまして、オーティス・レディングがたまたまそこをひいきにしていました。
その若者たちがバンド活動をしていることを知っていたオーティスは、一度スタジオに遊びに来いよと誘いまして、そこで彼らの演奏が水準の高いものであることを知り、「じゃあ、MG'sに次ぐハウスバンドに仕立てようじゃないか」ということになりました。そしてバンド名をバーケイズと改めた彼らのオリジナル曲「ソウル・フィンガー」は予想外の大ヒットとなりました。
続けて聴いてください。「Humpin'」と「In The Hole」。
オーティス・レディングは、彼らを前座兼バックバンドとして伴って全米ツアーに出たのですが、不運にも移動中の自家用飛行機が墜落し、オーティス自身も、バーケイズの4人のメンバーも、帰らぬ若者たちとなってしまいました。でも運良く生き残った2人のメンバーは、ショックから立ち直ると、新たにメンバーを加えてバーケイズを再結成しました。
そして1970年に事実上解散状態となったMG'sのあとを継いで、スタックスのハウスバンドのような位置につくことになります。メンバーがオール黒人のバーケイズは、人種混合だったMG'sに比べると、ずっとファンキーでアグレッシブで、のちにボーカルを加えて、「ブラック・ロック」や「ファンキー」と呼ばれる音楽に近いものになっていきます。
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8月25日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 9月2日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~ソウル・インストルメンタル・グループ~
放送日時:2024年8月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
今回の「村上RADIO」は、1960年代のソウル・インストルメンタル・グループを特集。ブッカー・T&ザ・MG’sのリーダー、ブッカーT・ジョーンズの自伝『Time Is Tight』を手にした村上さんが、その時代・場所に思いを馳せながらお届けしました。
この記事では、中盤4曲について語ったパートを紹介します。
◆Jr. Walker & The All Stars「What Does It Take (To Win Your Love)」
◆Jr. Walker & The All Stars「Walk In The Night」
ジュニア・ウォーカーはアーカンソー州の出身。1931年の生まれ。1995年に亡くなっています。本名はオートリー・デウォルト・ジュニア、子ども時代自転車がなくて、どこにいくにも歩いていったので、仲間から「ウォーカー」と呼ばれていたそうです。そこからジュニア・ウォーカーという通り名が生まれました。
インディアナ州サウス・ベンドで育った彼は、サキソフォンの演奏に夢中になり、仲間のミュージシャンたちと、R&Bバンドを結成し、地元で人気を得ていきました。ファッツ・ドミノやボー・ディドリーのヒットソングのカバーがそのバンドの主なレパートリーでした。
彼らはモータウン・レコードのスタッフに認められ、そこのハウスバンドのような存在になります。またそれと並行して、彼ら自身の音楽のレコーディングも始めたんだけど、なかなかヒット曲に恵まれませんでした。でも試行錯誤を重ねて、やがて「ショットガン」の大ヒットによって、モータウンの売れっ子バンドのひとつになっていきます。
ジュニア・ウォーカーはなぜか多くの若い英国のミュージシャンに影響を与えました。ミック・ジョーンズはこのように語っています。
「ジュニアは音楽仲間のあいだではとても高く評価されていた。多くのギタリストが、彼のサックスのリフを借用している。エリック・クラプトンでも、ジェフ・ベックでも誰でもいい。訊(き)いてみな。自分たちがジュニア・ウォーカーのサックス演奏にインスパイアされたことを、彼らは喜んで認めるはずだ」
僕は一度、もう40年くらい前のことになりますが、ドイツのハンブルクのディスコで彼らの生演奏を聴いたことがあります。熱々の演奏で、そりゃ楽しかったです。客もみんなノリノリでした。
2曲続けて聴いてください。歌が入りますが、気にしないでください。このバンドの売り物はあくまでインストルメンタル演奏にあって、歌はいわば商売上の添え物に過ぎないんです。
「What Does It Take (To Win Your Love)(君の愛を得るためには何をすればいいのか)」そして「Walk In The Night(夜を歩く)」。
<収録中のつぶやき>
高校時代にこういう音楽をよく聴いていたんだよな。ラジオでずっと聴いていた。そのころのラジオはいい音楽をかけていたんだよ(笑)。
◆Bar-Kays「Humpin'」
◆Bar-Kays「In The Hole」
次はバーケイズです。バーケイズはもともと「River Arrows」というアマチュア・バンドで、メンバーのうちの何人かはメンフィスの床屋で働いていました。その床屋はスタックス・レコードのスタジオの近所にありまして、オーティス・レディングがたまたまそこをひいきにしていました。
その若者たちがバンド活動をしていることを知っていたオーティスは、一度スタジオに遊びに来いよと誘いまして、そこで彼らの演奏が水準の高いものであることを知り、「じゃあ、MG'sに次ぐハウスバンドに仕立てようじゃないか」ということになりました。そしてバンド名をバーケイズと改めた彼らのオリジナル曲「ソウル・フィンガー」は予想外の大ヒットとなりました。
続けて聴いてください。「Humpin'」と「In The Hole」。
オーティス・レディングは、彼らを前座兼バックバンドとして伴って全米ツアーに出たのですが、不運にも移動中の自家用飛行機が墜落し、オーティス自身も、バーケイズの4人のメンバーも、帰らぬ若者たちとなってしまいました。でも運良く生き残った2人のメンバーは、ショックから立ち直ると、新たにメンバーを加えてバーケイズを再結成しました。
そして1970年に事実上解散状態となったMG'sのあとを継いで、スタックスのハウスバンドのような位置につくことになります。メンバーがオール黒人のバーケイズは、人種混合だったMG'sに比べると、ずっとファンキーでアグレッシブで、のちにボーカルを加えて、「ブラック・ロック」や「ファンキー」と呼ばれる音楽に近いものになっていきます。
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8月25日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 9月2日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~ソウル・インストルメンタル・グループ~
放送日時:2024年8月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
08/25 21:00
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